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フィンランド、ロシアからの電力輸入停止について。

 フィンランド全土を統括する送電オペレターFingrid(本社所在地、ヘルシンキ)は5月13日午後に声明を出し、5月14日午前1時の時点をもってFingridの送電網を介してロシアから輸入されている電力(系統電圧400kV、接続キャパシティー900MW )の供給が停止される旨、ロシア送電オペレターInter RAOのフィンランド子会社(RAO Nordic)より通知を受けたことを明らかにした。RAO Nordicによる供給停止の理由は、フィンランド電力市場で販売したロシアからの輸入電力の5月分代金の支払いを受け取れていないためとしている。また、Fingridは、ロシアからの電力供給が停止しても、フィンランド国内の現状の電力需給には全く問題がなく、スウェーデンからの輸入増および国内電源の発電増で調整して対応できるとしている。

 フィンランドはこれに先立つ4月末の時点でFingridを通じて、ロシアからの電力輸入を年内には停止してロシアの電力輸入から完全に脱却したい意向をすでに表明していた。この準備措置として、Fingridは4月24日付けで、ロシアからの接続上限を従来の1.3GW(フィンランド総電力需要の約10%に相当)から900MWに落とし、ロシアからの電力供給がいつ停止になっても困らないように備えていた。900MWまで落としておけば、その分の調整は、今年新設の風力電源(2GW)と、やはり今年から商業運転に入る新設原発電源オルキルオト3号機(1.6GW、フランス・フラマトム製原子炉)が電源として加わる発電増と、それ以外に必要があれば、スウェーデンからの電力輸入とエストニア向けの電力輸出を調整することで余裕を持って対応できる範囲だろう。

 フィンランドはロシアに対して、オルキオト原発3号機がフル稼働試運転に入る7月以降は系統の電力キャパシティーに余裕を持たせる必要があり、その時点でロシアからの電力輸入はゼロにしたいとも既に伝えていた(実質的なロシアからの電力輸入の完全停止)ので、ロシアとしてはフィンランドがNATO加盟を決めたこのタイミングでロシア側から先に電力供給を停止するという行動を選択したのだろう。

■参考資料: Electricity trading with Russia will suspend – no threat to the sufficiency of electricity in Finland, 13.5.2022FINGRID

(Text written by Kimihiko Adachi)

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