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A Quiet Eveningインタビュー

十一月中旬、メールでのやり取りにて

- まずはメンバーの自己紹介からお願いします。

ボーカルのフクシマです。メンバーは
vocal&guitar:Fukushima Tomohiro
Guitar:Kurimori Kouhei
Bass:Sashinami Kouhei
Drums:Tsuboya Akiyuki

- 結成のきっかけと現在に至るまでの経緯を教えてください。

(フクシマ)帯広畜産大学の軽音楽サークルで結成しました。僕が後輩、ドラムのツボヤが2つ上の先輩です。最初、ツボヤさんは別のオリジナルバンドを組んでいて、そのバンドがすごく好きだったんですが卒業のタイミングで解散して、ツボヤさんだけ大学院に進学するということだったので僕が口説いて組みました。僕にとってはこれが初めて組んだオリジナルバンドです。最初はベースが見つからずギターボーカルとドラムの2ピースで2012年にライブ活動をスタートしました。2013年にベースのサシナミが加入。2016年にギターのクリモリが加入しました。現在4人体制です。

- よければ各々のメンバーの音楽遍歴、影響を受けたアーティストを教えてください。

ボーカル:フクシマ
岐阜県下呂市出身で、大学進学で北海道にきました。僕は中学の頃にまずケツメイシにハマって、そこからラジオが好きになって、FMでレギュラー番組を持っていたASIAN KUNG-FU GENERATIONがきっかけでロックバンドを意識し始めました。ストレイテナー、ELLEGARDEN等を聞き、oasisやRADIO HEADなどUKのロックバンドからcopeland、mae、death cab for cutieなど歌モノのエモ、インディーロックにハマって行きました。

ギター:クリモリ
中学1年生でBUMP OF CHICKENがきっかけでバンドに目覚めました。ELLEGARDENなどのJ-ROCKにハマり、高校でTHE BACK HORN、THEE MICHELLE GUN ELEPHANTを聞き、レッチリをきっかけに洋楽を聞くように。大学に入ってスクリーモにハマり、THE USED、Attack Attack!、後半でエモのYou Blew It! 、american football、ICE GRIL関係のバンドTRANSIT、Such Goldなどにハマっていきました。

ベース:サシナミ
中学2年でBUMP OF CHIKENを聞き音楽歴スタート。高校で銀杏・ゴイステ・ハイスタあたりのパンクなどにハマりバンドサウンドを意識し始める。札幌の大学で軽音サークルに入りベースを開始。最初はTHE BACK HORN、凛として時雨、相対性理論、NUMBER GIRL、スーパーカーなどを聞いていたが、先人や先輩の影響でCOWPERS、eastern youthなどの所謂「札幌エモ」や SPIRAL CHORD、envy、AT THE DRIVE INなどに傾倒。社会人で上記の音楽周辺を掘り、bed、birth、CRYPT CITYなどのライブ・音源に感銘を受けながら所謂オルタナエモ・(90’s)ポストハードコアなどに傾倒。

ドラム:ツボヤ
他にDIS-CHORD SOUNDSYSTEM、DIAGONALSというバンドでもドラムを担当しています。出身は新潟県です。元々エレクトーンをやっていたのですが、小学生の頃に兄にXやBOØWYを聞かされギターを始めました。中学生の頃はGOING STEADY、Hi-STANDARD等の所謂青春パンク・メロコアにハマり、Oasis,Nirvanaといった洋楽も聞き始めました。高校に入って、初めてライブハウスに行きそこで見たSTOOK STOREというバンドにかなり衝撃を受けてバンドをやりたいと思うようになり、それ以降はRufio、Belvedere等の高速メロディック、NOFX、NO USE FOR A NAME、Strung Out等のFAT系やTHE GET UP KIDS、Jimmy Eat World辺りを中心にaudioleafやMy Spaceで好みのものを探していました。大学で軽音楽サークルに入り、同学年にドラムができる人がいないということでドラムを始めました。その頃は90'sエモ、ポップパンクやハードコア、あとTHA BLUE HERBもよく聞いていました。自身としてはNUFAN、TGUK、TITLE FIGHT、fam、COUNTRY YARDからは影響を受けたと思っています。最近は乃木坂をはじめとする坂道にハマっています。

