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人生で初めて入院した話

入院しました。
というか、入院しています。
病院のベッドの上で横になって、スマホでこれを書いています。左手には点滴の針が刺さってる状態。

煙草もお酒も人並み以上に嗜んでまいりましたし、数年前までは週3回ぐらいの徹夜は当たり前といった生活を送ってきているので、人からは不健康に思われがちです。
ところが親からもらったこの身体、思いのほか丈夫にできているようで、健康診断や人間ドックの結果は55歳の今でもほぼ全ての項目でA。強いていうなら、聴力が低下していることが最大のウィークポイントでしょうか。

大病も大怪我もすることなく生きてこれたおかげで、これまでの人生で手術も縫合も未経験。入院も今回が初めてです。
人生初の体験ということもあり、初日こそ少しはしゃいていましたが、今日で3日目。すでにもう飽きたし退屈だし、メシはまずいし酒は飲めないし煙草は吸えないし(これが一番辛い)、一日も早く退院したいです。

とにかくやることもなく暇で仕方がないので、記録の意味も兼ねてnoteでも書こうかと。
とりあえず入院に至る経緯からダラダラ書きます。先に断っておきますが、あまりおもしろくないですよ(笑)。起きたことを書いていくだけなので。

4/4(火)
夕方、神戸での打ち合わせ後、大阪の事務所に戻り、22時頃帰宅。帰り道、既に身体に発熱の前兆のような違和感があり、これはアカンやつが来る…と薄々予感していました。とにかく、帰宅して即ベッドに。
普段は一度寝たら途中で起きることなど皆無なのですが、この日ばかりは身体の痛みと倦怠感、喉の渇き、そして悪寒に震えて目覚めたかと思えば次は汗だく…といった具合で、何度も起きました。体温を測ると38.5度。内心、面倒なことになった…と、げんなりしました。

4/5(水)
この日は撮影の予定が一件入っていたので、朝から電話でカメラマンとクライアントに事情を説明し、ぼくの立ち会い無しで進めてもらえるよう、なんとか調整。ホッとしたらまた熱が上がり39度台に。
発熱外来の対応をしてくれる近場のクリニックを探して、妻がスマホに送ってくれたものの、熱としんどさで頭が回らず。どうにか家から徒歩5分ほどのかかりつけ医「M内科クリニック」に電話して10時で予約を入れる。
このM内科クリニック、一応かかりつけ医ではあるのですが、実はあんまり好きじゃないんです。やる気のないおじいちゃん先生で、ボソボソ話すから言ってること聴き取りにくいし。
発熱外来での診察となると、ぼくもマスクしてフェイスシールド着けさせられ、ビニールシート越しに座ってる先生もマスクにフェイスシールド着けてるわけですよ。案の定、何言ってるのか半分もわからない。

「…どの痛み…か咳…な…?」
「はあ…喉は痛くないし咳もまったく」
「か……にコロ…の症…出て…?」
「はい?」
「家族……ロナ……状……人は?」
「ああ……いませんね」
「…らだに、どっ…ほっ…きは?」
「へ?(難度上がった!)」
「身体…、…っかほっせきは?」

ほっ…せき…?
ほっせき、って言ってるのか?
しばし逡巡したのち、脳裏に浮かんだのが「発赤」の二文字でした。

「いや、赤くなってるとことかはないですね」
「そう…」

いや、普通に「赤くなってるとこ、あらへんか?」って訊けよ(笑)。あんたのクリニックがいまいち人気ない理由、そういうとこだぞ。
その後、鼻に長ーーーい綿棒を突っ込まれるインフルエンザの検査も人生初体験。いや、あれはマジで怖いね。え?! まだ入れるの? いや、無理無理無理無理! 絶対にもう綿棒の先っぽ脳に刺さってるでしょ!? って。怖すぎる。熱で半分ボーッとなってたから、なんか感覚麻痺してたけど、どシラフだったら失禁ギャン泣き拷問案件ですわ。
インフルは即結果出て陰性。コロナの方は明朝に電話で結果連絡。しかし、先生自身が「喉の痛みも咳もないし、コロナも違うやろなあ…」と。

