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心霊写真の話

怖い話に目がない。
実のところはかなり怖がりで、一人だと真っ暗にして眠れないぐらい怖がりなんだけど、でも、怪談好きだ。好きで好きでたまらない。趣味のひとつは、怪談蒐集といってもいいぐらい。小説や映画もホラーとかオカルトとかが大好物。昔ながらの怪談はもちろん、UFO、UMA、都市伝説、そういう匂いを嗅ぐと、もう目がらんらんと輝いてしまう。
だから、機会があれば極力そういう話を他人から聞き出そうとするのだが、なかなかこれが思うようにはいかない。

仕事柄、カメラマンと会う機会がしょっちゅうある。で、撮影の合間に雑談をすることがあると、「心霊写真を撮っちゃったことがありますか」ということを必ず訊く。一般の人とは比べものにならないくらい、毎日のようにシャッターを切り続けている彼らのことだ、長いキャリアの中で一枚や二枚は「写ってはいけないもの」「わけのわからないもの」が写ってしまったことぐらいあるだろう。
と思いきや、これがない。
全く、ないのだ。少なくともこれまでにその話をしたカメラマンは、みんな口をそろえて「いやぁー、ないよ。それはない」というのだ。うーん。

もう10年近く前だろうか。とある仕事で初めてご一緒したカメラマンさんと、撮影の合間の休憩時間のこと。例によって「心霊写真みたいなやつとか・・・」って話を切り出してみた。「ないない、そんなのないですよ(笑)」まあ、予想通り取り付くシマもない答えが返ってきた。ところが、

「でも、作ったことはありますよ」

と、彼が言うのである。

彼がまだ駆け出しのアシスタント時代、今を去ること40年近く前だろうか。
当時のテレビ番組で『心霊写真の真相を暴く!』みたいな企画があって、プロカメラマンと霊能者が対決するとか、そういう企画だったらしい。で、番組内で、その真偽が論じられるはずの「心霊写真」が、応募してもさっぱり集まらなかったらしく、番組に出演するカメラマンの後輩だったその人のところに、急遽「それっぽい写真を作ってくれ」という依頼がきたんだそうだ。当時はまだフィルムカメラの時代で、それなりに苦労して多重露光やら何やらで、それっぽいモノを作った、と。

で、いざオンエアされた番組を見たら、その写真を見た霊能力者さん、

「むむむっ・・・! こ、これはかなりキケンな写真ですぞっ!」


怪談の真相なんてのは、そんなもんなのかねえ。

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