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短いお話

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ミスiDチャンレンジ期間中にできるだけたくさんお話を書こうと思って書いています。最早修行笑
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2021年9月の記事一覧

【お話15 新幹線と臆病】

新幹線のつるりとした表面がきれいだった。柵越しに思わず手を伸ばした小学生の私は、先生に怒…

八朔
3年前
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【お話13 ほんとうのわたし】

ただいま、という声がかすれた。 今日も仕事でしゃべり倒したせいで、声がうまくでない。 返事…

八朔
3年前
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【お話12 白と雑】

一人暮らしをしていて、買ったはいいものの、賞味期限を迎えて余ってしまうものは、だいたい白…

八朔
3年前
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【お話11 少しの便利】

バターナイフ。 一人暮らしを始めた時、スプーンで代用できると思ったものの一つだ。 そもそも…

八朔
3年前
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【お話10 さいせんたん】

母親に送ってもらってたどり着いた建物は、古い二階建ての公民館だった。 入口を通りながら、…

八朔
3年前
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【お話09 チームとお昼ご飯

長テーブルの端と端に座って、2人は黙々と栄養を補給する。高瀬は自分で握ったおにぎりの味気…

八朔
3年前
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【お話08 あの日の事】

あの日、初めて降り立った駅。集合の一時間以上も前に着いた知らない街の中で、葵はひとまず食べたくもないサンドイッチを食べていた。 薄い野菜ジュースを啜る。カフェから外を見ると、いつの間にか外は真っ暗になっていた。 こんな遅い時間に面接が入ってしまったことが、悔しくてならない。こんな時間じゃ、審査員はみんな疲れ切ってるだろう。 アピールタイムに話す内容は考えてきたが、これで本当にいいのか分からない。 服だって、もっとかわいい服があったに違いない。 どうしよう、どうしよう。 少しで

【お話07 お揃いと携帯】

「こんにちはぁ、よぉしえぇさぁん」 網戸にした玄関から、吉江を呼ぶ声がする。あの声は志乃…

八朔
3年前
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【お話06 わたしはだぁれ?】

飲むヨーグルトを飲んでおくと酔いにくくなると、先輩から聞いたけど、本当だろうか。 私はコ…

八朔
3年前
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【お話05 星と2人】

星を作る作業といのは、案外と難しい。 細い紙の帯を五角形に結び、余った紙を折りたたむ作業…

八朔
3年前
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【お話 04】占いとお説教

毎朝、テレビで流される数分の占いを、どれくらいの人が信じているだろうか。 ファッション誌…

八朔
3年前
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【お話 03】傘とスカート

あの日、初めて読んだ物語に、ミホもさつきも、魅了されてしまっていた。 傘を持って現れ、家…

八朔
3年前
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【お話 02】朝と光

陽が上る前に家を出た。光にとって、今日は決戦の一日だった。 眠気を払うように、頭を振った…

八朔
3年前
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【お話 01】素知らぬ顔

スニーカーの紐を結び直していると、目の前を横切る猫がいた。耳の端が少し切れている。町ネコだ。本当にこの町は猫が多い。どこにでもいる。 カメラを構えようとした瞬間、逃げられる。 「またかぁ」 叫びたくなる心をぐっと抑えて、呟いた。私はもう、何百回となく、猫に逃げられていた。 最初はインスタに載せるために、猫の写真を撮りにこの町にきた。通っている大学のある市から、電車で30分。ほんの少し遠いけれど、生活範囲内と言って差し支えないこの場所で、猫を撮る。 親に話したら、大学