「あと考えられるのは…性病かなあ? アンタ、なんか心当たりは?」
「おまへん」

ロキソニン処方してもらって、薬局で買って帰宅。あ、発熱外来経由だと、どこの薬局行くか訊かれて、そこにファックス送られるのね。薬局行って「こんちはー」って窓口行ったら、「あっ、ダメダメ! 外出て! 裏回って!」と。映画でよく物乞いの人がやられてるアレですね。エレベーターホールにパイプ椅子置かれて、そこでポツンと座って待つことに。けっこう人通り多くて、行き交う人々が「何? あの人、どしたん?」みたいな目で見ていくのが辛いです。
帰宅してロキソニン飲んで、寝て起きたら熱も下がってきたし、おっ? これはいけるんちゃうん?! なんて思ってました、この時は。

4/6(木)
起きたら熱も下がってるし、多少の倦怠感は残ってるもののほぼ復調。病院から電話があり「コロナも陰性でした」とのこと。なんだ、単にちょっと疲れが溜まってただけだったのかと、ちょっと安心しました。
妻が仕事に出掛けてしまったので、一人で昼食を。無性にお腹が減ったのと、インフルもコロナも陰性だった安心感と開放感でハイになり(笑)、新玉ねぎとじゃがいものお味噌汁を作り、ごはんを炊いて卵かけにして食べました。一人で1合ぺろりと食べてしまった。

実はこの時、台所で料理しながら、「あれ…なんか、右のくるぶしが痛いような…」と思ったんです。思い当たる原因があるとしたら、火曜日に熱が出始めた状態で帰宅する際に、歩道の段差で軽く捻ったかな? ということぐらい。でも、そんな時間差で痛みがくるのもおかしいよなあと思いつつも、目の前の卵かけごはんをがっつくうちに、くるぶしの痛みは忘れていました。

しかし、妻が帰宅する頃にはくるぶしの痛みは徐々に悪化して、見た目にも腫れているのがわかるようになってきました。もしかして一昨日の夜からの発熱も、これが原因だったのでは、という疑念が脳裏をよぎります。
そして一時は下がっていた熱も、再び37度台後半まで上がる始末。明日もう一度、例のポンコツM内科クリニックに行くべきか迷いましたが、どんどん腫れて赤くなり痛みが増していくくるぶしを見て「これは皮膚科に行くべきかも」と考えました。

4/7(金)
朝8時にスマホアプリで、かかりつけのN皮膚科に予約。ここのN先生は超名医でクリニックも大人気なので、8時スタートのネット予約も一瞬で埋まります。ぼくも秒針とにらめっこして8時ジャストに速攻でアプリから予約しましたが、それでも9番目でした。
家を出る時いつものニューバランスに足を入れたら、そのままでは右足が入らず、サイズ大きめのポンプフューリーを履きました。
9時半過ぎに診察室へ。ぼくの足を一目見て、N先生「あー、これはダメだ。すぐ紹介状書きますから、◯◯病院にこのまま行くことできますか?」と。
◯◯病院は家から徒歩で3分ほどのところにある大病院で、以前にも何度か検査などでお世話になっているので診察券もあります。
「ちなみに先生、ネットでちょっと調べたんですけど、これって蜂窩織炎ってやつですか」
「はい。まず間違いなくそうだと思います」

紹介状片手に◯◯病院へ。採血後、すぐに皮膚科に案内されました。
病院って、診察前の問診票の記入、看護師からの問診に、医師からの問診と同じことを何度も説明させられますが、今回は水曜にM内科、今日もすでにN皮膚科を経由してここ◯◯病院と、いい加減説明するのにも疲れましたが、それでも根気強く説明しましたよ。
「蜂窩織炎だね」と、担当のA医師。明らかに年齢はぼくより若いと思いますが、ライトなタメ口です。まあ、ええんやで。
「入院できる? このあと」
おい、もう一軒行っちゃう?っていう飲み友達みたいなノリで言うんじゃない。

