見出し画像

18thショパンコンクール イチオシコンテスタント【予備予選感想 日本人編】

初日鑑賞中です。Morning session と Evening session の間で書いています。

いやー初日って本当に緊張するものですね...…
見ているだけでもこれだけドキドキするので、コンテスタントの心中たるや、軽々しく「お察しします」なんて言えない。
今回からスタインウェイが2台になりましたね。ハンブルク製とニューヨーク製だとか。

今回は日本人コンテスタントについて。
予備予選通過者は13名、それに免除の牛田智大さんを加えて、計14名がSTAGEⅠに進出しています。
日本人については、それこそピンからキリまでありとあらゆる方が言及されているので、私なぞがインターネット上で管を巻くこともないかなぁと思ってはいたのですが。
日本人コンテスタントは総じてテクニックのレベルが高く、ちょっとやそっとでは崩れない。安定感は随一だと思います。それゆえに、安定感に「プラスアルファ」がある演奏を聞くと、嬉しくなりますね。
日本人の出場を直前に控え、予備予選時に個人的に印象に残ったコンテスタントの演奏について、振り返ってみたいと思います。

計2回(ライブ配信時と結果発表後)、聞いた上での感想です。
※STAGEⅠ出演予定順

Sohgo Sawada(沢田蒼梧さん)

曲の構成を緻密に研究して、十分に理解を深めた上で音楽に向き合っている印象。しっかりした基盤の上に表情を乗せているので、予定調和のつまらない音楽になることがなく、かといって情感に流されて湿っぽくなることもない。非常に納得感のある演奏。
音色も非常に多彩。弱音、伸びる音、華やかな音、ロマンチックな音、フォルテの激しい音。色々な表情がとても自然に表現できていて、響きがしっかり立っていた印象。バラード1番は彼に合っているように思えた。
自身のSNSで「名前を間違われる」と冗談めかして書きこんでた。かわいそうだけどかわいいw

Kyohei Sorita(反田恭平さん)

場数を踏んでいるだけあって、音も表現も華やかで非常に洗練されている。まさに演奏会のクオリティ。
緊張感のある箇所でも音の柔軟性が失われず、倍音が素晴らしい。不安定な部分がなく完成されていて、かつ聞いてて飽きない。マズルカがすごく生き生きとしていて、日本人でもこんなマズルカが弾けるんだ、と驚かずにはいられなかった。日本人からこういう演奏ができる人が出てきたこと、私は素直に嬉しい。
今回のコンクールは、腕試しであると同時に自身のオケを世界に連れ出すきっかけにしたいとのこと(公式のインタビュー動画より)。だとしたら、他のコンテスタントとは目標としているものが違う。コンクールは緊張でガチガチになるのが常だけど、彼の演奏に他の人にはない余裕が感じられたのは、自分自身だけでなく外にも意識が向いているからなのかも、と勝手なことを思ったり。

Asaki Iwai(岩井亜咲さん)

情感豊かなのにカラッとしたブライトな音なので、お腹いっぱいにならずにずっと聞いていられる。自己陶酔感がなく自然な表現、でもやりたいことはちゃんと伝わってくる。ミスも少なくて安定感もばっちり。私もこういう風に弾けるようになりたいなぁ……

Aimi Kobayashi(小林愛実さん)

さすが、の一言。以前よりも楽器の鳴りが良くなったように思う。
豊かでダイナミック、ズドンと圧力のある音。ペダルで誤魔化したり適当に弾いたりということがなく、音そのものに雑音が混じらない。真摯に自分のピアノと向き合って研鑽を積んだことが分かる。フレーズの途中で変に減衰させたりせず、旋律を強い意志で貫いてくれるので本当に気持ちいい。
バラ―ド、めちゃくちゃかっこよかった……求心力がすごい。完全に記憶している曲のはずなのに、次の展開が気になってしまう、まさにドラマ性のある演奏だった。


既にピアニストとして活躍中の反田さん・小林さんについての記事は巷に溢れているので、当初お二人に関しては言及しないつもりでした。それ以外の方の演奏について挙げようと思っていたのです、が。
予備予選の演奏を聞き直してみたところ、やっぱりこのお二人は別格でしたね。スルーできなかった。
評判が立つのは、立つだけの理由があるというものですね。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?