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ウクライナ情勢をめぐる外交交渉について-02

本日25日ドイツ・ベルリンにフランス・マクロン大統領が来訪し、ショルツ首相との会談が行われた。フランスとドイツは共にEUの中心的存在であり、会談ではヨーロッパ全体の多岐にわたる話し合いが行われたが、主要な議題はウクライナ情勢であった。

会談後の共同記者会見で明らかになったことは、現在アメリカとロシアの間でヨーロッパの頭越しに行なわれている話し合いとは別に、ヨーロッパが主体となった外交努力をフランスとドイツが中心となり行うという考え方だった。その枠組みとして両者が挙げたのが、筆者の予想した通りノルマンディー・フォーマットであった。

ノルマンディー・フォーマットとは、ウクライナとロシアの間で紛争状態のままとなっている東ウクライナ地域の安定化プロセスを取り決めたミンスク合意を推進するために、フランスとドイツが仲介役としてとり持つ枠組みだが、2019年以降は進展のないままプロセスは実質的に止まっている。

これに関してマクロン大統領が昨日パリで突如発表を行い、明日26日にエリゼ宮にウクライナ、ロシア、ドイツの外交・安全保障関係者を招集しノルマンディー・フォーマット会合の再開に向けた話し合いを行うことを明らかにした。

マクロン大統領によると、この明日の会合で当事者間による今後の協議の方向性を模索し、その上でプロセスをステップアップさせ東ウクライナ問題の解決を目指すという。また今週28日金曜日に、マクロン大統領とロシア・プーチン大統領の間で電話会議を行い、協議の方向性を話し合うという。

一方のアメリカ・NATOとロシアの間での外交交渉に関しては、複数の安全保障研究者の情報によると、早ければ今週末にもNATOからロシアに対しヨーロッパ安全保障枠組み見直しに関するロシア案への回答が提示される見通しだ。

ここへきて一連の外交交渉のペースが速まっているのは、2月4日に予定される北京オリンピック開幕式典にロシア・プーチン大統領が出席し、そこで中国・習近平主席との首脳会談が行われるという外交日程が影響しているためだろう。中央アジアと東欧に影響力を持つ中国との間で、ウクライナ情勢に関する突っ込んだ話し合いが行われると見られるからだ。

ウクライナ情勢に関して中国を巻き込んだ対露牽制を模索するとしたら、この中露首脳会談の前にプーチン大統領に対して外交上のボールを投げておく必要がある。そのような時間軸をアメリカ・NATO、フランス、ドイツは想定していると見るのが自然だろう。

また、アメリカ、フランス、ドイツの動きとは別に、トルコによる仲介の動きがあり、エルドアン大統領が2月3日にウクライナを訪問しゼレンスキー大統領と会談する予定だ。こうした一連の並行する外交交渉を俯瞰して捉えるのが肝要だろう。そのように筆者は考えている。

(Text written by Kimihiko Adachi)

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