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古い夢の話

心の奥の深いところに
いつからか染み付いて離れないひとりがいる

例えばあなたがくれた一枚の手紙
ノートの切れ端を簡単に折りたたんだだけの
短い手紙を未だ大切に思っている

あなたからいつもいい匂いがするのは
遺伝子が遠いからだと知った時
少しだけわたしは寂しくて
だけど今でも惹かれてしまうのは
そんなことが理由ではないと思う

嫌なことは忘れたいほうで
昔の記憶はほとんど消してしまった
思い返すのはいつも同じシーンばかり

わたしは自分が好きではなかったから
いつかあなたがわたしといる自分を
恥じる日が来ると思った
それは怖いと思った
突き放してしまったのは
上手く言葉に出来なかったから
言い訳をしたいのはまだどうしても大切だから

長く一緒にいても離れてしまうのは一瞬だと
人生で初めて知ったのはその時で
形に残るものが尊いのは
支えにしてしまっているから

わたしはまだあなたを夢に見て
もう一度だけでもまた会えたら
何を伝えられるかなあと
自分勝手か、
夢の中のあなたはいつも
どうしようもなく優しいままで
わたしに笑ってくれるから
もう起きられないなあと思う


一番に知っていて欲しくて
わたしはわたしを歌っていて
一番に知っていると思っていた日々は
過去になってしまった
今のあなたをわたしはなにも知らないけれど
わたしの好きなあなたなど
変わり果ててしまっていてくれと願う

十代はもう終わってしまった
選べる道は安全な方から
駆け出してしまいそうな気持ちを
どうにか抑え込む夜は
雨でもいい、風でもいいから
吹き飛ばしてしまって欲しい

ただ誰を一番そばに置いても
生きてゆく景色の片隅に
どうか居座りたいと思うのだ

どうか忘れないでと願うのだ

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