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ある1人の紅白歌手のお話

年末の紅白歌合戦に、私が応援し続けて5年目になるアーティストが初出場していた。今ではもう最推しというわけではないが、それはそれは大泣きしながら見た。

今から少しだけ、そのアーティストの話をさせてほしい。なお、先入観を持たないように、名前は最後に紹介させてもらいたいと思う。



繊細な歌詞を紡ぐ歌に、5年前の私は一瞬で沼に引きずりこまれた。そこからは早かった。その人の曲は何回聴いたかわからない。CDも買った。生放送も必ず視聴した。LIVEも何回も行った。そんな中で少しずつその人のことを知っていった。

知っていく中で、彼が自分自身に極端に自信がないことも、過去の経験のために人前に出るのが怖いこともわかった。人の目が怖くて電車にも乗れない彼が、LIVEがあまり好きではなかったこともなんとなく察していた。


そんな彼が少しずつ素を出すようになっていったのはいつからだっただろうか。LIVEでぎこちない笑顔が消えていったのはいつからだっただろうか。
「LIVEが楽しい」「みんなと会えるLIVEが好きだ」と聞いた日は嬉しくて泣いちゃったな。
一人称が「俺」にだんだん変わっていって、その度に沸いたのが懐かしいな。
放送で話す声が素の声に近くなったと感じたのは最近だったかな。

最近の彼を「変わってしまった」と嘆く人もいたが、私は嬉しかった。暗い過去を持つ彼が、あるLIVEで言った「苦しい思いもしてきて、流す涙もないくらい泣いてきましたが… もう一度生まれ変わるときがきたら、僕に生まれたいです。」という言葉を、私は忘れないだろう。



彼のLIVEを見てきた中でも印象に残っている曲が1曲ある。LIVEで初歌唱をしたとき、その歌詞から、全身全霊で歌っている姿から伝わってくるメッセージに、今までにないくらい心を動かされた。歌い終わって、舞台袖にはけていくときにふらついていた姿は今でも忘れられない。彼は自分の真っ暗な過去も、現在も抱えている葛藤も全て背負って、綺麗事であるとわかっていながらも、目の前にいた私たちに「生きろ」と叫んだのだった。


彼は、その曲を紅白歌合戦で歌いきった。歌い終わったあと、枯れた声で謙虚に感謝を伝えたコメントも彼らしいものだった。これまで私が見てきた彼の姿や言葉と、そして何よりも、あの日のLIVEで歌った姿と重なって涙が止まらなかった。



最後に、ここまで名前を明かさなかった彼…まふまふさんの歌ってみたとオリジナル曲を1曲ずつ紹介して終わろうと思う。

1曲目は「命に嫌われている」。紅白歌合戦でまふまふさんが歌った「歌ってみた」曲だ。毎日変わらず誰かがどこかで死ぬのに、いつかは自分も枯葉のように朽ちていくのに、それどころか明日死んでしまうかもしれないのに、周りの大切な人には生きていてほしい。そんなエゴとともに、必死に命を抱えて生きていく私たちに向けられた曲だ。曲名で敬遠してしまいそうになるが、ぜひ一度最後まで聴いてみてほしい。


作詞作曲はカンザキイオリ様である。素敵な本家様も合わせて紹介させてほしい。


2曲目は「夢のまた夢」。私が5年前に初めて聴いた、まふまふさんのオリジナル曲だ。夏祭りの屋台の匂い。蒸し暑い夜に見上げた星。子どもの頃に置いてきてしまった夏の記憶が掘り起こされるような、そんな曲となっている。



紅白歌合戦で儚くもしたたかな姿を見せつけたまふまふさん。そんな素敵なまふまふさんが、これからも彼らしく活動していける未来を願ってやまない。

最後まで読んでいただきありがとうございました。ふとしたときにまた読みに来ていただけると嬉しいです。