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VTuberの一回性を解明する②

 ①からの続き。

 声優さんは数々のキャラクターに声を当てることもあり、一人のキャラクターとその声優さんはそっくりそのままイコールというわけではない。
 「声優」という観点から見ると、Vtuberにおける中の人(B)はAというキャラクターの❝専属❞の声優と言える。一人のBが掛け持ちして複数のAを演じることはあるのかもしれないが、そうだとしても大っぴらには公表しないだろう。何故なら、一人のA(≒V)には一人のBという大原則があり、その結びつきは非常に密接なものだからである。
 アニメの人気キャラクターは寿命が長い。国民的アニメ『サザエさん』『ドラえもん』の例を見ても、一人の声優さんが引退した時に「じゃあもうキャラクターの方も引退だね」ということにはならずに「では声優さんを交代させてキャラクターの活動を続けさせよう」ということになる。こうやってアニメの人気キャラクターは長い時間を生き続ける。
 Vtuberの存在は非常にアニメ的であるけれど、中の人がリタイアしたらもうそれで「おしまい」だ。「中の声優を交代すればいい」というアニメにおいては有効な手段が通用しない。何故ならA(≒V)を演じてよいのはBたった一人だけだからだ。外側のキャラクターにすごい人気があったとしても活動の存続は不可、余儀なく引退に追い込まれてしまう。
 演じていたVTuberのキャラクターを使えなくなってもBのソウルは残る。ただ、そのVを応援していた人の中には「AあってのB」という人もいるだろうから、今までと同じ熱量でBを応援できるかと言えば必ずしもそうでないだろう。
 VTuberは架空の肉体であるが故に、一見いつまでも長く続けられそうでいて、終わる時は一瞬で消えてしまう(これはVTuberに限ったことではないが)。
 一度活動が終了したら同じ「V」という形ではもう二度と見られないことを思うと彼らは実に儚い存在だ。その一回性が、むしろ彼らを特別な存在にしているのかもしれない。
 ただ、これはあくまでもVTuberがまだ始まったばかりの文化で、「一度やめてからの復活」という例がまだ出てきていないだけだとも言える。上につらつらと書き連ねたことが「ひと昔前はそんなんだったね~」と笑い話になる日が来ればいいなと思う。


〈追記〉
 今回の話は企業勢のVTuberに限った話かもしれない。契約とかいろいろあって、そのせいでキャラクターを使えないとかあるだろうし……

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