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【書評】こんなんいかが?

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忘れた頃になんども読み返す愛すべき紙の束。カバーについた手指の脂、紙の匂いと手触り。それはともに過ごした時間の記憶。本はもはや生きもの。
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2023年6月の記事一覧

「生き心地の良い町」 自殺の最希少地域。そこは幸せでも不幸せでもない町だった。

「生き心地の良い町」 自殺の最希少地域。そこは幸せでも不幸せでもない町だった。

「生き心地の良い町 この自殺率の低さには理由がある」岡檀(おか・まゆみ)/講談社

 自殺希少地域 徳島県南部 海部町(現・海陽町)の調査の旅の記録

 秋田県が自殺率ワーストに返り咲いてしまいました。
 自殺率だけじゃない。
 死亡率自体がトップ。がん死亡率、脳血管疾患死亡率も軒並み1位。
 逆に、婚姻率や出生率は最下位。

 コンクリートジャングル。弱肉強食。隣人が誰かも知らない。そんなイメー

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小川洋子「言葉が存在しない場所で生まれるのが小説」。そこは言葉以前にあったはずの自分の居場所。

小川洋子「言葉が存在しない場所で生まれるのが小説」。そこは言葉以前にあったはずの自分の居場所。

(講演「小説の生まれる場所」の続き)

「言葉」はウソをつくために進化した

 小川洋子さんは小説づくりの取り組みの中で、「言葉」というものの限界に深い思いを寄せていました。
 真理に近づこうと言葉で格闘するとき、ますます真理から遠ざかってしまう。
 なぜこんなにも、言葉というのは使い勝手が悪いのか。
 
 その時、言葉の発生について語る進化生物学の岡ノ谷一夫教授のこんな考察に、小川さんは目を開か

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