見出し画像

アロマの禁忌



また昔の記事を、しかも二つに分けていたのをくっつけたので長いです。そして少し情報が古いです。
香料や揮発物(アロマ精油、エッセンシャルオイルを含む)の研究は進んでいて、続々と科学的な解明もなされていますよね。

では以下、昔書いた、要約すれば「アロマは副作用も禁忌もあるんだから芳香剤代わりにテキトーに使ってんじゃねぇよ」という内容の記事です。

では以下に。





効果と副作用の話


作用と副作用と禁忌

【禁忌】とは、薬や食品、生体に使用するもののうちで、ある条件を持つ人、あるいは状況において使用してはいけないという禁止事項や使用禁止を表すものです。

薬の場合はしっかりと添付書類に記載があります。薬剤師や医師に相談して気を付ける人も多いでしょう。


では香料は?


たかが香料、たかがにおい、という観点から見逃しがちですが、例えばアロマテラピーの精油の中でも禁忌は存在します。
アロマと人工香料は違うものですが、その成分には多くの重複がありますし、アロマ・精油と言えども天然の植物からただ抽出した成分だけではないし、中には人工的に合成されたものが非常に多く存在します。

アロマには効能があるとされ、現在の日本では治療目的での利用は認可されていませんが、リラックス目的としての利用はあらゆる場所で非常に流行しています。
しかしここに穴があります。
とりあえずリラックスできる、(天然由来の成分「ぽい」ものだから)危険がないものとして、注意すべき事項が非常におろそかにされた状態で使われてしまっている、という事が増えているのです。
これはアロマが日本では医薬品扱いではなく雑貨扱いであるという点が非常に大きく、悪い方向に作用している結果と言えます。

昨今、駅やホテル、商業施設など様々な場所で、まるで芳香剤を置くような気軽さでアロマが炊かれることが増えています(※芳香剤だって使用には注意が必要です)。
様々な身体的事情や疾患を持つ人が当然集まるであろう病院や調剤薬局ですら、外来の待合などでアロマを炊くのが流行しています。これはその病院の医師や看護師など、医療の専門家までもが「たかが精油=雑貨が発するにおいが人体に影響を与える事などありえない」という思い込みに侵されているということですよね。

ですがアロマには効果があります。国によっては大まじめに治療法としてアロマを導入しているところがあります。日本のように「とりあえずいい匂いでも適当にさせとけば多少リラックスはするだろう」程度の使い方ではなくて、疾患の治療のために使われています。


これは医療従事者なら絶対に知ってるはずの事なんですが。
治療に有益な効果が得られるものには、必ず逆の効果(副作用)があるということです。
例えば、ごく簡単な例としては、「高血圧の人に使えば血圧を下げる作用のあるナニカ」を、低血圧の人に使ったら?血圧下がりすぎてぶっ倒れてしまうという事が起こり得ますよね。それを多くの方が失念したまま(あるいはたかがアロマ=雑貨と甘く見たまま)気軽に簡単に使用してしまってるという、非常に危険な状況であるともいえます。

アロマを安全に使うためには

しっかりとアロマを勉強している方々は、精油の成分、とくにケトン類神経系への大きく作用する事をしっかりとご存じです。
化学的作用機序を理解していなくとも、少なくとも現在の所、アロマテラピーにおいて神経系疾患にユーカリとカンファーは禁忌であるという程度の事くらいはご存じです。

それをよくご存じなので、本当にアロマをしっかり勉強なされた方々は、はじめにフィッティングテストを行います。どんな使い方であれ必ずです。

アロマの使用法には色々あります。
〇蒸散
 オイルをアロマストーンや木製チップ、ポプリなどに垂らしたり、スティックを使う方法
〇燻蒸
 アロマディフューザーなどを使い、熱で空間への蒸散を促す方法
〇塗布
 希釈したアロマオイルを直接肌に塗布する方法
〇アロマ浴
 入浴時に浴槽にアロマオイルを垂らす方法
〇吸入
 アロマオイルを温湯に垂らし、その蒸気を吸入する方法
◇スプレー
 希釈液をスプレーする方法。蒸散と吸入、塗布と重複

