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バカリズムの問いの立て方~「バカリズム案⑨」感想~

 先日、バカリズムライブ番外編「バカリズム案⑨」の千秋楽を見てきました。
 「バカリズム案」に限らず、バカリズムさんのライブ自体が今回初めてでした。
 舞台にバカリズムさんが出てきた時はミーハー心が刺激されて「キャ~升野さ~~ん本物だ~~~!」ってなりました。
 会場にあったチラシによると、公演内容は以下の通り。

[内容]
いろいろな案を発表(コントライブではありません)

 そうそう、コントライブではないんですよね。
 「○○に関する案」という形で独自の「案」をどんどん発表していくという、大喜利とはまたちょっと違う、大喜利から更に一歩踏み込んだ「プレゼン芸」といったところでしょうか。コントというフォーマットではもしかしたらこぼれ落ちてしまうかもしれない面白さを全部掬う豊かな世界が広がっていました。
 「IPPONグランプリ」その他番組での活躍からも周知の通り、バカリズムさんの発想力の凄さは折り紙付き。ただ、今回の「案」ライブを見て回答の内容だけではなく「問いの立て方」も優れていると感じました。

(えー、当日はメモを取らず鑑賞し若干あやふやな記憶で書くのでその点はご容赦いただきたいんですけども、)
 たとえば「音楽に関する案」として「バンドのいわゆる“サポートメンバー”は何故正式なメンバーになれないのか?」という問いがありました。
 よくバンドのライブなんかでは正規メンバー以外に当日演奏をするサポートメンバーを見かけることがあります。
 流動的な場合もあるけれど、たいていのバンドのサポートメンバーは固定で長年やっていることが多い。
 「一緒に長年活動して気心も知れている筈なのに、だったら何故そのサポートメンバーは正規メンバーになれないのか?」という問いに対してバカリズムさんがどんどん回答(=案)を出していく趣向でした。
 初手のジャブの回答ではサポートメンバーが「異様に年上」「一人だけ駅が遠い」というところから始まり、ここから先の展開はもうバカリズムさんの独壇場です。
 とにかく笑いましたが、後から振り返った時に「ちょっと待てよ」とも思いました。
 それは、回答の内容は「サポートメンバーは何故バンドの正規メンバーになれないのか?(A)」というお題に限定されたものではないと言えるということです。
 要するにこのお題は「とある共同体の中で特定の一人だけがハブられている。それは何故か?(A’)」というものです。
 バンドという言葉が使われている以上、(A)の問いについては多少音楽関連の中で探ったほうがよいという制約もありますが、よくよく考えてみると「異様に年上」「一人だけ駅が遠い」という回答は音楽に関係ありません。だから(A’)のルールに沿った内容であればほとんど外すことがないと言えます。
 しかし、(A’)は元の(A)のお題を簡略化したものですのでその問い自体に当然面白みはありません。
 なので「多数派に対して、何故この一人は圧倒的にマイノリティーなのか?」という状況の面白さを最大限に引き上げる(A)の問いの立て方、ここが凄いと思いました。
 仲間内からハブられる原因として「異様に年上」というのは当たり前すぎて面白くありませんが、「それが原因でそのサポートメンバーはバンドの正規メンバーになれない」が一枚のっかることで途端に背景の物語に奥行きが発生します。
 (A)のお題自体を先に思いつくことも勿論あるでしょうが、回答を面白くするためにそこから逆算で考えて(A)を設定したという可能性も充分にあると思いました。
 いわば「この回答の面白さを最大火力にするにはどうすればいいか?」という大喜利に対してバカリズムさんがこれ以上ない答え(A)を出した形です。
 双方向から自在に大喜利できる男・バカリズム。
 笑いながらも戦慄し、堪能しました。

【おまけ】
 この日一番ウケていたのは幕間映像の「寿司に関する案」。
 何かの機会があったらぜひご覧ください。とても面白かったです。

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