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たましいの場所

ライブに向けて部屋で歌を歌っていたら、ふと、早川義夫の「歌が伝わるというより、歌う人間が伝わってこなければ駄目なんだ」という言葉が浮かんできた。とっさに「躁と鬱の間で」「MyR&R」「音楽」をギターでなんとなくつまびいて歌ってみる。

ハタチで上京して最初に衝撃を受けたのは早川義夫だった。音楽に対して真摯で、切実で、まっすぐだった。当時のぼくはこんな声は出せないな、と思っていた。それが今、少しだけ近づいてるのを感じる。何が変わったのかといえば、歌に抑揚が出た。20代の頃は歌声にまったく抑揚がなく、ペラペラだった。当然である。なにも人生経験のない若僧に、こんな声が出せるはずがない。
生まれ持った声に、生き方や経験が少しずつ重なり、抑揚が乗っていく。それは練習したからといってできるものでもないと思う。その人その人の声に、その人の人生が乗る。それは嘘がつけない。嘘の声はバレる。無理してつくった声は見破られる。

ぼくは別に音楽家でもないのに、早川義夫のことを思うと背筋が正される。頑固で、弱くて、スケベで、だらしないすべてを晒している。素敵である。かっこつけなくても自分に嘘をつかないで素直な人は自然とかっこいい。あんな風に力まずに歳を取りたい。

明日ぼくは東京へ行く。これまで何度も読んできた早川義夫著「たましいの場所」を携えて。

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