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ロシア天然ガス支払い条件: ドイツ・ショルツ首相とロシア大統領の電話会議について。

ヨーロッパ時間30日夜、ドイツ・ショルツ首相はロシア大統領と電話会議を行い、その中の議題の一つであったロシア天然ガス取引の支払い条件に関して、ロシア大統領より、4月1日付けで発効する新しい法律によりロシアからの天然ガス輸入国は輸入代金の支払い決済をルーブル建てとするように義務付けられることになるが、ヨーロッパ各国に関しては、従来通りユーロあるいは米ドル建ての決済を認める意向との話があったことを明らかにした。

先週水曜日にロシア大統領は非友好国(ロシアへの経済制裁に加わっている国を指す)向けのロシア天然ガス取引について、現状のユーロあるいは米ドル建てから、ルーブル建てへの変更要求を表明していた。これに対して、G7が28日に緊急会合を開催し、即座にルーブル建てへの変更要求を拒絶する意思表示をし、ロシアに対して牽制を行っていた。

今回の電話会議で、ショルツ首相がロシア大統領に対してどのような返答を行ったのかは明らかにされていない。また、G7がこれに対して何らかの意見表明を行うのかも明らかになっていない。しかし、ショルツ首相からの情報をみると、ヨーロッパ諸国は4月1日以降も表向きは従来通りロシアからの天然ガスをユーロあるいは米ドル建てで粛々と購入し続けるのであろう。

しかし、あることを禁止する法律を作り、そのうえで法律からはずれていることをあえて公認して泳がせるという手法は、相手に忠誠を誓わせ、手玉に取るロシアの常套手段だ。有名な事例では、ロシアがシリアやウクライナにおける軍事紛争に投入している傭兵部隊だ。傭兵はロシアではいまだ法律で禁止されており認められていない。クレムリン中枢の指示で動いている傭兵請負産業ワグナー社(登記地はアルゼンチン)は本来は処罰の対象だが、クレムリンが公認している。一時期ロシア議会デューマで傭兵を合法化する方向で立法が前向きに検討されたが、最終的には、クレムリンの意向により合法化は見送られた。そのクレムリンの論理というのは、あえて非合法にしておきそのうえで公認することで、非合法だからクレムリンに徹底的に従わないと何かあったら処分されるという意識を相手に持たせることができ強い忠誠心を求めることができるという論理であった。

もちろん、ヨーロッパ諸国はこうしたロシアの手法を良く理解しているはずであり、今回のショルツ首相とロシア大統領の電話会談の内容如何にかかわらず、何時にでもロシアから天然ガス供給が止めれれる可能性があるという認識のもとで、リスク対策の準備を淡々と進めることになるはずだ。

(Text written by Kimihiko Adachi)

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