実は週明け月曜日に、早朝から夕方まで兵庫県某所の某施設で撮影の仕事が入っていたのです。施設の撮影だけならまだしも、その施設の所長含む3名のインタビュー撮影があり、そればっかりはぼくがやるしかないだろうと…。
なので、とりあえず服薬と静養で土日を乗り切り、月曜の仕事が片付いたら火曜日に再診してそこから考えましょう、ということでなんとか手を打ってもらいました。
抗生剤2種と解熱鎮痛剤を頓服として処方してもらい、帰宅。

夜、煙草を買いにコンビニに行こうと思ったら、ぼくの右足は甲まで腫れて、もはやポンプフューリーさえ入らなくなってて、仕方なくクロックスをつっかけて行きました。でもまだこの時は、歩くのに支障があるほどの痛みはなかったんだよなあ。

4/8(土)・9(日)
土曜日、昼前に起きた時には、もう痛くて立つのもひと苦労。歩く姿はまるでゾンビです。

「蜂窩織炎」、少し前にもTwitterでトレンド入りしたらしく、けっこう最近話題らしいですね。「ほうかしきえん」と読みます。なんか怖ぇなあオイ。
ざっくり言うと、身体のちょっとした傷から細菌(ブドウ球菌や連鎖球菌など)が入って起きる急性化膿性炎症というやつ。火傷から発症する人もいれば、飼い猫に噛まれて罹る人もけっこういるらしいです。自然治癒することはなく、放置すると結構ヤバいです。致死率高いです。あくまでも「放置したら」ですけどね。
名前にドスが効きすぎてるよね。『呪術廻戦』のヤバい術式かって感じ。

「領域展開!! 蜂窩織炎!!」

…ほら、違和感ゼロですやん。
とまあ冗談はさておき。
差し当たって問題は月曜の撮影ですよ。立てない・歩けない、こんなゾンビみたいな状態では現地までの車の運転もままならないし、インタビューだってまともにこなせる気がしません。ゾンビにインタビューされる相手が気の毒だ。
昨日は「おれがッ、おれがやらねば、誰がやるのだッ!」と鼻息荒くファイティングポーズを取っていたぼくも、完全に戦意喪失。諦めました。
月曜日の撮影スタッフやクライアントになんとか連絡を取り、状況説明して謝りまくって撮影もインタビューもお任せすることに。本当にすみませんでした。

しかし結局、週末だったこともありベッドの確保がすぐにはできないと言われ、月曜日までは自宅静養に。
こんなことになるなら、変な意地を張らず素直に金曜日に入院しておけばよかった。A医師もあんな二軒目の居酒屋に誘うみたいな軽いノリじゃなく、ガチできてほしかった。

土日はずっと大人しく横になって過ごし、薬もきちんと飲んだ。熱が出ることがなくなったのだけがせめてもの救いだったけど、腫れも痛みもまったく快方に向かう兆しは見えず、そのまま月曜を迎えたのでした。

4/10(月)
朝一番、開院前に◯◯病院へ。自動ドアの前には、元気そうなおじいちゃんおばあちゃんたちが新装開店のパチンコ屋のオープン前のように群がっております。

皮膚科のA医師、ぼくの顔を見るなり
「で? 入院でええかな?」
とりあえず生でええかな? みたいな口調で訊いてきました。
もはや黙って頷くしかありません。
土日の間に飲んでいた薬の効果で、ほんの少しだけ数値が良化していましたが、まあ微々たるものです。A医師が言うには「この手の細菌感染症は、一旦身体に入って発症すると叩き切るのに結構時間がかかる」とのこと。

とりあえず一通りの手続きを済ませてから、準備を整えるために一旦帰宅。家が近くて本当に助かりました。
妻が手伝ってくれたおかげで30分足らずで準備完了。彼女は入院経験豊富なので手慣れたものです。
入院する部屋は、迷いましたが個室にしました。たとえ数日間とはいえ、赤の他人と寝食を共にするのはあまりにもストレスが大きい。ドラマなんかで相部屋の様子を見て「これは自分には無理…」と常々思っていたし、もちろんお金はかかるけど、逆にいえばお金で解決できるならここはケチケチしない方がいいだろうと。それに、入ってる生命保険で、入院時の個室ベッド代は賄えるはず。残念ながら一番安い個室は空きがなかったので、下から2番目クラスの個室になりました(部屋にトイレはあるが、シャワーはない)。

