ビジネス・デザイナー論。〜Evil Design(悪意あるデザイン)と戦う。〜

社会不安や景気の下降局面には、「弱者救済、支援、応援」をテーマにした数々の取り組みが溢れる。

それらは、人の善意(善か悪かという評価があるわけではなく、純粋に誰かのチカラになりたいというポジティブな思い)から始まるものが大半だと信じている。しかし、こうした情勢に便乗し、事実とは異なるキャンペーンで人心を扇動したり、誰かを非難や攻撃したり、不適切な利益を得ようとする輩も現れるのも現実だ。

コロナに関わるところだけでも、例えば。

◆以前から苦しくてもう閉店予定だったお店が「コロナで困ってます!未来の予約チケット買ってください」とお金だけ集めて、退店費用に充てている場合。

◆実は卸や小売の過剰在庫だったり、原価がほぼタダなのに「生産者が困ってます!」と、生産者支援を謳って売り捌くフードロス活動家や事業者。

◆有名な市場の名前を掲げて販売しているサイトだが、実は全く別の通販会社(市場内の卸や仲卸でもない)がやっていて、市場価格とも乖離した利益を得ている場合。

◆不動産の解約時にあれこれ理由をつけたり、原状回復費用などの名目で「敷金や保証金は返さずに懐に入れるのが当たり前」になっている不動産オーナー。

◆支援を掲げて「コロナで余ってるのを買い取ってやるんだから、30%以上は定価から下げろ」と、安売りさせようとする消費者グループ。

◆全国の皆さんにすぐお届けしますと言っている給付金の申請がものすごい煩雑で時間がかかったり、自治体によっては受付すら始まっていない状況、などなど。

これらは、いずれも
evil design(悪意あるデザイン)」だ。

悪意というのは、自覚的・無自覚的であるかを問わない。

不勉強なために法令に反してしまうことはもちろん、相手にとって誤認や誤解を生みやすい、善意を盾に強要を迫るようなもの、到底実現しないことが分かっているのに過剰な期待を持たせることなど、「使う人・対価を払う人に、結果として不誠実」なものを全て含むのだ。

私たち起業家やビジネス・デザイナーはもちろん、エンジニアもデザイナーも、全てのビジネスパーソンも、この「evil design」に立ち向かわないといけない。

具体的な「悪意のデザイン」には6つほどチェックポイントがある。以下に列挙すると、

①事実誤認の拡大
事実と違う内容を広げてしまう、ミスリードを起こしてしまうこと

②批判・分断などの助長
誰かへの批判、非難、攻撃、対立、分断、抗争を深めるようなこと

③虚偽・詐欺への加担
実態のないことに、寄付や取引の名のもとにお金を集めてしまうこと

④不便の放置・助長
解約・変更が困難な設計や、高齢者や社会的弱者が使えないようなこと

⑤不認識の悪用
ステルス課金、バックグラウンド情報取得、知らぬ間に何かに加担させられるような事態を起こすこと

⑥権利の侵害
なりすましや監視など、人の権利を侵害したり、危機に晒すこと

の6つだ。(もっとあるかも知れないので、evil designを研究してみたい、既に研究している方は是非コンタクトいただきたいです)

誰しもがこれらとは戦わないといけないし、もし会社の上司や顧客からこうした要素を加えて欲しい、というオーダーが来たら、毅然と断る必要がある。

そんな職業倫理を貫いてクビや左遷になったり、取引を打ち切られたりでもしたら困る、という方もいるだろう。
あくまでご参考までだが、僕が他社と契約する場合、①こうした悪意ある依頼や指示を僕が断ったことでの取引の解除や解約はできない旨、②発注側が依頼・支持内容を見直す必要がある旨、③不利益を被った場合には違約金が発生する旨の規定を契約書に明記し、事前に承諾も得るようにしている。

もちろん、自分自身や仲間が作るサービスや発信内容が、このどれかに該当していないかは常にチェックすることも大事だ。

事実誤認や虚偽、権利の侵害などのコンプラやリーガルマターに繋がるようなことを起こしてはいけないのはもちろんだが、「難しい表現や、沢山の記述があることでの分かりにくさ」もevil の入口になり得るし、一方で「パッと見は分かりやすいようだが、正確な記述を端折ったことでの説明不足」もまた同じだ、と思うようにしている。

ビジネスを描いて作る人は、
Stay Honest and Positive」を合言葉にしよう。

冒頭でも書いたが、社会不安や景気後退期には、ややカルト宗教的で、扇情的なプロジェクトやキャンペーンも増える。それらが「evil design」ではないかを見極めながら参加することが、これからのより良い社会の実現に大切なことになるだろう。

P.S..
某携帯会社の料金プランやサービス説明とか、u○er eatsのサービス設計は、僕の中ではevilです(笑)。では〜。

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