- 結成にあたって影響を受けたアーティスト、参考にしたバンドやアーティストがいれば教えてください。

(フクシマ)The Get Up Kids、famからの影響はとても大きいです。もともとツボヤとFOO FIGHTERSのコピーバンドをやっていて、そのスタジオの帰りにツボヤの車でfamを聞いて衝撃を受けて、最初に意気投合するきっかけになったバンドです。自分も比較的声が高い方なので結成当初はかなり意識していました。The Get Up Kidsは存在感も曲も大好きです。個人的には結成した時期にOCEANLANE、ASPARAGUS、Copeland、maeをよく聞いていたのでそのあたりの影響も強いと思います。

- 曲作りについてはどのようにされていますか?

(フクシマ)基本は僕とツボヤがメインで作曲をしています。今回のアルバムだと"fall"、"birds"がツボヤ作曲、それ以外がフクシマ作曲です。僕が作る場合は、弾き語りの状態まで作ってスタジオに持って行って、そこでセッションしながらメンバーにバックの演奏を作ってもらいます。"pass"は僕の作った曲をクリモリが編曲して、コードの雰囲気なども変えてアレンジを持って来てくれました。ツボヤは大体の楽器が演奏できるので、ほぼ全ての演奏が出来上がったデモ音源で持って来ます。そこに各々の解釈でアレンジしていく感じです。作詞については、これまでは作曲した人間が書いて来たのですが、今回のアルバムでは全て僕の方で作詞しました。他人の作る曲に歌詞を付けるのは初めてでした。出来上がった詩を送ると、ツボヤが作曲の段階で思い描いていたものやイメージが重なったりした部分もあったみたいで、そういう感覚が共鳴した部分が面白かったです。あくまでメインボーカルは自分なので、自分で書いた詩の方が気持ちも入るし、このスタイルに挑戦してみてよかったと思います。

- 今回のアルバムについて曲ごとに込めた想い、解説などあれば。

(フクシマ)アルバムタイトルが「心の真ん中」という意味なのですが、今回初めて日本語を書くことにした経緯が大きいです。なるべく自分の中にある感情と言葉で書きたいと思っていました。借りて来た言葉や、思っていないことを歌ってもしょうがないし、なるべく英語に頼らず歌詞だけを読んでもグッとくるようなものにしたいと思っていて。そうなると以前よりも自分の内側と向き合ってく作業になっていって、心の一番真ん中にあるものを表現したい、そして誰かの心の真ん中に届いて欲しいという気持ちを込めてタイトルにしました。

「fade」
僕が中学を卒業するまで過ごした岐阜県下呂市の風景や中学時代の思い出を一部書いています。音楽と出会ったあの頃の自分と今の自分。変わったものと変わらないもの。そして今思うこと。そんなテーマで書いています。

「pass」
ひとことで言うと「無常観」をテーマにした曲です。なんとなく日々は過ぎていくけれど、目の前の景色や自分の置かれている環境が刻一刻と変わっていくのを感じて。そんな中で大事なもの、素晴らしい瞬間をしっかり刻み込みたい。そんな曲です。

「birds」
地方で音楽やっていると学校を卒業したタイミングでこの土地から離れて行ってしまう人が多いです。僕は大学を卒業してもこの場所で暮らして音楽を続ける選択をしましたが、その岐路で離れてしまった人。友人、家族、先輩後輩。そう言う人たちへ向けて書きました。

「light a candle」
札幌でTAGNUTSというバンドをやっているクリオカさんが主催する「クリオカ ワァクス」というクリスマスソング縛りのコンピレーションに参加する際に書き下ろした曲です。この時期に仕事で御年寄の方から第二次世界大戦中の話を聞く機会があって、平和への願いを込めた僕らなりの反戦歌です。

