退職者と四星球
三月末に退職する人がいた。仮にQさんとする。
当日、退職の挨拶としてQさんからお菓子が各人に配られた。
通常はお菓子ひとつのところ、Qさんは唯一の例外としてPさんのデスクにはお菓子とおもちゃの四星球を置いた(この日Pさんはテレワークで不在だった)。
四星球(スーシンチュウ)。いわゆるあの「ドラゴンボール」である。
周りの人々は「この四星球の意味は正直わからないけれど、きっと二人の間で何か“ドラゴンボールが好き”とか共通の話題があったんだね」と話し合った。
次の日、Pさんが出社した。
四星球を見つけるPさん。「何これ?」
それを見た隣の人が「それ、辞めたQさんが置いたんですよ」と教えた。
Pさんは「四星球の意図がわからない、怖い」と言った。
デスクの中央に置かれた、ギラリとにぶく光る四星球。
真実が解明されるためには、あと六つの龍球が必要なのだろうか。
私の好きな話である。
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