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「貧乏ゆすりと言わないで」 7.仮面用顔貌


喜美が特に気にしていることがある。
病気になる前はぱっちりとした二重だったのだが、
目が開きづらくなってきたことだ。
表情も乏しくなって、
笑顔を作るのだけどなんとなくうまくいかない。

鏡に映る自分の顔を見てにーーーっと笑ってみる。
だめだ。怖いくらい表情がない。
意識をしていないと無表情で瞬きも少なく
一点を見つめるような顔つきになる「仮面用顔貌」だ。

病気になることよりも、
仮面のような顔つきになってしまうことがショックで、
とにかく表情筋を鍛える訓練を毎朝のルーティーンに取り入れた。

表情がないと人間じゃなくなるような気がして、辛かった。
それでも、やれることはやる。
いつまでも「普通」に生きていたいから。

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