久保・金成『アメリカ大統領選』

 2020年10月に出版されたこの本が、2021年に読了した最初の一冊になった。昨年末に買ってあって、元日から読み始め、8日に読了。

 アメリカでの大統領選挙とはどういうものか、建国の頃から選挙の仕組みが形成され、政党政治が根付いてきて、選挙による政権交代とは、どういうことが行われるのか、といったことがまず述べられる。その後、党内予備選の仕組み、次いで本選挙の仕組み、それぞれの政党や候補者の支持者へのインタビューなどから2020年11月の選挙へ向けた考察がなされている。そんな中で、ハーバード大学のスティーブン・レビツキーへのインタビュー記録が非常に示唆に富んでいるように思う。

 いわく、ライバルへの寛容性が失われていて、それは1990年代から徐々に起こっていたことである、と。以下、引用。
「・・・2000年代の初頭までには、相手に対して抱く恐怖と憎悪の度合いが急激に増したのです。相手に対して恐怖を抱くとき、もう一方の政党を単なる「もう一つの政党」ではなく、「敵」や「脅威」「邪悪」と見なしたとき、相手を阻止するためにどんな手段でも使いたくなるのです。その思惑が政治家に規範を破らせるのです」

 アメリカの連邦最高裁の裁判官を務め、昨年に逝去したルース・ベイダー・ギンズバーグはいわゆるリベラル派の中心人物として有名であった。そのギンズバーグは、連邦最高裁の同僚であったアントニン・スカリアとは考え方の違いを超えた友情で結ばれていたことはよく知られている。スカリアは保守派として有名で、判決文においては立場を異にすることがしょっちゅう。しかし、考え方の違いを尊重しあい、人と人としての絆が確かにあったのだと思う。

 たとえ考え方が違っても、汚い言葉で罵り貶めあうのではなく、ギンズバーグとスカリアのような関係でいたいと願ってやまない。

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