「貧乏ゆすりと言わないで」 5.パーキンソン病の特徴は・・・

今まで出来たことができなくなる。
喜美は少し焦った。
その日は友人の依頼で
中学校のPTA勉強会と称して
「整理収納のコツ」について話す
講演の依頼があった。

その時学校で出された来客用スリッパが
ビニール製だった。

「しまった。」　　　　　　　　　　　　　　
と思ったがもう遅い。

パーキンソン病は足に力が入らないから
ビニール製のスリッパは
その機能を果たしてくれない。
歩き出した瞬間、案の定スリッパが
カーリングのストーンのように
廊下の上をスルスルと滑らかに
すべるように飛んで行った。
「あちゃー！飛んでいっちゃったよー
アハハハ。」
「あらら。喜美ちゃんったら〜。」
そう言って友人も笑ってくれた。

ビニールスリッパで階段を上がるのも
ひと苦労だ。
時間もかかるのでとにかく焦ってしまう。
天敵発見の瞬間だった。

他にも、ハイヒールは転んでしまう
リスクがあるのでNG。
ハイカットのスニーカーも履きづらい。
喜美の足に一番なじんだのは
履き口にゴムが入っている
バレエシューズだった。
カラーバリエーションもあり、
これならおしゃれを楽しめると
一気にテンションが上がった。

思い通りにならない身体を
喜美は恨めしく感じながらも
まだまだ楽しくなる人生があると思うと
少しだけワクワクした。
そこから先は少し前向きになって
「よぉーし！電動車いすに乗るようになっても
オラオラ言わせて
ビュンビュン走り回ってやるわ！」　　　　　　　　　　　　　　　
と喜美は心に誓った。
動ける私も、動けない私も、私はワタシなのだ。