醸造機械の会社に転職した話

こんにちは、ひらい髭です。だいぶnoteの更新をサボっている間にいろいろありましたので、近況報告として今日は書いていきます。若干長くなるかもしれませんが、最後までお読みいただければ幸いです。

まず、2021年12月末をもって岩手県盛岡市の菊の司酒造を退職しました。5年という短い期間でしたが、たくさんのお取引先や関係者様、日本酒愛好家の方々、同業の諸先輩方に可愛がっていただき本当に感謝しかなく、とても濃密な経験をさせていただきました。

そして本来ならばお世話になった皆様全員に直接御礼をお伝えしなければならなかったところ、諸事情あり多くの方にご挨拶できずにいます。在職時を含め重ねたご無礼について、この場ではありますがお詫び申し上げます。時期がきたらご挨拶に伺いたいと思っておりますので、何卒ご理解いただけますと幸甚に存じます。

転職先について

さて、真面目な文章も苦手なので、ここからは若干砕いた感じで進ませてもらいます。

題名にも書いていますが酒蔵を退職後、今年の2月から広島県広島市の(有)キクプランドゥー(以下KPD)という、醸造機械をメインに取り扱う会社に転職をしました。日本酒クラスターの皆様は、昨年?一昨年?頃に「疑似米布」がTwitterでちょっとした話題になっていたのでご存知かもしれません。

何を隠そう、僕も疑似米でKPDを知った一人です。蔵では釜屋(原料米を蒸す担当)をしていたので、「こんなものがあるのか!!!」と衝撃を受けたことは今でも鮮明に思い出します。

話が逸れてしまうので超簡単に解説すると、「疑似米」はお米を蒸す際にムラなく仕上がるよう、原料米の下に敷くダミーのお米です。一般的にビーズのようなものをネットに入れて敷き詰めますが、疑似米布はその名の通り布がダミー米の役目を果たします。利点としては、

・重くないから扱いやすい
・簡単に洗濯できるので衛生的
・コンタミのリスクを減少
・蒸気圧が一定になるのでビーズよりも蒸かしムラが少ない

などが挙げられ、釜屋界隈の方ならほぼ全員の方が「なにこれ革命的!」と思ったことでしょう。

KPDに決めた理由

転職を考え始めた際、引き続き「日本酒業界で仕事をしよう」とは決めていたので、その中で酒蔵・酒販店・飲食店・商社…とあらゆる方向で考えました。含みのある言い方にはなりますが、日本酒業界はいろんな意味で「なかなか大変」な業界で、消費が落ちているのはもちろん担い手不足も深刻な課題です。斜陽産業だと言う方も多いでしょう。

ですが僕は文字通り「日本酒に育てられた人間」なので、ずっとこの業界をなんとかしたいと思い続け仕事をしてきました。それにただ需要がなくなって死んでいく飲み物だとも思っていない、むしろ可能性しか感じていません。

そんな日本酒業界人として生き続けようと決めた自分にとって最善の選択肢は何か。酒を造る・売ることについてもまだまだ勉強しなければならないので、またそこに身を置くことも可能性としてはありましたが、何週間か悩みに悩んだ結果「違う視点から日本酒業界を見られて貢献できる仕事がしたい」という結論になりました。

そして「なんか痒い所に手が届く商品を造ってる会社があったな」と、パッと思い浮かんだのがそう、KPDでした。WEBページを検索したらなんと求人があるではないですか。

これは運命だと思い年末のクソ忙しい時期に恐縮しながらも、「岩手の蔵で働いているんですけど…」という怪電話をかけさせてもらうと、「岩手⁉」「広島に来るの⁉」と驚かれつつ、面接を経て採用をいただきました。冷静に考えると意味のわからない怖い電話だったと思うので、ちゃんと話を聞いていただき感謝しかありません。

盛岡から広島へ…

2月のはじめ、マイ軽自動車に荷物を積み広島へ出発しました。基本怠惰な人間ですので、あの時期はやたらアクティブさに満ち溢れ自分ではないような気持ち悪さを感じます…(笑)

盛岡から広島という、そう車で移動することのない距離を運転しましたが、どんどん南へ西へ進むなかで変化していく車窓の風景は、一つ一つが人生で忘れることのないようなものでした。

町を通過するたびに「ここにはあの酒蔵さんがあるなあ」と考えながら運転していてふと思ったのは、その酒蔵ごとに、その地酒を売って商売をしてきた酒販店や飲食店、そして愛飲している消費者が数多くいるということです。

酒蔵は長らく地方の産業を支えてきた一部であったと思いますが、それらがただただ波に飲み込まれてなくなっていくことが如何に損失であるか、改めて考えさせられました。いったん酒を造るという意味でのプレイヤーではなくなった自分がどうやって貢献していくのか。これはしばらくの間考えるテーマとなりそうです。

ちなみに先日SAKETIMESさんで掲載されていた新政・佐藤社長のインタビューが、この先をいった内容を話されていて素晴らしいものでした。未読の方はぜひご一読を。

興味ある方!【半醸半Do】してみませんか?

KPDで働き始めてまだ2か月弱の自分は、まだなにかを語れるほどの人間ではありません。工具や部品の名前や扱いを覚えるところから始まり、様々な工事・工程のやり方や仕組み・意味を理解することに毎日必死です。

そんな中で多くの現場に連れて行っていただいたり、大事な仕事を任せていただいているのは本当に感謝しかありません。ど素人の自分がついていくのは足手纏いもいい所ですが、それでも先輩方が丁寧に辛抱強く教えてくれます。本当にいい会社に入らせてもらったなあと実感し、早く戦力にならないとと燃える毎日を過ごしています。

余談ですが先輩方は本当にキャラが濃い方ばかりで楽しい会社です。僕も濃い方らしいですが、灰汁で言えば僕がごぼうで先輩方がどんぐりぐらい濃いです。(どんぐりは一カ月流水にさらさないと食べられないぐらい灰汁が強い。例えがわかりづらい)

そんな楽しくもたしかな経験ができるKPDでは、現在技術職のスタッフを募集しています!(唐突な宣伝)

詳しくは弊社社長の上記ツイートをチェックしてもらえればと思いますが、酒蔵には一人は必ず配管や電気をいじれる人がいた方が良いと昔から言われていますよね?簡単に言えばそういう人材を育てて業界に貢献しよう!という取り組みです。

既にそういった方々が勤務していた実績もある上、僕の他にも酒蔵に勤めていた先輩が在職しており、勉強するにはかなりいい環境なんじゃないかと思います!興味ある方、ぜひ一緒に働きましょう。ついでに酒を飲みましょう。

最後に

広島に来た当初は環境に馴染めるか割と不安だったんですが、気候も人もあたたかくとてもアットホームな街だなあと思っています。

広島市北部に「可部」という街があるのですが、先日そこのおでん屋さんに連れて行ってもらった際には、なんと同郷の盛岡出身の常連さんにお会いすることができました。人との御縁が益々つながっていきそうな予感です。ワクワク。

会社にも業界にも貢献できるように勉強に励みつつ、広島ライフを満喫できればなと思います。末筆ながら最後までお読みいただきありがとうございました。

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