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韓国ウェブドラマ市場のフロンティア、A-TEENの成功秘訣

近年、世界中でショートフォーム形式のコンテンツが爆発的な人気を集めている。

特に10代に絶大な支持を受けた韓国のウェブドラマ「A-TEEN」は、その代表格と言えるだろう。累積再生回数が4億回を突破し、韓国ウェブドラマ史上最高のヒット作となったこの作品は、Z世代へ大きな影響を与えた

2018年「A-TEEN」シーズン1がYouTubeに初めて公開されたが、筆者にとっても学生時代を共にした意味のあるドラマだ。

このNoteでは、主にウェブドラマA-TEENと制作社Playlistの成功話について個人の考察を含め語る。



概要


A-TEEN Season1 のポスター


Season 1は2018年7月1日から放送され、Season 2は2019年4月に放送されました。ジャンルは学園系の青春ドラマ。主に10代をターゲットにした青少年ドラマで、高校生の日常と愛、友情、そして成長の物語を描いた。
クールで活発な「ド・ハナ」と大人しくて落ち着いた「キム・ハナ」という二人の主人公を中心に展開され、彼ら各自の悩みと葛藤を経て成長していくストーリー。

A-TEENの成功の秘訣は?


では、A-TEENは当時なぜこんなに人気だったのだろうか?
今考えてみると、当時韓国の中高校生たちをよく狙ったドラマだったと思われる。

仮説1. 忙しい学生のためのウェブドラマ


韓国は日本と同じく学歴社会であり、生徒たちは基本的に命がけで入試をすると言っても過言ではない。韓国高校生の日課が終わる時間はほとんど10時である。学校の7~8限が終わってすぐ学校で夜間自習をしたり、放課後すぐ塾に行って10時まで授業を受けなければならなかった。
(当時法律上、私教育は10時まで可能だった)

そのため、夕方にテレビで放送される人気ドラマを見るためには、学校や塾が終わって家へ全力で駆けつけなければならなかった。たまにドラマを見るために塾をサボるという人も多数いた。

そのため、このようなYoutubeでも学生たちが気軽に楽しめるコンテンツが出たのは流行りになれ得ざるを得なかった。10分程度の短いウェブドラマは、スマホで学校の登下校時間、塾の休み時間など合間の時間に見るにはぴったりだった。1時間を超える通常のドラマを見るには忙しい受験生にとって恵みの雨のような役割を果たしたのだ。

仮説2. 学生たちが共感できるリアリズムストーリーと口コミ


韓国の学生たちが実際に経験することや本当にありそうな話をエピソードでうまく表現した。

学生たちが実際に使う流行語と歯切れの良い悪口
今見てもダサくない制服ファッション
現実的な高校生たちの入試話
あるあるの恋愛話と嫉妬
家庭環境と親との関係話まで、、

筆者にとっても見ながら共感できる部分が多かった。

さらに、学生は学校という狭い空間で毎日共同生活をするため、個人に一度評価されたコンテンツは、口コミで周囲の友人にも広く知られやすい。


A-TEENはどのようなシンドロームを引き起こしたか?


A-TEENが全国に広めた感染症

 A-TEENの放映後、韓国の中高生の間である変な感染症が流行り始めた。

その名は、「ド・ハナ病」。
A-TEENのヒロインであるド·ハナを真似する病気だ。

「ド・ハナ病」の症状は以下の通りである。

  • ボブハーフアップヘア

  • チグハグな靴下


ド・ハナのボブハーフアップヘア

「ド・ハナ病」で、いきなりロングからボブになる女子が増えてきた。

ド・ハナのチグハグな靴下

通常、靴下をちぐはぐに履いてくると恥ずかしく感じる人が多いですが、当時はド・ハナみたいにわざとちぐはぐな靴下を学校に履いてくるのが流行った。
(それがおしゃれだと思っていた)

これを皮切りに学生たちがドラマの中のヒロインを真似する文化が形成された。


IP商品まで大人気

A-TEENの公式グッズ

IPグッズも物凄く売れた。
劇中の女優たちが塗るリップ、ハガキ、ステッカー、スタディプランナーなど。
当時プレイリストの自社モールで販売していた。

劇中ド・ハナがリップを塗っているシーン

特にリップの場合、(ケースの変動もなくただ包装紙だけ変えただけなのに)完売された。MOART というブランドの「ベルベットリップスティック」という商品だ。


芸能人輩出へ成功

「彼はサイコメトラー」のポスター

ヒロインのド・ハナ役を演じたシン・イェウンは、当時JYPエンターテインメント所属の練習生だったが、「A-TEEN」出演をきっかけにJYPと正式な俳優として専属契約を結ぶことになり、「A-TEEN」終了後すぐに「彼はサイコメトラー」の主演をはじめ、絶え間ない広告提案で10社のブランドのCFモデルに抜擢され、最近は大ヒットしたNetflixのオリジナルシリーズ、ドラマ「ザ・グローリー」にまで顔を出して人気を集めている。


OSTまで大バズり

有名アイドルSEVENTEENの曲

韓国アイドルグループ「SEVENTEEN」は2018年8月13日、ウェブドラマ「A-TEEN」のOST「A-TEEN」を発売した。

この曲は発売直後から評価され、その翌日、なんと韓国国内最大音源サイト「メロン」のリアルタイムチャート1位に上がった。 特別なプロモーションなしで成し遂げた結果という点で大きな意味があるだろう。

A-TEENはただのドラマを越えて化粧品、音楽界まで大きな影響を及ぼしたわけだ。


A-TEENは誰が作ったのか?


