【お話06 わたしはだぁれ?】
飲むヨーグルトを飲んでおくと酔いにくくなると、先輩から聞いたけど、本当だろうか。
私はコンビニのプライベートブランドのそれをずずずと吸った。甘い、乳製品の味が口に広がる。ほんの少しだけ健康に気を使った気になる。
あっさり飲み終わってしまい、ゴミに困った。道路脇に自販機がある。自販機横の「空き缶」と書かれたゴミ箱に、プラスチックカップを無理やり入れた。
ゴミが落ちたらしい、鈍い音がする。
私は、そういうことをする女になってしまっていた。
夜の街は、私が私ではなくなるから、毎晩怖くて仕方なかったけど、とうとうここまで来てしまったか、とため息をついたのだ。
見上げると月だけが、空に滲むように浮かんでいた。
毎晩、普段なら絶対着ないドレスを着て、メイクをして、私は誰かに成り代わる。いつのまに、高いヒールで走れるようになった。
これ以上何が変わるのか。
本当は何も変わっていないのか。
誰も教えてくれないから、わからない。
鏡の中の自分はもうとうの昔に、すっかり変わっているのだから。
お前はもっとできると、教えてください。