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個人M&A/サーチファンドブームへの期待と懸念

それがここ1-2年で、サーチファンドや、近い活動である個人M&Aという言葉を本当によく目にするようになりました。カンファレンスがあったり、本がでたり、研究会があったり、テレビでも特集されたり。

私がサーチファンドに出会った2014年とは隔世の感です。カタカナで検索し、1ページで終わるGoogle検索に驚いたことを覚えています。

私もサーチファンドの普及のために活動しているので、盛り上がりはうれしいのですが、同時にこのブームを不安に感じるところもあります。

個人M&A、サーチファンドの夢と魅力

前提として、個人M&Aやサーチファンド、非常に社会的意義のある動きだと思っています。
経営人材の獲得が難しい中小企業にとって新しい人材獲得や事業承継の手段になり得るし、経営者を目指す人材にとっても起業ではない新しいキャリアパスになり得ると思います。

30年前に珍しかった転職が当たり前になり、20年前に珍しかった起業というキャリアも一般的になってきたのと同じように、10年後には会社をM&Aして社長になるというキャリアパスが一般的になっているでしょう。

夢がありますね。

大きな会社をM&Aしようと思うと投資家からお金を集める必要がありますが、中には、そこそこ貯金のある人であれば自己資金でM&Aできる会社もたくさんあります。

現実味もありますね。

自己責任では済まない、会社を買うという投資

もちろん、投資した会社がうまくいくとは限りませんし、損をする可能性もあります。個人M&Aを志す人はそんなことは分かっているでしょう。
「投資だから損をするリスクは分かっている。それでもチャレンジしてみたい!」と、一見、応援したくなるこの心意気、実はここに私は不安を感じるのです。

損をする覚悟は当然必要でしょう。リスクを理解できない人はやるべきではありません。では、投資した自己資金を損する覚悟があるからといって、それだけで会社を買う資格があるのでしょうか?

私は、会社を買って失敗するリスクは自分の損得の問題だけではないと思うのです。

仮に買収した会社が倒産した場合、ルール上は株が紙切れになるだけ、投資したお金がゼロになるだけです(連帯保証がないとして)。ここまでは、お金を投資する本人の問題でしょう。

が、会社には、社員、顧客、取引先・・・関係者が大勢います。経営のやり方次第では、これらの関係者に大きな影響がでます。

お金があって売主と合意さえできれば、法的には全く問題なく誰でも会社を買えますし、倒産してもこれら関係者に対して無限に責任が発生するわけではありません。だからといって、関係者への影響を考えると、自分の損得勘定だけで安易に会社のオーナーになって経営するのは、さすがに無責任すぎるのではないかと私は思います。

素人が資産運用の延長くらいの感覚で、安易に会社を買って経営する流れが広がると、いつか事故が起きないか非常に心配なのです。FXや仮想通貨の投資で失敗しても自己責任で済むかもしれませんが、会社を買うというのは、だいぶ性質の違う投資だと思うのです。

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サーチファンドや個人M&Aという夢のある活動が認知されだした今こそ、夢を煽るだけではなく、業界の健全な発展のために責任あるサポートをしていきたいと思う次第です。

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note:kimitakeito
twitter:@Kimitake_Ito
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