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鮮やかなSUN!「光栄菊 Sunburst(サンバースト)」

こんにちは、ボンです。

今日の酒はこちら!!

光栄菊酒造㈱「光栄菊 Sunburst(サンバースト)」

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アルコール:13度
精米歩合:不明
酵母:不明
原料米品種:不明

2006年に一度は廃業しましたが、現在のオーナーさんが引き継ぎ2019年に復活を果たした佐賀県の蔵元さんです。詳しくはSAKETIMESさんに取材記事がありましたので、下記リンクをご確認ください。

光栄菊さん、最近めちゃくちゃ話題になってますよねー。ひねくれものの自覚症状しかない僕なので、普段は「話題になってるから」などという理由で飛びつくことはないのですが、こちらの蔵元さんについては興味が勝ったので4種類も購入してしまいました。購入先は当社でもお世話になっている、奈良県天理市の登酒店様です!ありがとうございますm(__)m

「興味が勝った」と書きましたが、具体的にどこに興味を持ったのか、2つほど説明させていただきますね。

次の流行?「低アル原酒」

日本酒業界はこれまで、様々な酒質が流行として生まれてきました。淡麗辛口ブーム、吟醸ブームがその最たる例かと思いますが、次に来るだろうと言われているのが「低アルコール原酒」です。

これまで原酒と言えば17~18度というイメージばかりだったと思います。逆に13、14度というのは酒を搾ったあとに加水したものが一般的だったので、「水で薄めてかさ増ししてるんでしょ?(半笑い)」みたいな、極端な悪印象を持っている人も少なくないんじゃないかと。(一応ここでしっかり否定しておきますが、「加水=かさ増し」みたいな考えはメーカーは誰も持っていません)

そんな従来の固定概念を覆しつつあるのが、「低アルコール原酒」という新ジャンルです。当社が「平井六右衛門 心星」や夏季限定「菊の司 季楽 純米爽酒 ひまわり」で取り組んでいる酒質でもあります。

造りや中身を詳しく説明しちゃうとキリがないのですが、超大雑把に言えば、「重くない飲み口なのに厚い味幅」が低アル原酒の特徴ではないでしょうか。仕様上、多少の甘みはほぼ確実に伴ってくるので、日本酒ビギナーの方々にもウケが良いと思います。

そんな低アル原酒が現在注目を集めている理由。様々な考察があると思いますが、「RTD天国」とも言われる日本のアルコール市場とマッチした商品特性が大きな要因であると自分は思っています。

RTDは「Ready to Drink」の略で、近年の酒類業界では「開栓してすぐ飲める低アルコール飲料」を狭義として定めているようです。缶チューハイやハイボールが該当しますかね。スミノフやジーマみたいな瓶入りのRTDも存在します。

日本酒どころかビールですらここらへんの商品に圧倒されている昨今の市場。それらが推される理由を色々考えてみましたが、結局「安くてさっさと酔えるお手軽さ」が大きい要因ではないでしょうか。僕の周りがすべてではありませんが、学生時代にRTD商品を飲みながら友人たちと話したときも、みんなこの類の長所を上げていた記憶があります。ついでに日本酒はめんどくさいよね、とも言われました…。

日本酒業界では宝酒造さんの「澪」や、一ノ蔵さんの「すず音」など、「低アルコール×スパークリング」商品が新規ユーザーの開拓に多大なる貢献をしていますが、RTDとそういった商品のターゲットイメージは共通項が多々あると思っています。

やはり手軽さ、ざっくり言えば「敷居の低さ」みたいな部分が長所ですよね。敷居というのは飲料としての特性だけでなく、ボトルデザインや容量、もしかしたらネーミングまで影響があるかもしれません。とにかく「手に取りやすい」という超初っ端のハードルがめちゃくちゃ低いわけです。

そういったユーザー層が次に踏み込むのが、「低アルコール原酒」ではないでしょうか。日本酒らしさをしっかり感じさせつつ、飲みやすさや直感的においしいと思える、複雑ではない味わいも提案できる商品です。そこに着目し全商品がアルコール14度以下という商品構成は、僭越ながら先進的であり挑戦的であるなあと思うのです。

スペックがほぼ不明

調べていただければわかるんですけど、光栄菊さんのお酒はスペックが非公開になっています。商品によっては原料米だけ公開されているものもあるようですが、基本的にわかるのはアルコール度数のみという徹底ぶり。

当社でもスポット商品の「菊の司 非公開」を筆頭に、平井六右衛門銘柄における特定名称非表示など、「情報にとらわれない価値提案」に取り組んでいる最中ですので、ほとんどの定番商品でこのような取り組みをしている光栄菊さんは非常に前衛的だと感じます。

味の感想

前置きが長くなりすぎたんで、本題の感想について書いていきます!

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今回のSunburstは、「酸味に特化した酒」がテーマとのこと。Sunと酸をかけているのかな…。それがバーストしている…。どんなだろう…。と思いながら飲んでみると、酸自体、とても優しい風合いに感じられました。

たしかにこの酒の特徴は酸だと思いますが、バーストから連想されるような炸裂感ではなく、ビビッドな、鮮やかなスッと入る酸味です。

全体的にはまだ伸びる味わいという印象。伸びるというのは熟感的な意味合いでですね。甘がそこまで目立たずドライに酸を楽しめる酒なので、僕は好きですけど人によっては酸っ辛く感じるかもしれません。そういう人にはぜひ伸ばしてから試してみてもらいたい。

温度については無難に冷酒で楽しむのが一番だと思います。

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燗も通常運転で試しましたが、僕の技量不足か…。生燗恒例、初っ端の火入れをするとありえんぐらいガスが泡になって浮いてきます。この酒のフレッシュ感、プチシュワ感の証拠ですね~。

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上澄みだけすくって飲むと酸が浮いて感じられたので、冷水でしめてからまたちょい上げで飲むと若干丸くなる印象。ただ冷酒で飲んだ方が明らかにおいしいので、これはわざわざ燗つけて難しくする必要はないかな…という感想です。

この日は晩飯に焼魚も肉も出てきたので色々合わせてみましたが、食中酒として良い酒だと思いました。単体で飲むというよりは、料理と補完しあってよりおいしく飲めるお酒なので、ぜひ様々な場面で試してもらいたいと思います。

最後にもう一度低アル原酒について

最近思うんですけど、日本酒における「低アル」。これ、一般的なイメージとはかなり乖離がありますよね。RTDにおける低アルは9度以下を指しますが、日本酒においては14度以下であれば「低アル」と言われます。

日本酒の醸造過程を考えれば14度以下を低アルと呼ぶこと自体、なにも違和感はないと個人的に思っていますが、じゃあいざ売っていこうとなった時に、「この酒は13、14度の日本酒です!低アルで飲みやすいです!」というプロモーションが効果があるのか。正直日本酒について詳しくない人はまったくピンとこないと思います。

それを考えると低アル原酒というジャンルが、実は玄人向けなのではないかという可能性が浮上します。13、14度に日本酒に興味を持つのは初心者ではなく日本酒をある程度飲んできたユーザー。こちらの方がしっくり来る気がしませんか?

ただ低アル原酒自体、新規ユーザーを今まで以上に広げられる可能性を秘めたジャンルであると思います。じゃあそこにどう訴求していくのか。

今まで以上に既存ユーザーの口コミが鍵を握っているような気がしていますが、プレイヤーとしてはペルソナ、ターゲットイメージという要素をより重視したブランディングが必要になってくるはずです。造った酒→誰に売るか、ではなく、誰に売るか→どういう酒を造るか。業界として考えていかなければならないと強く感じます。

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