その他いろいろ。

直接肌に触れる塗布法とアロマ浴、直接体内に取り込む意識的な吸入以外はあまり気にする必要はないという意識が広まっていますが、それは間違いで、
どんな使用法でもフィッティングテストは必要です。
しっかりとアロマを学ばれた方々は、必ず行います。

そして、アロマの濃度にも、使用時間にも気を配ります。

例えばリラックス効果や、頭痛を緩和するという効能があり、比較的安全だとされているラベンダー。ある一定時間、一定濃度を超えると、人により逆に興奮状態や不眠の状態にしたり、頭痛を誘発するという研究結果があります。そして安全と言われたラベンダーも、2023年にEUのREACH規則でアレルゲン表示の義務化がされています。

どの精油も、どの使い方でも、濃度や時間も区切るべきであり、不特定多数がいる空間で、時間も区切らず蒸散や燻蒸させたり、スプレーさせる方法は推奨されません。
アロマは芳香剤とは違うのですから(何度も言いますが、芳香剤にももちろん注意が必要です)。

ですがネットでアロマについて調べると、まず「この精油にはこの効果がある」などと効能についてのみ紹介しているページが殆どで、使用上の注意や禁忌に触れているところはごくわずかですし、どんな使用法でもフィッティングテストが必要であることを明記しているところはさらに少ないです。
 
アロマといえども、作用があるのならばその反作用=副作用、そして禁忌が必ず存在します。効果がある以上、甘く見て適当に使っていいものではないはずです。

また、作用とは別にアレルギーの問題があります。アレルギーが起きるか起きないかは、作用や副作用・禁忌とはまた別の問題であり、どの人に対しても確実にアレルギーを起こさないという物質は存在しません

それを特に日本では「たかがニオイでリラックスさせる程度のものに、そんな作用があるわけない」と誤解したままの人が非常に多い。
これはアロマを有効に使いたいと思っておられる方々にとっても、非常に良くないことのはずです。間違った使い方が事故や被害を生むことになれば、アロマへの信頼度自体を落としてしまうのですから。

漢方・和漢薬の話

医学の中では似たような誤解の歴史があります。

例えば漢方や和漢薬ですね。

日本の医学界において、明治維新からの西洋化で、西洋医学重視のために医学分野から漢方や和漢が排斥されたという歴史がありました(1895年に帝国議会に請願が提出され復権)。

なぜ排斥されたかというと。

ぶっちゃけてしまえば「そのへんの葉っぱを煮詰めたり乾燥させたものを薬だなんて認めない」って事だったんでしょうね。西洋医学重視だから。切ったり貼ったり試験管で合成したり顕微鏡使わないのは科学や医学じゃない、あと古臭いって風潮だったんでしょう。

日本っぽいですね。新しもの好きというかなんというか。

でもやはり効果があるし慣れてるし、という声も多く、和漢薬や漢方薬も1967年に保険適用されるに至り、今では老年期疾患、婦人科疾患、小児疾患や生活習慣病等あらゆる医科で漢方・和漢薬が使われるようになっていて、その薬効が認められています。

漢方は統計の医学なので、長い歴史の中で多くの人が使ってきた事で、いわゆる副作用がでる可能性がある事も解っていましたが、詳しい機序までは不明でした。ですが近年の西洋医学との併用で、その副作用の発生機序も解明されつつあります。

明治の排斥では「そのへんの葉っぱに薬効なんかあるわけない」とされたものに、実は効果も副作用もあり、それがやっと近年になって実証・機序解明されてきている。

例をあげると、『甘草』という漢方薬原料があります。甘草そのものもそのまま薬として使いますが、色々な漢方薬に成分としても入っています。この甘草を使いすぎると、実は浮腫や脱力や不整脈などがが起きる事があります(偽性アルドステロン症)。また、麻黄は連続使用すると間質性肺炎を起こすと言いう副作用があります(エフェドラが免疫系に作用し肺胞の炎症を誘発する、これが慢性化すると間質性肺炎を起こす)。

