私、OLになる。

地獄のような言い争いを繰り広げたクリスマス、義母に宥められながら落とし所を見つけ、年が明けた。
ちなみに年越しは義母と義妹と過ごした。

…別れたんだよな??

これは以降5年間、周りからひたすら言われる言葉でもある。

年が明けたら仕事始め。
さぁ!やるぞ!!と社会復帰に少しウキウキしていた。
家族以外の、家の外で繋がりができるというのは、子育てで世間から隔絶されがちな親たちにとってとても重要である。

仕事自体は今までパートのような形で手伝いをしていた内容と変わらないし、在籍していたメンバーとも顔見知りだし?
何ら不安はないジャーン!
とか思っていた。

「キミコさん!私仕事辞めることになったので、引き継ぎよろしくお願いします!」

おぉん。
ダレノガレ明美似のバイリンガル美女がいるから義母と一緒の会社でも平気だと思ったのに。
そうしたら今後の通訳とかは誰になるんだ?

「キミコさんじゃないですか?」

早々に垂れ込める暗雲。
ていうか、ダレちゃんが辞めたら私と義母、ふたりっきりでは?
通訳って、私この業界の用語とか知らんよ?

この頃になると、いきなり以前籍を置かせてもらっていた本社からお呼びがかかって「これ翻訳して!」とか、急に受話器を渡されて「英語だから話して!」とかいう無茶振りもされるようになっていた。
でもその度に毎度言う。

「いや、その業界詳しくないんで無理です」

いきなり建築の図面見て、電話口で説明しろとか言われても無理ィ。

しかし社長の元嫁(正しくはパートナー)とはいえ、分からないので無理ですぅ。なんて言えないし、そもそも誰かが困っているなら放ってはおけないのでやるけどさ。

前提として私は、ぶちこまれた環境のおかげで日常会話は平気だ。
一般常識程度の会話なら苦ではない。
でもビジネスともなると、そうはいかんざき。
辛うじて話せると言えば役所手続き関係とか、それくらい。
それを急に契約書だ、図面だなんだと訳せと言われても困ってしまうのである。

よく言われることがある。

「英語って敬語がないから楽だよね」

んな訳あるか!!!
詳しく書くと長くなってしまうので簡単に説明すると、英語にも敬語とかビジネス用の話し方というのは存在する。
ちょっとイギリス人になった気持ち、というと語弊があるだろうか。
そこまで英語に詳しいわけでもないので、あくまで私の感覚であることをご理解いただきたいが、イギリス英語は長い。

もし彼らが「お茶をください」と言ったとして、日本語に訳すならば
「もし親切なあなたのご迷惑にならないのであれば、1杯のお茶をいただけないでしょうか」
という感じ。
あとなんかすっごい頭良さそうな言葉を使う。
すっごい頭悪そうな表現で申し訳ないが。
とにかくこれに似たような何かを、ビジネス英語からは感じるのである。

そして英語には、同じ単語を繰り返さない、というものがある。
特に文面ではしつこく感じられるので、同じ単語を繰り返し述べるのではなく、別の言葉で言い換えをしたりする必要があるのだ。
そうなると豊富な語彙力が必要になってくる。

おそらく皆さんの中には、私のことを実際に知っている人も多いであろう。
今後もし英語を話している場面に出くわしたら、よーーーく聞いてみてほしい。

中学英語の単語しか使ってないんだ。

てへへ。
もちろん、この会社で覚えた単語はたくさんあるがほとんどは業界用語だったりするので、使う場面はあまりない。
英語話せるキミコさんかっこいいです!とか言ってもらえたこともあるので、お恥ずかしい限りだが本当に中学英語程度の語彙力しかないんです。ごめんね。

そういったわけで、私はビジネスの場面での英語には自信が全くなかった。
じゃあそんな時はどうするか。
やってみるしかない。

メールを打つ必要があれば、Google大先生に英語でのビジネスメールの基礎を教えてもらう。
そして書いた文は義母ことボスに確認してもらい、添削をお願いした。

電話口での粗相はもっと多かった。
そんな時は大抵彼女が後から「こういう時はこう言ったほうがプロっぽいわよ」と教えてくれる。

ビジネス英語の教室に通おうとも思ったのだが、金額を見て諦めた。
半年で50万とか無理。
叩き上げで覚えるしかない。

そうやってI’m sorry を連発していた私が、My apologies も言えるようになった頃、それはやってくる。

決算期だ。

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