ふと「あ、これ個室だったら入院中にめちゃくちゃギターの練習できるのでは!」と思って小躍りしました。でも、『入院のご案内』というパンフレットの「持ち込み禁止物について」を見ると、「刃物」に続いて「楽器」と書かれておりガックリ。そりゃまあ、そうですよね…。

入院してから
こうして、人生初の入院がスタートしました。
初日は昼食からのスタートとなりましたが、基本的には次のような流れです。

6:00/起床・点滴1回目
8:00/朝食
12:00/昼食
14:00/点滴2回目
18:00/夕食
22:00/点滴3回目

冒頭で「もう飽きたし退屈だし、メシはまずいし酒は飲めないし煙草は吸えないし、一日も早く退院したい」と書きましたが、しかしまあ冷静に考えれば手術するわけでもないし、一日3回点滴打つ以外は寝てるだけ。病棟の消灯時間は22:00ですが、個室なので消灯過ぎてもテレビ見てようがゲームしてようがお咎めなしです。足は痛いけど一人で自由に移動できるし、食事制限も一切ないので、食事が不味ければ一階の院内コンビニでカップ麺でもなんでも買ってきて食べればいい。
入院経験のある方に言わせれば、こんな楽ちんな入院で、なに文句言ってんだテメェ…ってな感じでしょうね。すみません。

まもなく入院3日目が終わろうとしていますが、いくつか気づいたことがあるので列挙します。

まず、看護師さんがみんな若くてかわいい。いきなりそこ?って感じですよね。ごめん。昔、妻が入院していた時(20年ほど前)に病棟内を忙しく行き来していた看護師さんたちは、みんなもう少し年齢も上だったような気がするのは、ぼく自身が歳をとったからでしょうか。そしてみんなかわいく見えるのはマスクのせい?
マスクといえば、ぼくは普段から(コロナ前から)人の顔を覚えるのがすごく苦手なんです。ましてやこう言う場所で、同じユニフォーム、似たような髪型、さらにマスク、となると個人を識別するのが非常に困難で。しかも看護師さん昼と夜、そして日によってコロコロ入れ替わるので、もう個人として識別するのを諦めました。

次。まったく酒を飲みたいと思わない。
これはちょっと意外でした。先週火曜日を最後に、水曜日以降今日まで一滴も飲んでないのですでに丸8日間の完全断酒です。参考までに普段の酒量としては、平均すればほぼ毎日1.5リットルのビールを飲んでいます。でも、別に今のところは「飲みたい〜っ!」とはなってないです。

煙草は…まあ、吸いたいですね。対策としては、ガムを噛むとか、おしゃぶり昆布を食べるとか。あと、一番効果的なのは「寝る」、これが最強。
それでもどうしても吸いたくなった時には、点滴や食事の谷間のタイミングを見計らって、ナースセンターに「コンビニ行ってきまーす」と声をかけ、スーッと一階までエレベーターで降りて、何食わぬ顔で正面玄関から外に出ます。プチ脱走ですね。
敷地内は完全禁煙なので、病院周辺の路上には明らかに入院患者と思しき人々が煙草を吸う姿がちらほら。点滴を吊るしたやつを引きずったり、車椅子に座ったりしながら煙草吸ってます。ぼくはそんなところで路上喫煙するようなみっともない真似はしたくないので、病院のすぐそばの路地にある喫煙可の喫茶店に行ってます。こんなマイナーな店、ぼくは長年近所に住んでるから知ってるけど地元民しか知らないだろうなあ…。アイスコーヒーを飲んで煙草二本吸ったら、再び病室へ。

まあ、まだ3日目が終わったところなので、退院までに何か起きるかもしれません。その時はまたnoteに書きます。
ちなみに、今度の金曜と週明け月曜にそれぞれ血液検査を行って、その推移を見て大丈夫そうなら、たぶん来週火曜か水曜に退院の予定です。
まだ折り返し地点にも到達してないのか。先は長いですね。まあ、「少しゆっくり休め」という天啓とでも受け止めて、せいぜいダラダラさせてもらいます。

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