漢方医学では、科学的な観点からはっきりと何故なのかはわからないけど、統計学的にそうなる事が多いと、何百年も前から分かっていました。それが近年、西洋医学方面での解明も進み裏付けがなされてきているんです。

他には漢方・和漢薬では副作用に 脱力、間質性肺炎、ぜんそく、子宮収縮作用などなど結構しゃれにならないものもあります。妊婦さんに外的要因で子宮収縮作用を促したら流産につながるんです。その辺の葉っぱを煮詰めたものと甘く見てると、身体にこんな危険な事が起きるんです。

こうして、漢方や和漢で言われてきた副作用が、西洋医学で科学的に裏付けされてきているのです。何千年の歴史の中で、ここ五十年ほどで、やっと、です。


アロマを安全に使うために

さて、アロマテラピーと精油。

効能がある。そして副作用はある、禁忌とすべき場合があるとずっと言われてきました。ただし現在のところ、かつての漢方や和漢と同じく科学的な作用機序ははっきりしないものも多い。しかし、経験則で統計学的に副作用が多く出てきたのでアロマテラピストの皆さんは安全な施術の為にしっかりと禁忌を学んでいます。先に述べたカンファーがてんかん発作を起こすという事については、500年前から認識されています。他にも、特にアロマで問題になるのは光感作性(使用しながら、あるいは使用後にそのまま日光に当たると炎症を起こす)、子宮収縮作用(最悪の場合は流産にもつながる)、神経系作用(神経系発作の誘発や意識障害による事故につながる)というものがあります。また、ほぼすべての精油はアレルゲンとなる場合がある(現在のEUではREACH規則によりほぼすべての精油がアレルゲンとして表示義務を負うことになっています)。そして現在は研究が進み、徐々にそれらが実証されてきているのです。

つまり、良い匂いだからって何でも炊きゃあいいってもんじゃないんです。

アロマの効果を認めるならばこそ、その副作用が存在するという事実にも目を向け、受け止めるべきです。その科学的機序は効能同様に解明されていないにしても、経験則からアロマテラピーの教本に記載があります。そしてすでに長い時間を経ての統計学的裏付けがあるのは、かつての漢方、和漢と同じです。

そしてアロマの精油の成分は、合成洗剤や柔軟剤、香料と重複するものもある。

「いい匂いだから、この匂いをさせていれば気分がいいに違いない」
香害に通じるものがある、非常に怖い思い込みです。



アロマの使用禁忌


ではこれら香料、精油にどんな副作用があるのか?

IFRAスタンダードやEUのレポートで徐々に科学的にも明らかになってきています。

現在アロマセラピーを行う上で禁忌とされている物をまとめます。
(※2020年当時、日本で調べられた範囲のものです。この後、研究も実証もさらに進み、EUでは2023年にREACH規則も導入されています。よって、ますます増えている可能性が高いです。)

では、使用禁忌を項目別に一つずつ見ていきましょう。


高血圧の人への使用禁忌

タイム セージ ペパーミント ユーカリプタス ローズマリー


低血圧の人への使用禁忌

ローマンカモミール ラベンダー マジョラム イランイラン


妊婦さんへの使用禁忌

クラリセージ スペアミント マジョラム サイプレス ジュニパー スウィートフェンネル バジル パセリ ジャスミン ローズ ローズマリー シダーウッド ミルラ(没薬) ペパーミント レモングラス セージ アンジェリカ アニス ヒソップ ペニーロイヤルミント タイム ローレル ヤロウ


妊娠初期に使用禁忌

オレンジ ジャーマンカモミール サンダルウッド パイン ブラックペッパー レモングラス ほか多数(妊娠初期にはアロマは基本的に使用禁忌)


