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サンティアゴの男サンプル

小川紀美代
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みんなが知っていることを知らなくたっていい

アルゼンチンの北にサンティアゴ・デル・エステーロという街がある。
日本人にはほとんど知られていない。
観光地でもないしこれと言った見所もない貧しい街。
しかし、この街には信じられないくらい素晴らしい音楽家がいる。

アルゼンチンフォルクローレの聖地。

そしてブエノスアイレスの友人に言わせると「本当に働かない」人たちの街。
言い換えれば、自分たちが暮らすに必要以上は、働かない。ということだ。

彼らの暮らしは慎ましい。
超有名な演奏家の家だって、豪邸とは程遠い。

でも小さな中庭があって、そこで肉を焼き、手料理を作り、楽器を持って朝まで楽しむ。
甘すぎるコーラやスプライトを飲みながらギターを弾き、歌を唄う。
酔っぱらうまで呑む演奏家には、会ったことはない。
そんな夜には家族全員、親戚一同が集まってきてみんなで踊る。
月明かりの中の美しいコーラスを、忘れることは出来ない。

彼らのCDはブエノスアイレスの大手ショップで少しだけ見かけることができるが、日本には全くと言っていいほど流通していない。
タンゴのように日本人好みでわかりやすい派手なショー的な要素が無い上に、歌詞は陽気な曲調からは考えられないほど哲学的だったりするからだろう。

むしろ、商業的に流通していくということにあまり重きを置いていないような印象を受ける。

とはいえ、ビーサンと短パンで行動する彼らについて行くと、その格好で数万人規模のフェスに出演することになるのだが笑。

日本でこの街と深くつながっている福島県川俣町をご存知だろうか。
そして、川俣町とサンティアゴの架け橋になったMichio Segaは?

うちにはテレビもないし、ネットもあまりみない。
そのかわり、自分自身で、かけがえのない経験を実際にしていると思う。

みんなが知っていることを知らなくてもいい。

だって、みんなが知らないこと、いっぱい知ってるから。

サンティアゴとアルゼンチン・フォルクローレを愛し、闘病生活の最後まで演奏し続けたMichio Segaにこの曲を捧げます。

日本のみなさんは全くご存じないと思うけれど彼は「アルゼンチン・フォルクローレを日本に広めた演奏家」としてサンティアゴの名誉市民になっています。

音楽を通じての友情。

それは名誉、なんかじゃ無く。

みなさんのサポートは、音楽活動を続けるため、生きていくために、大切に使っていきます。そして私も、誰かの小さな心の支えになれますように。