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Photo by
soeji
道端に落ちているアレの話
うちの近所にやたらと犬のフンが転がっているエリアがある。そこを通る時は、足元に相当注意を払っていないとえらいことになる。街灯もないので、夜は特に要注意だ。
昨夜もそこを通って帰宅したのだが、歩きながらふと、大学時代に付き合っていた彼女のことを思い出した。
かれこれ30年以上も前のことだ。
神戸は三ノ宮のセンター街を、彼女と二人で歩いていた。
時刻は夜10時すぎ。
店もほぼ閉まっていて、人通りはかなり少ない。
彼女は何かの話に夢中になっていて、ぼくは「うんうん、なるほどね」などと相槌を打ちながらぼんやりと前方を見て歩いていた。
すると、5メートルほど前方に、犬(?)のモノとおぼしきフンが、ドカーンと転がっているのに気がついた。
このまま行くと、おそらく彼女は見事にそれを踏むだろう。
だが、彼女は話に夢中で、そんなことに気付いている様子は皆無である。
かなり気を遣いながら、タイミングを見計らって立ち止まり、ようやく彼女にそのことを切り出した。
「あのさ・・・」と、ぼく。
「なに?」彼女は話の腰を折られて、やや不機嫌だ。
「あの・・・ウンチが・・・」
「えっ? したいの?」
ちがーう!! なんでやねん・・・!!
「いや、そうじゃなくって・・・」
「もしかして・・・出ちゃった・・・?」
あのなぁ・・・おれは、いったいどんな生き物やねん。
犬でも歩きながらはしないでしょう。おれは金魚か。
つーか、きみはどういう男と付き合ってるつもりなのだ。
はたして、あの頃のぼくは、彼女に人間として認められていたのだろうか。
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