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ウクライナ情勢をめぐる外交交渉について-01

先週末にジュネーブで行われた米露外相会談が平行線のままに終わり、ウクライナ情勢をめぐるアメリカ・NATOとロシアの間の外交交渉は行き詰まりの様相を見せている。ロシア側はアメリカとNATOから今週末から来週にかけて提示される予定のヨーロッパ安全保障枠組みの見直しに関するロシア案に対する回答を待つとしているが、それがロシアによるウクライナ侵攻準備のための時間稼ぎにしかならない可能性も排除できない情勢だ。

そのような状況の中で注目すべき点は、トルコ・エルドアン大統領によるウクライナ・ロシア間の仲介の動きだと筆者は考えている。トルコは政治・通商の両面から見てヨーロッパから独立した動きが可能であり、かつ安全保障的にはNATO加盟国としてアメリカ・NATOと同期した動きを取ることが可能だ。そして何より近年トルコは単独で、シリア紛争、アゼルバイジャン及びアルメニアをめぐる紛争を通じてロシアに対抗する安全保障上の強い影響力を築き上げている。したがって、仲介役としての立場を裏付けるだけの十分な力があるといえる。

ロシア側からは先週クレムリンの大統領報道官より、トルコの仲介の動きにロシアとウクライナに加えて東ウクライナ紛争地域の代表者も当事者として含めることを期待するとの意見表明があり、ロシア側も前向きにとらえているようだ。エルドアン大統領が2月3日にウクライナを訪問する予定であり、ロシア側の意向を踏まえてウクライナ・ゼレンスキー大統領と会談を行うものと思われれる。

ところでヨーロッパの週明け24日に、これに関連していると推測される動きがあった。フランス・マクロン大統領が今週26日水曜日にパリでウクライナ、ロシア、ドイツの代表者を招きノルマンディー・フォーマット会合を行うと突然発表したのだ。

ノルマンディー・フォーマットとは、ウクライナとロシアの間で紛争状態のままとなっている東ウクライナ地域の安定化プロセスを取り決めたミンスク合意を推進するために、フランスとドイツが仲介役としてとり持つ枠組みだ。そもそもこの枠組みが機能せず、現在のウクライナ・ロシア間の緊迫状態を招いている。

ところが、トルコの動きはまさにこの枠組みを維持しながら、仲介役をフランス、ドイツからトルコに入れ替えようとする動きだ。フランスが突然今週、今まで機能させることができなかったノルマンディー・フォーマット会合をパリで行うことにした裏には、並行するトルコによる仲介の動きの影響があるのではないか。そのように筆者は考えている。

(Text written by Kimihiko Adachi)

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