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シンタックス

聞耳です。今日紹介するのはキャロル・アン・ダフィー (Carol Ann Duffy 1955-) です。現在のイギリスの桂冠詩人であり、マンチェスターメトロポリタン大学で現在もWriting Courseの指導をしている彼女は、同性愛者であることを早くから告白し、愛やセックスをテーマとした詩も数多く生み出しています。以下もまた官能的な詩のひとつです。

Syntax

I want to call you thou, the sound
of the shape of the start
of a kiss – like this – thou –
and to say, after, I love,
thou, I love, thou I love, not
I love you.

Because I so do –
as we say now – I want to say
thee, I adore, I adore thee
and to know in my lips
the syntax of love resides,
and to gaze in thine eyes.

Love’s language starts, stops, starts;
the right words flowing or clothing in the heart.

シンタックス

あなた、の代わりに汝、って言いたい。
声にだす動きは キスのはじまりの
かたち、ほらね、汝
口にするとわかる、愛してる
汝を、愛してる、汝を愛してる、あなたを
愛してる、とはぜんぜん違う。

口にする、それが
当たり前みたいに、声に出して。
汝れ、愛さん、汝れを愛さん
舌に染みいる、愛のシンタックス
汝れの眼を見つめん。

愛語が目覚め、眠り、また目覚め、
求めていた言葉が心を漂い、包みこむ。

*汝れ(な)

*****

汝と呼びたくなる相手はどんな人なのか。なぜかどこか高貴な雰囲気が漂う気がするのは何故だろう。日本もまた古語を使った愛の歌がたくさん編まれた国である。

君がため 惜しからざりし 命さへ 長くもがなと 思ひけるかな
(藤原義孝)

「君がため」の五語はなんと官能的な日本語の響きか。詩の言葉は水平にも垂直にも果てしなく広がっている。

聞耳牡丹

#詩 #散文詩

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