授乳中に使用禁忌

クローブ シダーウッド セージ ヒソップ フェンネル ペパーミント メリッサ ヤロウ ローズマリー


生理中に使用禁忌

クラリセージ シナモン クローブ フェンネル マジョラム ミルラ(没薬)

 ※特に生理が重い人の場合、上記に加えて

ジュニパー バジル ローズマリー セージ

も、生理中でなくても避けた方が良いとされているようです。
また、妊娠中に使用禁忌(妊娠初期含む)となっているものは全て、子宮収縮作用を持つとされるので、生理痛を増幅する恐れがあります。


皮膚刺激性のあるもの(敏感肌、アレルギーや乳幼児に禁忌或いは慎重使用のもの)

柑橘系 タイム シナモン バジル レモングラス レモンバーベナ フェンネル スペアミント ペパーミント クローブ ローズマリー カシア オリガナム パイン レモンバーム ティートゥリー シベリアモミ パセリ カルダモン キャラウェイ シダーウッド ジンジャー パーチ


皮膚炎症時に使用禁忌

シトロネラ アニス ジャスミン ジンジャー イランイラン ベンゾイン(安息香) ゼラニウム パイン ローレル


光感作性があるもの(使用中あるいは使用後に日光に当たってはいけないもの。目安として12時間)

ベルガモット スィートオレンジ レモン ライム マンダリン グレープフルーツ タンジェリン タイム レモンバーベナ フェンネル プチグレン キャロットシード セージ ヤロウ クミン アンジェリカ


使用中・使用後に車の運転を避けるべきもの

クラリセージ ベンゾイン(安息香) ネロリ ジャスミン


ぜんそくに禁忌

カンファー ユーカリプタス・ラジアータ フェンネル ジュニパー 
レモングラス マジョラム ナツメグ オレガノ ペパーミント
ペニーロイヤル セージ セイボリー タイム など
※副交感神経を優位にする作用を持つもの、つまりリラックス効果を謳われているものは、同時に気道を狭める効果も持つ


肝臓・腎臓疾患に禁忌

ジュニパー ブラックペッパー


心疾患に禁忌

ペパーミント


前立腺肥大に禁忌

メリッサ


緑内障に禁忌

メリッサ


てんかんに禁忌

フェンネル ヒソップ ローズマリー セージ シダーウッド カンファー(樟脳) ワームウッド テレビン ユーカリプタス


特に粘膜刺激性が強いもの

パイン レモン タイム キャラウェイ


発熱時に使用禁忌

ヒソップ ヤロウ ローズマリー


長期連用禁止

クローブ アニス ユーカリプタス オレンジ レモン ジュニパー ナツメグ ブラックペッパー マートル ヤロウ 


低濃度で使用すべきもの

イランイラン バニラ カンファー(樟脳) クラリセージ アンジェリカ シナモン スパイクラベンダー パセリ パチュリー フェンネル


10mlの経口摂取で重篤な障害を起こすもの

セージ アニス タイム レモン フェンネル クローブ シナモン カシア カンファー(樟脳) シダーウッド ユーカリプタス ウィンターグリーン ペニーロイヤルミント ヒソップ


※上記に「皮膚刺激性のあるもの」という項目でアレルギーのある人に禁忌となっていますが、当然このほかにも個人によりアレルギー反応を起こす場合があります。あくまでも上記の物はアレルギーを起こす確率が高いというだけで、他の全ての精油でアレルギーを起こす可能性は存在します。重複しますがEUのREACH規則ですでにほぼすべての精油にアレルゲン表示が義務化されているのはこのためです。

