気胸ジェンヌ誕生秘話②ーー最初の入院治療
今日(2020年3月10日)の朝日新聞朝刊で、月経随伴性気胸が取り上げられていて驚いた。「患者を生きる」といういろいろな病気の人の話を紹介するコーナー。今回は子宮内膜症がテーマで、連載2回目の今日、その内膜症から気胸が起きたと書かれていた。
仲間発見! しかもこの方の場合、肺だけでなく腸にも内膜症組織が飛んでしまったため、かなり大変な思いをされたようだ。
月経随伴性気胸は良性疾患ではあるけれども、厄介な病気だ。転移性腫瘍であり、特に月経随伴性気胸の場合は「月経のたびに再発=気胸を繰り返す」ことがわかっているからだ。
しかしまだまだ珍しい病気ゆえ、それを理解してもらうのは非常に難しい。この記事をきっかけに少しでもこの病気の情報が広がるといいな、と願いつつ、私の気胸発覚の経緯をお話ししたい。
実はすごい健康診断
「自然気胸です。すぐに病院に行ってください」
健康診断を受けてから数日後のこと。電話をかけてきた検診センターの医師に、私はこう告げられた。
気胸……昔読んだ古い小説に、確かそんな病気が出てきたな……しかし、これまで何十冊も健康本を作ってきたのに、気胸の知識はまるでなし。電話を切ったあと、グーグル先生に聞いてみたけど、典型的な症状である「息苦しさ」「胸の痛み」といった自覚症状もないので、いまいちピンとこない。
「わざわざ電話をかけてくるくらいだから、ちょっと大ごとなのかな」とドキドキしつつ、検診センターから届いた肺のレントゲン画像と紹介状を手に、自宅に近い大学病院を訪れたのは11月の終わり頃。
診察の前に、レントゲンを撮る。数日前にも撮っているのに、わざわざもう一度撮るってことは、実は問題ないんじゃない? その確認じゃない? きっとそうだ!
「今日撮ったレントゲンでは、問題ないですね」と言われるだろうと思って入った診察室で、医師に開口一番言われた言葉が「入院しますか?」。
えっ、そんなに重症なの⁉
こういうのを「青天の霹靂」って言うんだな。まったくと言っていいほど自覚症状がなかっただけに、ただただ驚いた。
そして毎年「健康診断のレントゲンって、なんのためにあるんだよ」と思っていた自分を反省した。健康診断を受けなければ、気胸の発見はもっと遅れていただろう。
それにしても何回レントゲンを撮ったんだ
病院に行ったのは木曜日。どうしようかと迷っている私に、医師は言った。
「週明けにもう一度来てもらって、レントゲンを撮って、そのときの様子で判断しましょう」と。
こちらとしても仕事の算段もあるから、このまま即入院よりはありがたい。そこで一応聞いてみた。
「月曜日に来て、もし入院ってことになったら、一度自宅に荷物を取りに帰ってもいいですか。2時間くらいで戻ってくるので」
「うーん……もう入院の準備をしてもらってきたほうがいいね」
その言葉を聞いて瞬時に悟った。どのみち入院コースなんだな、と。
自宅に帰ってから、検診センターにもらった自分の肺のレントゲン画像を見てみた。去年の肺と今年の肺。素人目にも明らかに異常だとわかった。そこで観念した。
月曜日、キャリーケースを引きずって再び病院へ。肺は相変わらず縮んでいる。「入院します」と言うしかなかった。
地味につらい治療
入院して何をやるかというと、肺にたまった空気を抜く(正確には、肺と肺を包んでいる胸膜のあいだにたまった空気を抜く)。そうすることで、縮んだ肺を元に戻すのだ。
で、どうやって空気を抜くかというと、肋骨のあいだを数センチ切開して、胸腔内にドレーンというチューブを入れる。それを機械につなげて、少しずつ空気を抜いていく。どれくらいで抜けるかは人それぞれで、レントゲンを撮っては肺の状態を確認し、肺が完全に膨らんだら晴れてチューブとはおさらば、ということになる。
このように書くと簡単だが、実際は地味~につらい治療だ。何がつらいって、チューブは四六時中入りっぱなし。その間、お風呂にも入れない。脇の下から10センチくらいのところからチューブを入れているので、チューブ側には寝返りも打てない。
何よりも体に入っているチューブの異物感がハンパない。これは肺が膨らむにつれてつらくなる。膨らんだ肺がチューブに当たって痛むのだ。痛み止めを飲みつつ、ひたすら肺が元通りになるのを待つしかない。
私の場合、3日間チューブを入れたところで、ようやく肺の膨らみが戻った。チューブを抜いてもらって、3泊4日の入院生活は終わった。
もちろん、これは終わりじゃなく、はじまりだったのだけれど。
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