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18thショパンコンクール イチオシコンテスタント【STAGEⅠ感想】
現在、Evening sessionのライブ配信がスタートしたところです。京増さんがOp.10-1を弾いておられます。がんばれー!
本セッションをもって、STAGEⅠは幕を閉じます。
先ほど地震が発生し、首都圏はちょっとした騒ぎになっています。帰宅の時間帯にも関わらず、電車・地下鉄は止まってしまいました。水道管の破裂や火災等も発生しているようです。どうか身の安全の確保を。
私は自宅でMorning Sessionを見終わって、細々としたことを片付けていたところで揺れを感じました。揺れそのものよりも、自宅にある複数の端末から例の緊急地震速報の音が鳴り響いたことの方が怖かった。
あの音本当に嫌ですよね。あのアラーム音を作ったのはかの大作曲家、伊福部昭氏の甥の方だとか。第二転回形の和音。マジで!嫌です!!
我が家の猫はアップライトの下(普段の定位置)でじっとしていました。地震の際、ピアノの周辺は危険です。かといって揺れの最中に引っ張り出すわけにもいかず。どうかピアノ倒れないで、と念を飛ばすべく、枕で頭を守りながらピアノを睨みつけておりました。意味ない。
前置きが長くなりました。
まだ全員は弾き終わっていませんが、STAGEⅠのなかで特に印象に残ったコンテスタントについて挙げておきたいと思います。
ピアノ自体の音くらべもコンクール鑑賞の醍醐味(だと思っている)ので、使用ピアノも付記してみました。
Hao Rao / China
使用ピアノ:Steinway479
ふくよかで豊かな表現。響きがすごく充実していてものすごくキレイ。ひとつのひとつのフレーズ、ひとつひとつの音をしっかり歌う。Op.31弾いてくれてありがとう。拍手もすごく長かった。
人のことを簡単に天才と言うのは正直好きじゃないんだけど、彼の年齢を考えると「天賦の才」という言葉が一番ぴったりな気がしてくる。
Szu-Yu Su / Chinese Taipei
使用ピアノ:Steinway479
音が深く、スパーンとよく鳴る。湿度はあるけどベタベタとした嫌な感じではなく、暖かみのある美音。ほぼノーミスで終えたエチュードは、指回しに必死になるのではなく、しっかり和声感が感じられる演奏。音楽にいやらしさがなく、「いまここにあるものです」という自然さ。だからスッと入ってきて気持ちがいい。聞き入ってしまう。
Boao Zhang / China
使用ピアノ:KAWAI Shigeru EX
情感あるノクターン 。カワイの甘さを削ぎ落としたピアノの音が新鮮。Op.10-4の疾走感!そしてそのままの硬質な音で怒涛のOp.25-10。全くテンポを落とすことなくほぼノーミスで駆け抜けた、強靭なメカの持ち主。気持ちよかったなー。Op.52、甘さはないけど確固たるものを感じる。音楽自体は正統派で、しつこさがないので非常に聞きやすい。
J J Jun Li Bui / Canada
使用ピアノ:KAWAI Shigeru EX
ノクターン枠にOp.10-3。Op.10-4も、ブライトなカワイのピアノの音と彼が表現したい音楽がハマってた感じ。緊張感があっていい演奏。Op.25-6も、芯があって、情景が浮かぶような美しい表現。メカニックが強いから表現に余裕があるように思えた。誠実な音楽。
Xuehong Chen / China
使用ピアノ:Steinway479
ふくらみのある、夢見るような澄んだ音が美しいノクターン。すごく甘く歌う。ペダルのセンスもいい。ポリフォニーをしっかり表現したエチュード。とても繊細に一音一音を弾いていて、自然で嫌味がなく、流れがある。短調のOp.25-6は激しく悲劇的な表現をする人もいるけど、彼は描いた世界観は柔らかいくて美しい。その世界観をベースにしつつ、中間部では嘆息や絶望の要素をにじませてくる。Op.23はキラキラの音。風が吹くような、爽やかで、上品で、それでいて気持ちのこもったバラード1番。若々しい表現が作曲当時20代前半だったショパンにぴったり。
Hyounglok Choi / South Korea
使用ピアノ:Steinway479
音楽性が素晴らしい。ノクターンの切なさ、寂しさ、感情に刺さる。星空キラキラのトリルにため息……まさに夜を想う曲と書いて「夜想曲」。彼の哲学と個性を感じるエチュードは水彩画のよう。バラード4番も、雑音がなくてふわっと軽く、先まで通るような澄んだ音。音量のためではなく音色のために使ったペダルがふわあああって広がる。天国みたいな音。ずっと聞いてられるし聞いていたい。別次元に連れて行ってくれるような心を掴まれる演奏にうっとりしてちょっと泣いた。
Aleksandra Hortensja Dąbek / Poland
使用ピアノ:Steinway479
朝一発目で重たい悲劇的なノクターンをキメてくれた。ともすると間延びしがちな曲だけど、ねっちりと緊張感を保っていたと思う。中間部の左手にゾクっときたねー。落ち着いて入ったOp.10-7、無駄に早いテンポにしないところがいい。ひとつひとつを歌っていて、和声感もすばらしい。ポリフォニックなOp.10-5に続いて、まろやかで深い、あたかかい音が美しく伸びるOp.47。柔らかい曲調の中で短調になるところや低音部の重音がメリハリになって、全体はビロードで覆われているような艶がある。
Eric Guo / Canada
使用ピアノ:Steinway479
澄んだ夜の空気と星空の情景が浮かぶようなノクターン。トリルで星がまたたく。癒し。エチュードは2曲ともコロコロとした音で危なげなく安定している。非常に自然な流れ、かつ情感はしっかり。バルカローレも、落ち着いた彼の音色がピッタリはまる。キラキラした弱音とメリハリの利いたデュナーミクがなんとも素敵。この曲は本当に音色が大事だな……。盛り上がりとコーダは気持ちよく、力強くも上品に。なんて幸せなバルカローレ!
Jakub Kuszlik / Poland
使用ピアノ:Steinway479
とにかくピアノがめちゃくちゃ鳴る。Op.25-6は軽やかでよく設計された音楽。難易度の高いOp.10-4も、爆音戦車系ではなく美麗に、風のように攻める。蝶のように舞い蜂のように刺す、的な(?)。コーダの左手がめちゃくちゃかっこいい。スケルツォではキラキラして華やかで、それでいて丸くて深くて凛々しい音、がくるくる入れ替わる。フォルテも力づくじゃないから濁りや雑音が全くない。左手でオクターブを繰り返す箇所では毎回違う音色、違う楽想を見せてくれた。なのに全体で見たときに構成が全く破綻していない。何という構成力&音色の多彩さ。素敵な音楽を聞かせてくれてありがとう。ブラボー。
日本人編はまた後日。
通過者の結果発表は日本時間で本日の早朝の予定とのこと。ドキドキだー!
何はともあれ、まずは全てのコンテスタントの方々に、拍手とお疲れさまの言葉を送りたいと思います。
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