たとえば花粉症や卵アレルギーはとても多いです。けれど他のものでアレルギーを起こさないわけではなく、小麦、サバ、米、バラ科植物、蕎麦のアレルギーもいます。

このようにアレルギーは人それぞれで、一概に「これを気を付けてれば大丈夫」ということは言えないのです。食物だけじゃなく身に着けて使うもの、吸入するものも同様です。

にもかかわらず、今は公共の役所等やあろうことか病院で簡単にウェルカムアロマを炊いていたりします。

空気は誰もが呼吸するものであり、アロマのように燻蒸してしまうと、食べ物や衣類、塗布して使うものと違い、避けることができなくなる。


特に考えてほしい、一番に考えてしかるべきはずの病院。

「ラベンダーや柑橘系なら大丈夫だろう」

「食べモノや花の香りの成分だし、お茶にして飲むぐらいだし」

と思っているかどうかは知りませんが、自分の周囲の病院でのラベンダー・柑橘系アロマ使用率が半端ないです。眼科、皮膚科、産婦人科、総合病院などなど。

ではここで逆引きしてみましょうかラベンダーと柑橘系精油の禁忌。

ラベンダーを禁忌とする疾患や状態

低血圧 高血圧 妊娠初期 不眠

ここで疑問。ラベンダーは不眠を緩和する効果があると、多くのHPやアロマテキストなどでも紹介されてます。リラックス効果があるからでしょう。けれど使用時間と濃度によって、逆に交感神経が興奮状態になり、目を覚ましてしまうという論文もあります。(アロマ関連雑誌Aromatopia,2015年)

柑橘系精油を禁忌とする疾患や状態

長期連用禁止 粘膜刺激性 皮膚刺激性 光感作性 妊娠初期

妊娠初期にダメだという事は、生理中の女性や生殖器系の疾患を持つ女性の方にもよくないという事ですね。また粘膜刺激性があるという事は、目、華鼻、喉の粘膜に刺激となる。これを考えると、フィッティングテストなしで使えるわけがないんです。



ですってよ先生方に看護師さん方?

眼科なら内科疾患と関係ないから大丈夫?

では眼科には低血圧の人は絶対にも来ませんか?妊娠初期の人も?絶対?そんなわけないです。

皮膚科なら大丈夫?妊娠初期の人なんか来ない?そんなわけはないですよね。


例えば眼科。

柑橘類じゃなくたって、そしてアロマに限らず香料には粘膜刺激性(目や鼻なんか特に)ありますよ。さらに目の炎症なんかが起きてる人がそれを治してもらいに眼科に来るんじゃないでしょうか?そこで刺激性のある揮発物を燻蒸って。

柔軟剤のマイクロカプセルなんかそのまま微粒子です。PM2.5以下の刺激性を持った微粒子です。

白内障などの目のオペをした患者さんにゴーグルつけさせるのは何の為でしょうか?眼球に微粒子が入らないよう保護しているんじゃなかったですっけ?そんな状態の人がいる眼科の病院の空間に微粒子充満させてどうしますか?


眼科だけじゃない。歯医者も婦人科も他の科も、様々な疾患や体質の人が訪れる。総合病院なんかは状態的にあらゆる疾患の人が集まる。

そしてそれは病院に限った事ではない。社会のあらゆる場に、あらゆる疾患や状態や背景を持った人がいます。

さらにアロマにとどまらず、洗剤柔軟剤、デオドラント製品、パーソナルケア製品に使われる香料。

一定の濃度を越えなければ大丈夫?

免疫学の考え方で言えば、ほぼ量なんか関係なく反応する。それが『感作性がある』ってことです。

薄めて使ってるからって大丈夫じゃないんです。感作を起こす症状を持ってる人にはそれでも大なり小なりの症状が出る。そしてまだ発症してない人にも発症のリスクをあげ続ける事になる。