スタートアップ、「プレイリスト」


A-TEENはデジタルコンテンツ制作のスタートアップ、「プレイリスト」により作られた。当時はたった設立3年目のスタートアップだった。NAVERの子会社であるSnowとNaver Webtoonが共同出資して設立された。元々は大学生のキャンパスライフを描いた「恋愛プレイリスト」というウェブドラマのシリーズが次々と制作されてきた。その後、20代だけでなく、10代を本格的にターゲットにすることして誕生したのがまさにA-TEENだ。そのため、メインプラットフォームも年齢層が高いFacebookからYouTubeに自然に変更した。
A-TEEN公開直前までは登録者数80万人程度だったプレイリストYoutubeチャンネルは、現在(2024年6月)230万人を突破した。


プレイリストのユニークなコマース戦略

2019年 A-TEEN Season2 の終了後、その翌年にウェブドラマ「エックスエックス(XX)」を企画した。

ウェブドラマ エックスエックス(XX)

エックスエックス(XX)は、調香師の男性主人公とバーテンダーの女性主人公が登場する恋愛ドラマだ。

プレイリストは2020年1月、「エックスエックス(XX)」作品の終了と同時に香水ブランド「Nearest but Lost」を発売した。このブランドは、劇中の男主人公が作ったブランドである。作品「エックスエックス(XX)」のストーリーを構想しながら新規コマース商品まで直接企画したのだ。

劇中登場する香水ブランド:Nearest but Lost

実際、この商品はOliveyoung(韓国のNo.1 ビューティードラッグストア)の「2020新商品Top5」部門で1位に選ばれたこともあるほど人気だった。

このようにコンテンツ製作過程でマーケティングチームとビジネスチームなどの非製作チームも作品の初期企画段階から参加し、ストーリーまたはキャラクターを具体化する過程に介入するという点が非常に印象的だ。

 

より没頭させる大きい世界観

永続的な世界観、プリバス(Playlist+Universe)

さらに、プレイリストの作品は全て一つの世界観につながる。例えば、劇中の主人公たちが通う「ソヨン高校」があり、卒業後「ソヨン大学」に進学し、そこでまた新しい物語が展開される。 

マーベル映画のように彼らだけの永続的な世界観を持っており、MZ世代の過没入を引き起こす。あるドラマで助演だったはずのキャラクターが、他のドラマでは主演として登場するということだ。

そのため、一つのシリーズが成功すれば、他のシリーズも一緒に人気を得る可能性が高い。個別の作品だけではなく、プレイリストという会社に向けた大規模なファンダムができた背景である。

「アジアのディズニーを作りたい。」
-プレイリスト 代表、パク·テウォン-


ますます短くなるコンテンツ

このように韓国では「A-TEEN」をはじめに、5~10分以内のウェブドラマは非主流から主流のコンテンツになりました。これとともに、「スナックカルチャー(Snack Culture)」という言葉が注目され始めたが、スナックカルチャーとは、まるでお菓子を食べるように短時間でコンテンツを消費するライフスタイルを意味する。ウェブドラマは10分という短時間に核心的な内容だけで喜怒哀楽がすべてうまく展開され、没入感とスピード感がすごい。本当にお菓子を食べるように気軽に消費し満足できる。

しかし今は1~3分前後のより短いショートドラマが登場し始めた。
(もうお菓子を食べきるには少し足りない時間ではないか)


例) https://www.reelshort.com
中国のスタートアップが運営する有名ショートドラマプラットフォーム。
2分程度の作品が多い。


ウェブドラマは主に横型のスタイルに、Youtubeの収益モデルにより8~10分以上の映像で製作されてきた。しかし、今はShortsとReels、TikTokなどを中心に該当モバイルプラットフォームに最適化された1~3分程度の超短めの長さと縦形式のスタイルが流行っている。

ショートドラマ市場はますます大きくなり、参入するプレイヤーも増えている。ここで生き残るためには、誰よりも「Shorter but better」のコンテンツを提供するのが勝ち筋になるかもしれない。

消費者の立場からも、今後もこのようなショートフォーム形式のコンテンツは、消費スタイルを大きく変えると思われる。


以上。


最後まで読んでいただきありがとうございます。
初Noteだったということでまだまだ未熟な点がありますが、少しでも皆様へインサイトを提供できたら幸いです。
これからも宜しくお願い致します。

キム ユンソ


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