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【書評】こんなんいかが?

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忘れた頃になんども読み返す愛すべき紙の束。カバーについた手指の脂、紙の匂いと手触り。それはともに過ごした時間の記憶。本はもはや生きもの。
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#しらふで生きる

「装いせよ。我が魂よ」果敢にしてオトコマエな小川洋子と山田詠美。魂が美しくあるには、装いこそ必要。

「装いせよ。我が魂よ」果敢にしてオトコマエな小川洋子と山田詠美。魂が美しくあるには、装いこそ必要。

「文学は懐が深い。テーマにならないものはない」
 作家の小川洋子さんはそう言い切る。それでも自身、苦手な分野があるといいます。
 それが「性・官能」をモチーフとする分野。
 
 なるほど、上品なイメージがある彼女の作品。でもそれとは裏腹に、弟の肉体を密かに慕う姉だったり、妊娠した姉に殺意を抱く妹だったりと、書くテーマは禁断領域に軽々と踏み込んでいます。
 透明感をまとった穏やかな言葉遣いに身を任せ

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町田康「しらふで生きる 大酒飲みの決断」 酒を憎んで人を憎まず。

町田康「しらふで生きる 大酒飲みの決断」 酒を憎んで人を憎まず。

作家・町田康さんは30年大酒飲みを続けてきました。
 その彼が数年前、ふっと酒を絶って思うことを書いたのがこの本。
 脳はアルコールの何を欲するのかということから、「さびしく閉じた」人間の悲哀を語ります。

 つまり、何を持っているか知らんが「自分は大した人間であるはずだ」というカン違い野郎だけがアルコールに走り、また、適応障害や鬱になるという話。

 周りはその「持ちもの」にのみ目がくら

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