「dreaming」
北海道の地方都市でバンド活動を続けていると、中学生の頃に夢見た、音楽だけで生計を立てているロックバンドとはかけ離れてしまったな、とたまに思うことがあって。好きなことを続けるのは案外大変なこともありますが、あの頃の気持ちを忘れずに、いつまでも夢や希望を持っていたいという気持ちで書いた曲です。すごく辛い言葉も書いていますが、「現実からも夢からも目を背けたくない」という気持ちも入っています。

「fall」
ツボヤが持って来たデモ音源を聴いたときに秋~冬の曲にしたいと思って書きました。北海道の長く冷たい冬とそこに自分の中の悲しみを重ねています。

「close your eyes」
結成して1年目の頃からあった、今回のアルバムの中で一番古い曲です。どこかで読んだ「人間が想像できることは、全て現実にすることができる」という言葉をテーマに歌詞を書きました。当初はこの曲をアルバムに入れるか悩んでいたのですが、1stアルバムをリリースする自分の心境とすごく重なったので、今は収録できてよかったと思っています。

「carve」
漠然とアルバムの最後は明るい曲でポジティブなメッセージで締めたいと思っていました。音楽活動をする中でたくさんの人と出会いますが、今回のリリースの流れも含めて、そういう繋がりの中で音楽を続けられていることが我ながら素晴らしいなと。で、これから出会った人とまた笑顔で再会することが大きな目標だなと思って。そのためには続けている必要があるし、大事な一瞬一瞬や出会いを刻み込んで、これからの自分たちの道標にしたい。そんな思いを込めました。

- ありがとうございます。では次に、社会人バンドとしてバンドの運営に際して意識している、気を付けていることなどあれば教えてください。

(フクシマ)生活や仕事があって、初めての音楽活動なので、なるべくメンバーに負担をかけ過ぎないこと。プライベートと音楽活動のバランスはすごく意識しています。かと言って守りに入って縮こまりたくはないので、可能な限り遠征はするし、ライブもレコーディングもしたいと思っています。やっぱり問題になるのは「時間」と「お金」だと思います。音楽だけで生活することは目標にしていませんが、バンドの知名度や集客が伸びれば金銭的な負担は減らせるので、そういう意味で、「自分たちのやりたいことができる」レベルまで有名になりたいです。最初は宣伝や集客ばかり上手なアーティストに嫌悪感もありましたが、メンバーの金銭的な負担を減らためにもリリースや宣伝、集客力は必須になるし、今回初めてMVも作りましたが、こういう宣伝になるものはゆくゆくは自分に帰ってくるものが多そうなので、その辺りの考え方は変わって来ています。あくまでバンドの実力を磨きつつ、そういう周辺の力も付けていきたいと考えています。それが地元の音楽シーンへの貢献にも繋がるのが一番の目標ですね。

- なるほど。ところで参考までに帯広近辺のバンドシーンについて、シーンの動向や変化も含めて教えていただけますか?

(フクシマ)帯広で住み始めたこの10年のことしかわかりませんが、REAL SHOCKS MATTERが精力的に活動を始めたことでインディーズシーンが盛り上がっていきました。普段活動しているライブハウスstudio RESTではI HATE SMOKEからリリースしているtoiletやミゴトナヨル、Hikage、DIS-CHORD SOUNDSYSTEMといったバンドが活動しています。ジャンルはバラバラです。シーンいうよりも、自分のやりたいことに信念のある人が続けているという感じです。いい意味で何かに媚びたようなタイプのバンドは少ないと感じます。

