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18thショパンコンクール イチオシコンテスタント【STAGEⅠ感想 日本人編】

STAGEⅡ初日です。

今日のEvening Session、トップバッターの沢田さんの演奏が始まる前に STAGEⅠの感想をあげねばと思いつつ、気づいたらこの時間になってしまいました。急げ!
STAGEⅡ、規模が大きく、深い世界観の曲も増えてきましたね。しっかり集中してすべての演奏を聞くのはなかなか大変そう。
一般の人間は「ちょっと疲れたからあとでアーカイブで聞こう」とできるけど、ジュリーの皆さんは本当に大変だと思います。きっとお尻痛いよね…卵乗せて座っても潰れないジェルクッションの会社、ショパコンのスポンサーについてあげてほしいです笑

今更ですが、STAGEⅡ進出されたコンテスタントのみなさん、おめでとうございます&がんばってください!

では、日本人編、いってみます。

Kyohei Sorita(反田恭平さん)

使用ピアノ:Steinway479
手がとても柔らかくて、早いパッセージでも無駄な力みがない。艶々の音色が素晴らしい。ダイナミクスの付け方、歌い方が職人技。25-10は熱演!ほぼノーミスだったんじゃないだろうか。彼のスケルツォを聞いていてふと思い出したのは、「ピアノという楽器の特性・可能性を完全に把握した上でショパンは曲を作っている」ということ。そのショパンの挑戦に応じるような演奏だったように思う。まるでリサイタル。お金払いたい。

Tomoharu Ushida(牛田智大さん)

使用ピアノ:YAMAHA CFX
既にピアニストとして活躍中の牛田さん。演奏をしっかり聞いたことはなくて(子供の頃にテレビに出てたのを何度か見かけたくらい、すっごい可愛かった)、前情報なしで拝聴。
まず思ったのはすごく楽器が鳴るな、ということ(これまではロシアものを中心に勉強されてきたらしい、納得)。音色はブライトかつ上品で繊細、ショパンにぴったり。10-10はノーブルで可憐な印象。革命はハードな箇所でもテンポ感を失わず、悲憤を大変ドラマティックに描いている。和声感も素晴らしい。そして中間部の祈るような表現がとにかく美しかったファンタジー。緩急のバランス感覚が抜群で、ショパンに対する敬意が伝わってくる。物語性のある渾身の演奏に、思わず泣きそうになってしまった。

Aimi Kobayashi(小林愛実さん)

使用ピアノ:Steinway479
椅子のトラブルを経て、若干淡々と始まったように聞こえたノクターン、徐々に熱がこもっていく。やはり音楽のスケールが大きく、澄んだ音と深い音が同居してるのが素晴らしい。一気に彼女の世界観に引き込まれ、トラブルがあったことをすっかり忘れてしまうくらい。木枯らしは落ち着いたテンポで。中間部の刺さるような音、迫力と緊張感。後半は慟哭、悲鳴、嘆き、といったものを連想させる。10-10も意志のある音で、訴えかけるような強さ。重ためでゆっくりとしたテンポのなかに、厚みのある美音と強さが共存するエチュード。
そしてスケルツォ。彼女の苦しみみたいなものが見えてくる。音楽の産みの苦しみなのか、彼女個人の記憶に結び付くものなのか……決して小ぎれいに洗練された音楽ではなく、ギリギリのところをいくような表現もあったけど、そこが人間としてすごく共感できる。感情を揺さぶられる演奏だった。


3人中2人が予備予選の記事と被っています。牛田さんはそもそも予備予選免除だし。というわけで、上記3名の方の演奏については、完全に私の好みです。言及していない方がダメだったとか嫌いというわけでは決して!ないので、どうか悪しからず。

ピアノに限らず、一定のレベルを超えた芸術に優劣をつけることって本当に難しいですよね。評価基準のポイントを稼げればいいかというとそれは違うし、かといって好みだけでは評価することはできないし。そもそも芸術を評価しようという考え自体がナンセンスな気もするけれど、それじゃあなんでコンクールなんてやるの?という話になってしまう。コンクールはコンクールで、若手芸術家に舞台を用意するという重要な意義があるはずなので。

もし評価の基準があるとすれば、「いかに本人が納得して弾いているか」という点にあるような気はしています。

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