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フランス大統領選挙: TV討論前日の調査会社イプソスによる決選投票予測について。

 フランス大統領選挙では、決戦投票の直前、今回は4月20日夜に行われる候補者2人によるTV討論が、有権者の投票行動に大きな影響を与える。そのTV討論の前日である19日に調査会社イプソスが出した決選投票に関する最新予測では、マクロン氏が56.5%を獲得し、ル・ペン氏の43.5%を下し勝利するとしており、1日前と比べるとマクロン氏のリードがさらに1ポイント広がった。マクロン氏のリードが安全圏に近づきつつあるなかで、20日夜のTV討論を迎えることになる。

 このTV討論は、フランスTV局TF1、France2 合同でフランス全土に放映され、候補者2人の間で2時間にわたり行われるものだ。人物を選ぶ性格が強い大統領選挙にとって、このTV討論は非常に重要で、前回2017年の際には視聴率60%で同じマクロン氏とル・ペン氏の対決となり、当時オランド政権下の経済大臣からの立候補であったがニューフェースであったマクロン氏が、巧みな論述でル・ペン氏を極右のみならず経済音痴かのように印象付けることに成功し完勝、決選投票での地滑り的勝利を得た。今回マクロン氏は、逆風下の現職大統領として臨み、逆にル・ペン氏の攻撃にさらされることになるので、ディベートを非常に得意とするマクロン氏にとり今回のTV討論は必ずしも有利な状況ではない。

 同じくイプソスが19日に出した聞き取り調査の結果では、第1回投票でメランション氏に投票した有権者のうち、決選投票では39%がマクロン氏へ、16%がル・ペン氏へ投票すると回答しており、マクロン氏へ投票するとの回答が1日前の結果から1ポイント上昇した。また、第1回投票でゼムール氏へ投票した有権者では、決選投票でマクロン氏へ投票が8%、ル・ペン氏へ投票が77%となっており、ル・ペン氏へ投票するとの回答が1日前の結果から4ポイント上昇している。フランス緑の党ヤニック・ジャド党首へ投票した有権者では、決選投票で58%がマクロン氏、11%がル・ペン氏へ投票すると回答しており、マクロン氏へ投票するとの回答が1日前の結果から3ポイント下落した。共和党ペクレス氏へ投票した有権者では、決選投票でマクロン氏へ投票が47%、ル・ペン氏へ投票が24%となっており、ル・ペン氏へ投票するとの回答が1日前の結果から7ポイント上昇、逆にマクロン氏へ投票との回答は5ポイント下落している。もともと、従来共和党が強かったフランス北東部、南部の地域とル・ペン氏の支持基盤がオーバーラップしており、共和党支持層には潜在的なル・ペン氏支持者が含まれていると考えてよい。数字の流れは、こうした背景を示唆している。

 第1回投票の結果をみると、マクロン氏の得票は9,783,058票であったが、ル・ペン氏の得票8,133,828票に、決選投票でル・ペン氏に大部分の支持者票が流れると予想される極右ゼムール氏の2,485,226票を加えると、既にマクロン氏を83万票以上超えている。第1回投票で3位につけたメランション氏の得票は7,712,520票と非常に大きいので、20日のTV討論の内容をみたうえでメランション支持者のうちどれだけの割合が棄権や白票の投票という抗議行動をとるのかが決選投票の結果を左右するといってよいだろう。

 マクロン氏はディベートを非常に得意とし、弁舌が巧みだが、マクロン政権のこれまでの5年間の景色をみてきた有権者が、今回行われるTV討論の内容をどのように評価するかは、予断を許さない状況だ。

(Text written by Kimihiko Adachi)

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