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「貧乏ゆすりと言わないで」 16.主治医から家族への説明

あなたの余命はあと一年です。
と宣告されたらあなたはどうしますか。

パーキンソン病は難病で、
根治できないけれど


薬や手術で寿命を全うできるようになった。
喜美は、パーキンソン病と確定された日に
トイレに一人で行けなくなったら
「安楽死」をと考えていた。

家族に迷惑をかけたくない、
その一心と、小さなプライドからだった。

ちょうどそのころ、
スイスに安楽死の制度があって、
それを選択する日本人女性のことを特集していた
テレビ番組をみた。

眠るようにその生涯をとじる姿に
涙があふれて仕方なかったのを今でも覚えている


すべての検査が終わり主治医から   
「ご家族に説明をしたいので皆さんで病院に来てください。」             との話があった。

話を聴きに行ったのは手術のちょうど二週間前だった。
喜美は4人の子どもたちとかっちゃんと
六人で診察室に入った。
説明は脳神経外科の主治医がしてくれた。


1、現在の病状および診断病状
2、現在の症状・病状についての今後の予測
3、処置及び治療の方針
4-1、実施を予定している医療(手術・検査・処置等)の概要
4-2、実施予定の医療に伴う危険性と起こりえる合併症、
および実施しない場合に予想されるリスクや予後等
5、実施予定意外の代替医療の有無と治療効果や危険性、
および予後などの比較
6、他の医師の意見(セカンドオピニオン)について
7、緊急に処置を要する状況が発生した場合について
8、同意の取り消しについて
9、その他 専門業者や他病院医師の立ち会いについて。


そして、手術は二回行うこと。  
DBS手術は
一回目に局所麻酔で意識のある状態で、
執刀医と話をしながら手術をする。
この手術時間が約10時間かかる。 

二回目は全身麻酔で右胸部皮下に電池を埋め込む手術だ。

運が良ければ二回目の手術は
一週間後に実施となるが
連日コロナ患者が増えていたため
病院の方もコロナの対応で手がいっぱいで
余計な手術はなるべくしないようにとお達しが出たようだ

もしかしたら、
二回目の手術はちょっと先になるかもしれない。
言われた。
(そっか、命にかかわる手術じゃないから、
後回しなんだ・・・と軽いショックを受けたが仕方ない。
もっと急を要する患者さんもいるのだから。)

【写真】

手術について、
主治医がイラストを描きながら説明してくれた。
子どもたちは、初めて手術の説明を聞いたので
一言も言葉を発せず神妙に聞き入っていた。

この時知ったことだが、
脳の中に電極を進めるスピードが
3㎝/30〜60分かかるということ。
本当に慎重に、慎重に進めることで
朝から夕まで時間がかかるのも無理はないことを悟り
執刀医に敬意を表したくなった。


午後はCT検査があったので
喜美だけ病院に残り、家族はそれぞれ自分の家に戻って行った

別れ際に子供たち一人ひとりとハグをした。
いつもは照れてしまい、人前でハグなんかしない次男の咲哉も
少し目を赤くして、
「がんばってね。」
と声をかけてくれた。
こんな風に声をかけてくれるほど
素敵な大人に成長していたことが嬉しくて、
思わず喜美も目頭が熱くなってしまった。
             
手術の日は夕方から長男の優斗が
病院に来てくれることになった

一歩ずつ一歩ずつ、手術の日が近づいていた


【写真】

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