見出し画像

アフガニスタンの指輪

  宗教信条とは関わりなく、工芸や美術としてのイスラムに関心を寄せていて、未だ行けていないが行きたい地域は、「イスラム教の国」が多い。踝まで隠れる美しい刺繍付きのイスラム服も2着持っている。日本では外に着ていかないけど。次にイスラム寺院で礼拝する時には――。
  そんな中、比較的行きやすいトルコはこれまで二度訪れたが、2011年にはUAEに行った。珍しくツアーだった。メチャクチャ暑いところを単独で動き回るのはとても疲れる。「連れて行ってもらう」のも、上手く利用したいのである。とか言いつつ、結構自由時間もあって、勝手にいろいろ行く余裕もあった。
  あるホテル内スーク(市場)で、アンティークっぽいアクセサリーを置いている店に入った。アラビア習字の文字が美しいので、それに関わる物――などを物色。その日は金曜だったから(そうだっけ?)、本来イスラム教徒は何もしない日。働いたりしてはいけないのでは? でも、店は開いていて、だが、店番の男性はザ・アラブ人という装束で、コーランを読んでいた。何とも近寄りがたい雰囲気ではあるが、ケースを覗いていれば話掛けてくる。ナザルボンジゥ(魔除けの青い目玉)がついた指輪でもあればなぁ、というところだった。が、石(多分、アゲート)に綺麗なアラビア飾り文字を掘ってある。その頃はよく見えないコンタクトをはめていたので、細部ははっきり見えなかったが、古そうな感じだった。民族衣装のお兄さん曰く、「18世紀のアフガニスタンの物」。ホントか?   そして値段交渉。うーん、アラブ人との商談はタイヘン。やはりあんまり負けてもらえなかった。一回、もういい、と店を出ようとしたけど。結局6、7千円だったと記憶する。後でよくよく見ると、石を押さえる台の爪が欠けていた。まあ、骨董品だから…。
 そして文字の内容は、分からなかった。祈りの言葉だ、と言っていたお兄さんには「これをつけてトイレに行ってはいかん。床に置いたり、落としたりしてはいかん」と言われた。なので、帰りの飛行機内のトイレに行く時、わざわざ外したのを覚えている。
  その後帰国後も、あまり身につけないで、お守りのように飾っている。

  翌年モロッコに行った時も、懲りもせず同じようなものを物色した。アラビア文字の掘られた指輪。やはり赤い石で、銀の台にはまっていた。ガイドの現地人に何て書いてある? と聞いたら、「大きな木? よく分からない」。ふーん、とそれ以上追及しなかったが、結局買って帰ってきた。「18世紀アフガニスタンのもの」より少し安かった。多分男物で、私の指にはぶかぶかだったが、鎖で首から提げてもいいので、可。
  そして思った。これは印章? だから鏡文字になっていて、よく分からない、ということなのではないか(だったらそう説明してくれそうだが、ガイド氏はその可能性を知らなかった?)。石の表面にインクをつけて、ハンコのように押せば、はっきりと文字が読めるのでは? 指輪の歴史を紐解けば、そういう使われ方は普通だ。まだアラビア習字の人にも、アラビア語話者にも、聞いてみることができずにいる。

アフガニスタン(?)とモロッコの指輪。文字的には逆さ置き(多分)…下手写真で失礼
                                     ©Anne KITAE


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?