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頭上の鳩

聞耳です。今日紹介するのは凡庸な言葉遣いとテーマだけれど、なんか深い意味が隠されている気がする、ピーター・ヴァン・ライアー (Peter van Lier 1960-) の作品です。そこに在ることを愛とともに眺めている筆者のどこまでも普通な詩を楽しみたい。

Above Me a Dove

Above me a dove in flight. A slight movement in
branches, the rustling
of the leaves is nice. Small clouds, real white ones, drift slowly,
slowly past. Another dove: dove-laden weather.
A child sits in quite tall grass,
beside it a dog with
drooping ears. Make a note of its breathing – quite
quick but entirely
regular -, for example. 

頭上の鳩

ぼくの頭上を飛ぶ鳩。枝の上をすこし動くだけで、
がさごそ揺れる
葉っぱが最高。小さな雲、まじ白い雲、ゆっくり、
ゆっくり漂う。別の鳩。たわわに実った鳩日和。
背の高い草むらに隠れる子ども、
そのかたわらに耳を垂らした犬。
犬の(すごく荒い、でも一定の)息づかいを
書き留めたりする。
たとえばそんな感じ。

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詩の言葉は生き物だ。見るも美しい容姿の詩もいれば、おぞましい悪魔のような言葉群もある。素晴らしい詩人の作品からは息遣いや鼓動が響いてくる。ピーター・ヴァン・ライアーはどんな生き物を飼っているのか。おそらく見た目は道行く雑種犬のようにありふれた存在かもしれない。だがその動きはなんだかヘンテコで愛嬌があって、目が離せない。目立たないし、歴史に名を残さないかもしれないけれど、なんだか気になる存在です。

聞耳牡丹

#詩 #散文詩

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