EU欧州理事会、5月2日に行われたエネルギー関連閣僚会合について。
EU欧州理事会(EU加盟国元首および欧州委員会で構成されるEUの理事会)は5月2日、ロシア国営ガスプロムからポーランドおよびブルガリア向けガス供給が停止となった事態をうけてEU加盟27ヵ国のエネルギー担当大臣が出席する会合をブリュッセルで行った。
懸案となっていた、ロシアからのガス代金のルーブル決済要求に対するEUの公式見解の確認について、会合後に行われた記者会見では、欧州委員会カドリ・シムソン・エネルギー担当委員(欧州委員会のエネルギー担当相に相当)より説明があり、欧州委員会の見解としては、特別口座を開設して支払いをユーロ(あるいは米ドル)で送金したうえでルーブルに替えてガスプロムが引き落とすというロシア側が要求する決済方法は、EUがロシアに対して科している制裁(ロシア中央銀行との取引を禁じる)に抵触するので不可という見解を示し、そのうえで、ロシア側に対してどのような支払い方法を行えば制裁には抵触しないのかを欧州委員会から詳しいガイドラインとして近日中に加盟国に示すことになった旨説明があった。
ロシアとのガス取引決済期限が5月中旬に迫るなかで、今回の会合直前にハンガリーとイタリアがロシアからの要求に沿った決済を行う方向で検討しているとの観測気球を上げていたこと、また、ドイツUniper、オーストリアOMV、イタリアEniなどのガスの取り扱い量が多い最大手も、ロシア側要求のガスプロムバンクへの特別口座開設の検討に入っていることなどから、今回の会合では、EUとしてはロシアへの対応が加盟国間でばらばらにならないよう、各加盟国に対して釘をさしたものとみればよいだろう。現在、EUで並行して検討されている、ロシア産ガス、(および原油)の禁輸にむけて、将来的にEUでガスを一括共同購入することで代替調達をしていくという構想があり、加盟国をその方向へまとめていきたい思惑がある。ただ、現実的には短期間でロシア産ガスを全て代替することは不可能であり、今週水曜日以降にEUが発表予定の、ロシアへの追加制裁の内容もみて、EU全体としての動きをとらえていく必要がある。
■参考資料: Press Conference (Energy), 2. May, 2022, European Council
(Text written by Kimihiko Adachi)
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