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金魚救い ②

 野菜炒めを作る用に買った食材を冷蔵庫から取り出し、調理に取り掛かる。料理をするときの時間は、考え事が多い私にとっては、料理だけに集中できるので軽いリフレッシュのような時間になっている。

 フライパンに具材を入れていき、小気味良く振り味付けをしていく。出来上がった野菜炒めを皿に盛り付け、居間のローテーブルまで運び、写真を撮る。 

 同級生は映えを求めて、おしゃれなレストランやカフェなどで写真を撮り、SNSに写真をあげているが、自分で作った特に映えもしない野菜炒めをSNSに投稿するはずもなく、写真を撮った主な目的は実家の両親に送る為である。 

 東京に進学することを許してくれ、尚且つ援助してくれている両親には感謝してもしきれない。本格的に東京に向かう日も、母は娘と離れるのが寂しいからか、大粒の涙を流していた。

 父は「今生の別れでもあるまいし。」と気丈に振舞っていたが、母が後から帰りの車の中で父も一緒に泣いていたということを教えてくれた。

 だから心配をかけないように、せめて1日1回は今日何をしたか、何を食べたかというような写真に1文を添えて送るようにしている。恩返しといえる大層なものではないが、ここまで育ててくれた両親への今できる最低限の感謝と捉えていた。

 「もやしがスーパーで多かったから、もやしいっぱいで野菜炒めを作ったよ~!!」という一文を添え写真を送る。すると、すぐに既読2の文字が送ったメッセージと写真の下に浮かび上がった。

 母からは「節約魂!!ダイエット中って聞いてるけど、ちゃんとご飯も食べなきゃダメよ!!」という返信と、父からはよだれを垂らしてご飯を待っているゴールデンレトリバーのスタンプが送られてきた。 

 母はいわずもがなだが、父も口下手ながら私のことを愛してくれているのを常日頃から感じている。野菜炒めと共に両親の愛も口に運びながら、食べ進めた。

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