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悪い人じゃないんだけどね、の話

「悪い人じゃないんだけどね」

あなたも、誰かのことをそういう風に言ったこと、あるよね。

たとえば、仕事で手を抜く上に、それが原因でミスを頻発する同僚。おまけにそれを指摘されると、あれやこれやと言い訳や言い逃れだけは一人前。

たとえば、普段はそれなりにまともな人なんだけど、ひとたび酒に酔うと人が変わったように性格が悪くなる知人。他人を悪し様に罵る、絡む、ケンカを売ってくる。

たとえば、待ち合わせの約束には100%遅刻してくるし、しかもまったく悪びれない友人。貸したものは、こちらが度々催促してようやくしぶしぶ返ってくる。

そういう人のことが話題に上り、ひとしきりみんなが、その人に迷惑を被ったエピソードや、いかにその人が困ったヤツかを語り終えたとき、最後に誰かが言うのだ。

「悪い人じゃないんだけどね」

でも、ぼくはここではっきり言いたい。

「悪い人じゃないんだけどね」は、
人物評価の最後の砦でしかない。


悪い人ではない、ということ以外に人物評価上の美点が見いだせない、そういう人なのであって、そこから先に一歩踏み込めば、もう正真正銘の「悪い人」なのだ。

当たり前だけど、悪い人は、本当にすごく悪いことをするものだ。
窃盗、横領、詐欺、暴行、放火、殺人・・・文字にするだけで恐ろしい。
でも実際には、そんな本物の「悪い人」なんていうのは、そうそう身の回りにはいないものだ(と思いたい)。いたら恐ろしくてたまったもんじゃない。

「悪い人じゃない」なんていうのは、「そりゃまあ、そうでしょ」って話なのだ。だって、犯罪者じゃないんだし。
つまり、「悪い人じゃないんだけどね」という人物評価を下される人っていうのは、言い換えれば「犯罪は犯してないけどね」と、同義なのである。
「ブタ箱行きになるようなことはしていないけど、他にはいいとこなし」ということなのである。

それってもう、じゅうぶん「悪い人」じゃないか(笑)。

ということで、今後は誰かが「んー、まあ、あの人も悪い人じゃないんだけどねぇ・・・」なんて苦笑しながら言った時には、間髪入れずに、

「いや、悪い人ですよ!」

と言うことを、ここに提言いたします。

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