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【短めnote】弁護士サイトでみつけたウソ


振り込め詐欺事件で犯人の自宅からパソコンを押収したときのお話。

パソコンの内容を解析するお役目を任されて、それはもう隅から隅までデータを覗き見しました。

あまり理解のない先輩方は画像や動画を保存したフォルダを一所懸命みていましたが、私は違います。

インターネットブラウザを開いて、履歴を覗いてました。

「こいつら、普段はなにしてんのよ?」

エロ動画サイト、ゲームの攻略サイト、アマゾンでお買い物…

そんなものはどうでもよかったんですが、気になったのが『弁護士事務所のホームページ』へのアクセスでした。

・詐欺の犯人として逮捕された場合にどうやって身柄解放を目指すのか?

・刑罰を避ける方法はあるのか?

そんなページを一生懸命に調べてた様子。

「やることやっといて、罪を軽くしようってかよ?甘いぜ!」

当時はそんなことを思っていましたが、今では弁護士事務所のコンテンツのご依頼もたくさん頂いているのですから、不思議なものです。

※今のところ詐欺罪がテーマで「やったのに罰から逃れたい」という記事のご依頼は受けていません。クライアント様のご配慮でしょうか…


弁護士サイト、記事を書いているのは誰?


たとえば検索エンジンで「窃盗 逮捕」と検索すると、

・窃盗で逮捕された場合の流れを紹介します

・窃盗で逮捕された家族を早く釈放させたい

なんて記事が上位ヒットするはずです。

で、そんな記事をアップしているのが『◯◯法律事務所』とか『弁護士法人◯◯』とか、要するに弁護士事務所。

そりゃあお客さまを獲得するためのコンテンツですからね。

上得意さまになり得て、しかも緊急性があるから「もう、おたくに決めた!」と即決してくれるコンバージョン率の高いターゲットといえば、加害者・被疑者側になるでしょう。

資格をビジネスとして成立させるためには必然の流れです。

では、このサイトの記事、誰が書いてるの?

まさか忙しい弁護士事務所のスタッフの方が書いてるなんてことはないですよね。

そう、そこでも活躍しているのがwebライター。

弁護士の監修やチェックは入っているはずですが、ほとんどの記事がwebライターの手によって執筆されているのです。


誰が最初にウソをついたんだ?


私が弁護士事務所のコンテンツをお任せいただくようになったきっかけは、クラウドワークスで

「弁護士の方を募集!アドバイスをいただくお仕事です」

という案件に切り込み営業をかけたところからです。

弁護士じゃありませんが、刑事事件のコンテンツなら自信があります!ってね。

法令と実務の両方を、しかも実務を手厚くやってきたのですから、そりゃあ濃くて質が高いものを書けますよ。

当たり前です。

だからこそ、他のライターさんが書いた『ウソ』が気になって仕方ありません。

その中でもとびっきりのウソがコレ。

「逮捕後の微罪処分」について

ここで、どの事務所のサイトがこんな記事を掲載しているのかなんて明かして断罪するつもりはありませんよ。

だって、その事務所さん、私のクライアント様じゃありませんから。


なぜ「逮捕後の微罪処分」がウソになるのかをカンタンに説明しましょう。

微罪処分とは、ある一定の軽微な犯罪について、謝罪と弁済があり、被害も軽微で悪質性がなく、被害者が犯人の処罰を求めない場合においてのみ、犯人を検察庁に送致することなく警察段階で終結する手続きです。

つまりは「警察からのお叱りのみで終わり」ってことですね。

もう、この「逮捕後に弁護士を選任すれば微罪処分に持ち込んで丸く収められますよ」って記事が多いこと!

あの有名な事務所、テレビCMでもお馴染みのあの事務所も、みんな同じこと書いてます。

でも、ほとんどの弁護士サイトは、微罪処分の「ある条件」に一切触れていません。

それは「逮捕・告訴告発・自首事件ではないこと」です。

これらは厳格な刑事手続きですから、微罪処分などという手ぬるい方法では終結できないのです。

ってことは、逮捕後の微罪処分って、ムリじゃん!

そうです、ムリです。

たとえば料理のレシピで
「鶏むね肉を割って溶いてたまご焼きにしてください」
って言っているようなものです。

前提や順序がめちゃくちゃなんですよ。

いったい、どこのライターが初めにウソを書いて、それをチェックすべき人が「うんうん」と見逃して、監修すべき弁護士までもが「そうだよね」とスルーして掲載したのか…

何人のライターが、そのサイトをみて「そうか、逮捕後の微罪処分か!」と参考にしてしまったのか…

間違ったハンコからは間違った印影しか生まれません。

もう、この間違いは修正できないほどに拡散しています。

誰だ!最初にウソを書いたのは!

みんなが信じちゃってるじゃないか!

どこの弁護士が「逮捕されたけど、微罪処分で釈放してもらったよ」なんて経験を持っているんだ!


もちろん、私が執筆しているものでは「逮捕後じゃ微罪処分にならないよ」と書いていますよ。

ほかのライターさんの記事を校正するお仕事もいただいていますが、そこでもしっかり「これ、ムリよ」と修正のうえでフィードバックさせていただいております。

しかも、ある事務所のコンテンツには
「ほかの事務所のサイトには『逮捕後の微罪処分』って書いてるけど、それムリだから!」
としっかり書かせてもらいました。

大田区蒲田の某事務所さま、そして全国展開している某事務所様、いつもありがとうございます。

※「いやいや、微罪処分にできたよ」っていう弁護士先生がいれば、それは逮捕されていない事件です。微罪処分報告書にしっかりと「逮捕・告訴告発・自首事件ではない」って書いてあるでしょ。


便利な情報がたくさんあるけど、信用性は…


弁護士サイトは、小難しい法律や手続き面をわかりやすくまとめてくれているので、お困りごとの解決などにはとても役に立つと思います。

でも、弁護士サイトだからといって、すべてのコンテンツが「弁護士のお墨付き情報」というわけでもありません

私もwebライターというお仕事をさせていただいている手前、あまり偉そうなことはいえませんが、専門性があるライターが書いたという保証はどこにもないのです。

っていうか「弁護士サイトで記事を書ける専門性」って、ものすごく範囲が狭そうですよね。

webライターは専門性があればいいってものではありません。

どんなジャンル、どんなテーマでも書いてしまう『ジェネラリスト』が活躍する場でもあります。

ただし、弁護士サイトに関しては、ジェネラリストのライターが書いた記事を鵜呑みにして信じてしまうと大やけどをする危険があります。

ライターとしては「複数の参考サイトを比較して情報に誤りがないかをチェックしている」といいたいところですが、ここで例に挙げた微罪処分のように、どこもかしこもウソ情報を紹介しているようじゃ話になりません。

ジェネラリストのライターを批判しているわけではありませんが、スペシャリストの独壇場となるジャンルも存在するわけです。

お困りごとがあって弁護士サイトを閲覧する方はたくさんいると思いますが、情報の吟味をお忘れなく。


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