大丈夫じゃないから、あらゆる理由で香害にここまで異を唱える人が増えてるんです。

ただ臭いから、嫌いだからだけの話じゃない。

化学物質過敏症にかかった人には拷問です。実際に体に症状が出ます。

そして化学物質過敏症だけじゃない。

妊婦さんに子宮収縮を起こしたり、
心臓病のひとの心臓の動きを左右したり、
頭痛を誘発したり、
血圧を上げたり下げたり、
てんかんの発作を誘発したり、
緑内障や前立腺疾患を悪化させたり、
神経系に作用して運転に支障を来して自身や他人の命を危険にさらす可能性すらもある。


自分の体が大丈夫だから、自分の鼻には感じないからと、問題を考えることを放棄しないでほしい。

その行為と姿勢は、今や忌み嫌われて蔑まれてさえいる、歩きタバコと一緒です。自分は吸ってて旨いと感じるから、副流煙が他人にどんな影響を与えるか考えないのと同じことです。

しかも今の香料の使用の状況は、あらゆる場所で人の迷惑も省みずタバコふかし放題、道に吸い殻棄て放題だった昭和の頃の喫煙者レベルです。

今では考えられないことですが、駅のホームの柱の全部に灰皿ついてて吸い放題、当然ホームはモックモクでした。さらに線路やホームの地べたに吸い殻が棄て放題で30㎝四方に一二個は確実に落ちてた。(神奈川県の私鉄ホームの話です)

学校でも。職員室はもとより、廊下で歩きタバコする教師とか普通にいました。

それを誰も悪いことと思っていない。そのせいで呼吸器を患った子供や非喫煙者がどれ程いるんでしょう。

でも、喫煙してる人たちは悪いなんてこれっぽっちも思ってなかった。

「ウマイからいいだろう」
「なんかタバコ吸ってると大人っぽくてかっこいいし」
「皆気にしてないし」
「皆やってるからいいだろう。」

それと同じ状態で、あまりにも無造作にアロマとか、香害の原因になる製品が、非常に多くの場面で多くの人に、急に使われるようになってしまっている。


もう少し考えて欲しいものです。
特に医療看護介護に携わる人は。
昭和の最悪な喫煙環境と同じことをしていていいはずはない。元々医療の場では強い香料はそれこそ禁忌だった。それもほんの数年前まで。


ただ、タバコならまだ避けようがあった。

今の香害のように、こんなに老若男女があらゆる場所でのべつまくなし、なんてことはタバコには無かったし、今の香料ほど一瞬でしつこく染み付くなんてことはなかったし、病院の病室がタバコ臭いなんて事態はほぼ皆無だった。


それが今は。


本当にこれでいいのか、考えてほしいです。




アロマの有効利用


さて、ここまでアロマの禁忌や危険性を羅列しましたが、決してアロマを頭ごなしに否定しているわけではありません。自分はアロマセラピーに対してむしろ一定の効果を得られるものだと信頼を寄せています。


例えばメンタ湿布というものがあります。

今でも医療や介護の場で腹部膨満やイレウス傾向の人に対して使用されます。あれはハッカの精油をお湯に垂らして絞った温タオルを作り、それをお腹に当てるもので、かなり効き目があります。メントールが持つ冷感作用(本当に身体を冷やすわけではない)と、タオルの温熱作用が腸の蠕動を促すと言われています。臨床ですごく見ましたが、パンパンだったお腹が本当にすっきりするんです。便秘の解消になったと喜ぶ方も多かった。医師から指示されて施行することも多かったです。

ハッカ油と言えば他にも、お湯に垂らして部屋に置いておくだけで鼻詰まりが解消したりもしますね。

ただ、ハッカやミントには、心疾患には慎重使用あるいは禁忌という面もあるので、注意も必要です。

それらの注意を怠ることなく正しく使えば、アロマには非常に効果があり、医療の場でも古くから使われています。

効果がある、だからこそ裏を返せば副作用、そして禁忌が必ずある。薬と同じです。

それを理解し、気を付けて、有効に使用してほしいのです。
ただその辺に置いといて、ニオイをごまかすために使うというのは、アロマ本来の使い方では断じてないはずです。



2021年1月 初出
2024年5月 加筆修正




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?