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【エッセイ】有益な話(800字)

いつも役にも立たぬことを書き連ねているので、時には実のある話をしよう。電車によく乗る方必見!

肌寒い日が戻ってきた。三寒四温。寒の戻りである。それも今週いっぱい。もう北風は東欧の彼方に帰って行くことだろう。

さて、今朝も寒かった。通勤の最寄駅構内に豆から挽いて淹れてくれる自販機がある。電車が来るまで少し時間があるのでそれでコーヒーを購入しようと思っていた。

しかし、ネスカフェのその自販機は大塚製薬の自販機に代わっていた。冷たいポカリスエットなど今は要らない。炎天下ならいざ知らず。

そこで私は先日受講した「防火管理者講習会」で講師の消防士が座学の合間に語った雑談の内容を思い出していた・・・

危険物の所で、彼はこう語った。

「先日、知ったんですが電車で持ち込みが禁止されている危険物に興味深いものがありました。このテキストに書いてある危険物はもちろん全て含まれているんですが、蓋のないホットコーヒーっていうのがあったんです。電車は揺れたり急停車することがあるんでこぼれて身体にかかり火傷するからってことですね。面白いと思ったのでご紹介しました」

彼はとても感じのいい青年だった。消防士向きの実直で正義感に溢れた性格が講義の端々に伺われた。ただ、まだどこか話し方がかたかった。人前で話すのは慣れである。もう少し場数を踏めば滑らかに喋れるだろう。でも待てよ。おかしいなぁ。学生時代、演説法の上手かった先生は6年間で数人にしか巡り合っていない。おかしいなぁ。ま、才能も十二分以上に含まれると言うことで。いくら文章を書いても、いくら本を読んでも、永遠に上手くならない人、いつまでも賢くならないで死んでいく人がいるのとちょうど同じだ。

そこでピンと来たのである。この田舎駅でやっと蓋なしのホットコーヒーが危険物って認識が広まって撤去されたんだろうと。

決まりならしょうがない。乗り継ぎ駅のセブンイレブンで蓋付きのホットコーヒーを購入することにした。



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