見出し画像

母との時間④ お誕生日おめでとう

今日は母の誕生日。
小さなシクラメンを買って、実家に向かった。

お誕生日おめでとう!と言うと、案の定、あらそうだったっけと驚いて、81歳になったんだよと言うと、えええー!とさらに驚いて、もう年を取るのはやめたのよと笑っていた。
どうやら、感覚的には60代で止まっているらしい。
ま、気が若いのはいいことだし、そのうち同い年になっちゃうねと言って私も笑った。

母は花が大好きで、この時期には家中にシクラメンの鉢がいくつも並んでいたのだが、最近では室内に花を飾ることもなくなっていた。
シクラメンの鉢を手渡すと、きれいね〜と目を細め、ありがとうと嬉しそうに窓辺に飾った。
それでも、花の名前は思い出せない。
あれだけいろいろな花を知っていた人だけど、最近は花の名前を言ってもピンとこないらしい。

名前を思い出さなくても、花が好きという気持ちは覚えているし、やっぱりお花があるといいねと笑う顔は幸せそうだ。
もうそれだけで十分だ、と思う。

帰りには、「うちの庭の木になったのよ」といって、きれいな柿の実をひとつお土産に持たせてくれた。
60代気分の母は、思い立つと突然踏み台に乗って植木を切り始めたりするので、まさかまた無理をしたんじゃないかと心配になったが、口には出さなかった。
大丈夫なら、それでいいや。

こういう楽しみ方ができているうちは、一人暮らしを続けさせてあげよう。
ツヤツヤの柿の実を手にしながら、改めてそう思った。

来年もまた、ここでお祝いしようね。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?