- 道内道外、メジャーインディー問わず、最近注目しているバンドやアーティストがいれば教えて下さい。

(フクシマ)日本国内で最近気になっているアーティストはCharlotte is Mine、小袋成彬、Os Ossosの三組です。特に最近出た小袋さんの新しいアルバムである「Piercing」はめちゃくちゃ聴いてます。OsOssosは改名する前Sentimental boysの頃からすごく好きで、新しいアルバムを心待ちにしています。最近出たシングルもとてもよかったです。いつか北海道に来てほしい。Charlotte is mineは最近知って、日本版デスキャブって感じがして、自分の好みど真ん中のアーティストでした。こちらも2ndアルバム楽しみです。あと、海外のアーティストで最近良く聴いているのはKatz、Japanese Brakefast、Passion Pit辺りですね。家にいる時はエレクロな音楽やスロウでコアなものを掛けるのですが、Japanies Brakefastは確かアップルミュージックのオススメで出できて、名前のインパクトもはすごいですが、電子音と生楽器のバランスが個人的に好きな感じで気に入ってます。Katzは友人に教えてもらったバンドです。多分まだ音源も1枚しかないんですが、広がりがありつつ、繊細な音像が堪らないです。ライブ見てみたい。Passion Pitはポップなエレクロを聴きたい時に良くかけてます。最近は料理を作るのが好きで、そのバックミュージックにしたりしてます。生活の中で自然と豊かな気持ちになれるのでとても好きです。

- 今後の展望、予定などあれば。

(フクシマ)できれば早めに次の音源をリリースしたいです。今回収録している曲は2017年までに作ったものが多いので、今影響を受けている音楽も変化して、自分の中のモードも少し変わってきているので、そういうものを落とし込んだ曲をできるだけ短めのスパンでリリースしたい思いはあります。あと、バンドの当初の目標として「好きなバンドを帯広に呼ぶ」というのがずっとあって。札幌から車で3時間くらいなのでビックネームなアーティスト以外はなかなか本州からはツアーでこないのですが、自分たちの好きなバンドを呼んでもイベントがしっかりと成り立つレベルの集客や知名度含め力をつけて行きたいです。全国のバンドを呼べるようになれたら理想的ですね。バンドとしての歩みは多分ゆっくりですが、このままずっと成長を続けながら活動できたら良いなと思っています。

- 最後一に一言あれば。

(フクシマ)近年は本州に行く機会も少しづつ増えてきたのでぜひライブを見て欲しいのと、十勝は食べ物も美味しく、景色も良い場所なので、ぜひ一度遊びにきて欲しいです。

- ありがとうございました。

インタビューを終えて:REEVESに引き続き、2020年メールインタビュー第二弾として北海道帯広市を拠点に活動するA Quiet Eveningのインタビューを行いました。こちらもインタビューを行ったのは昨年の暮れ、アルバム発売直後だったということでギターボーカルのフクシマ氏にはアルバム収録曲の解説もしていただいています。また、今回のアルバムが初の全国流通盤ということも去ることながら今作より初の日本語詞に挑戦ということで、今回の作品がバンドを大きく成長させ、前進し羽ばたいてゆく契機となった作品であることは間違いありません。今回のインタビューを読んでいただいても分かるように、北海道帯広市という一地方の郊外の街で最初二人からスタートしたバンドが様々な音楽的バックグラウンドを持ったメンバーが一人、また一人と加わっていったことで形作られていき、現在のような美しく壮大な楽曲を鳴らす集団へと成長していったストーリーは非常にドラマチックであり、現実や生活と向き合いながら帯広という地方都市でひたむき且つ前向きに音楽に打ち込むバンドの姿には少なからず共感を覚えていただけることと思います。そして、その生活やこれまでの人生の中で見てきた景色や滲み出る感情を通して美しくも人間味や温もりを感じさせる楽曲群に昇華させ高らかに鳴らし、聴いた者それぞれの心象風景を呼び起こし深く胸に沁み込ませてゆくこのA Quiet Eveningというバンドの持つ力を、このテキストを読み終えた後に改めて楽曲を聴き返していただいた時、改めて感じ取っていただけることでしょう。尚、来月二月には久々の来阪も決定しています。バンドが奏でる力強くも美しい楽曲とパワフルなライブをぜひ目撃しに来てください!

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