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『君たちはどう生きるか』 小説・漫画との関係

原作ではない、『君たちはどう生きるか』


 昭和12年(1937年)、新潮社から『君たちはどう生きるか』が出版されました。この初版本は映画『君たちはどう生きるか』にも登場します。本に書かれていた昭和12年という表記は、この初版本が出版された年を示しています。

『君たちはどう生きるか』は、名著として読み継がれきました。現在では、昭和57年(1982年)に出版された岩波文庫版が書店によく並んでいます。

 この小説は、映画の原作ではありません。タイトルを借用しただけで、物語は別の内容になっています。映画のクレジットを見ると、「原作・脚本・監督 宮﨑駿」という表記になっています。
 ですが、この小説を原作だと誤認している方も多いように感じています。その原因の一つとして考えられるのが、漫画版『君たちはどう生きるか』の存在です。

漫画版との偶然の一致

 2017年8月、マガジンハウスより、漫画版『君たちはどう生きるか』が発売されました。これは小説版を原作として漫画化したものになっています。

 漫画版が発売された2ヶ月後の2017年10月28日、早稲田大学で宮﨑駿監督と作家の半藤一利さんの対談が行われました。対談の中で、当時制作中の長編映画のタイトルが『君たちはどう生きるか』であることを、宮﨑監督が口走ってしまいます。その模様は「ジブリ汗まみれ」で放送され、アーカイブでも確認することができます。

 映画『君たちはどう生きるか』と漫画版『君たちはどう生きるか』は、偶然同じタイミングで世の中に露出することになります。お互いの制作状況など知る由もないはずで、全くの偶然の出来事でした。
 漫画版は、最終的に200万部を超える大ベストセラーとなりました。漫画版が小説を原作としていたことで、宮﨑駿監督が手掛ける映画『君たちはどう生きるか』も、小説が原作であると誤認されたのではないでしょうか。

 2024年1月からは、映画の公開を記念して、岩波文庫版にコラボカバーが付くようになりました。あくまで映画とのコラボではなく、米津玄師『地球儀』のジャケットとのコラボという扱いですが、これによって小説が原作だと誤認する人は、まだ増えるのかも知れません。


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