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GOOD BYE

「Good bye」と聞くと自動的に「グッド・バイ」と変換されて
かの小説家を思い出す。

彼は本気で女と心中するつもりだったのか?
いつものように引き返すつもりでいたが
本気の女がそうはさせてくれず
そのまま命を落としてしまったのではないか?

そんな話を自然とできる相手を欲しているように思う。
日本文学、とりわけ、近代文学が好きなのだ。

今とは時代背景も違う半世紀以上前に書かれた小説など読んで何か得るものなどあるのか?と
真顔で聞かれたことがある。

私はそういうことにロマンを感じる性質であり
文学は当時の思想や生活を知ることができる貴重な資料であると思っている。
自分の先祖達がどんな時代を生き抜いてきたのかも、単純に興味がある。



別れ際に
去り行く背中に向けて「グッド・バイ」と
自分にしか聞こえないように小さく呟いたことがある。
もうこれが会うのもきっと最後だなと思ったから。

そもそも
会う理由もない関係性になっていた。

関係の修復を期待していたのか?
いや…多分期待はしていなかった
諦めて終わらせるしかないと思っていた

最後の思い出作りだったのかもしれない。

そんなに簡単に好きだった人を忘れられるわけもないじゃない?
少しは余韻にひたってもいいんじゃない?

そう思っていたのだけど

これ以上会ったら
完全に心が壊れてしまうと思った。

学生時代慣れ親しんでいたはずの街並みに
どこか見知らぬ街にいるかのような違和感を覚え
雑踏の中を歩いているのに
すべての音が掻き消され
すれ違う人はスローモーションのように
やけにゆっくり鮮明に見えていた。

帰路につくために利用する電車のホームに
このまま行っては駄目だと思った。
感情がぐらつきすぎている
地面を足裏で踏みしめている感覚がない
何か自分がいけない判断をしてしまう気がした。

しばらくあてもなく歩き回っていた。
どこをどう歩いたのかも記憶がない。

本当にそれが最後の別れになった。
今世でも
来世でも
来来世でも
未来永劫もう会うことはないでしょう。


時折あの時の不思議な感覚を夢に見ることがある。
うまく呼吸ができない息苦しさで目が覚めて
暗闇の中で思う
私は一人なのだ、と。

情報と欲が溢れ
多くの人が集まる環境ほど
疎外感で自分の孤独が浮かび上がる。


グッド・バイ…
最期の別れの言葉


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