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"事実婚"を決めたとき、僕のまわりで起こったこと

人間って面白い。

宗教、言語、家族などの複雑な要因によって、ものの見方や考え方、すなわち「価値観」が変化する。

誰一人「全く同じ」価値観を持っている人はいなくて、だからこそ誰からも学ぶところがある。

たとえ相手の言っていることが宇宙語に聞こえたとしても、「自分には理解できない思考だ」ということを理解するだけで学びになる。

今回は、人生で最も「人間の価値観」の違いを感じた出来事の1つである、「事実婚」を取り巻く体験についてまとめます。

事実婚、はじめました

令和元年の11月11日、僕たちは"事実婚"という意思決定をし、「世帯主」「妻(未届)」という関係になりました。

ちなみに、事実婚の定義について勘違いしている方もいるので、念の為に掲載。

事実婚(じじつこん)とは、婚姻事実関係一般を意味する概念[1]。「事実婚」の概念は多義的に用いられ、婚姻の成立方式としての「事実婚」は「無式婚」ともいい要式婚(形式婚)と対置される概念であるが[1][2]、通常、日本では「事実婚」は法律婚(届出婚)に対する概念として用いられている[1][2]。したがって、事実婚は広義には「内縁」の同義語・類義語としても用いられるが[3][4]、講学上において「事実婚」という概念を用いる場合には、特に当事者間の主体的・意図的な選択によって婚姻届を出さないまま共同生活を営む場合を指すとし、届出を出すことができないような社会的要因がある場合をも含む「内縁」とは異なる概念として区別されて用いられることが多い[5][6]。この点を強調して「選択的事実婚」[7]あるいは「自発的内縁」[8]などと呼ばれることもある。
※wikipediaより

通常、2年間の同居生活を続けると「内縁」と言って、「これは結婚しているようなものだよね、正式な届けは出てないけど」という扱いに(世間的には)なります。

一方、僕たちは"事実婚"という選択を主体的に行う意思決定をしているので、「選択的事実婚」に当たります。

ちなみに、主体的に意思決定したってどう証明できるの?って話なんですが、以下4ステップで完了です。

①近くの役所(または出張所)に行く
②住民票異動届を書き、パートナーと住民票を一緒にする
③その際、続柄を「世帯主」「妻(未届)」と記載する
④提出・受理される

住民票の写しを持っていけば夫婦関係と同義の関係だと証明できるので、家族割引などが法律婚と同じように受けられます。
※まだ理解浸透が進んでいないので、すべてが認められるとは限りません。

最近知ったのですが、事実婚では全国的には認められていない法律婚のメリットも、自治体によっては一部認めてくれているところもあります。

ようやく日本も制度が追いついてきたか、としみじみ感じます。

なぜ事実婚なの?

僕は大学の専攻が社会学で、卒業論文のテーマが「世界の結婚制度と価値観の比較」であるくらい、結婚制度には関心があります。

というか、「何が人を動かすのか」というテーマに関心があるんですよね。だからこそマーケティングを生業としていたりします。

で、「なぜ僕は事実婚を選ぶのか」を考えたところ、大きくは「左脳的な理由(合理性・メリット)」と「右脳的な理由(感情)」の2つで説明できるのかなと思いました。

「左脳的な理由(合理性・メリット)」

法律婚と事実婚の大きな違いは3つと(素人目には)思っています。

①子どもに関すること
②扶養に関すること
③相続に関すること

今回は事実婚の解説ではないですし、専門家でもないのでさくっとまとめますが…

①について
子どもが婚外子となり、母親の戸籍に入ることになる(父親は空欄)。

②について
税法上の扶養関係には該当しないので、所得税の配偶者控除などは受けられない。
ただし、社会保険上の扶養には該当するので、アルバイトなどで年収130万円未満の収入なら控除される。

③について
生前贈与または遺言状を書かない限り、遺産相続の権利がない。
また、これらを用意しても相続税の軽減措置は受けられない。


ということで、

・子どもをつくる予定がなく
・どちらかが家庭に入る予定もなく
・財産のこととかは後で考えればよくね?

というスタンスの僕たちには、籍を入れる理由がないのです。

かと言って内縁状態では社会的に受けられないメリットがあるため、事実婚を選択したという流れです。

「右脳的な理由(感情)」

メリットで語ると、「おい、結婚はメリットでは語れないんだよ。メリットを超えたところにあるものが結婚というものなんだ」勢が出てくるので、右脳的な理由にも触れます。

右脳的な理由としては男女それぞれの視点があります。

<女性視点>
・姓を変えたくない

相手はひとりっ子なので家族に対する帰属意識が強く、家族仲も良好です。姓を変えることで家族と離別してしまう感覚が嫌だったのでしょう。

<男性視点>
・相手との将来に一定の責任を持ちたい

内縁状態は「付き合っている状態」と大きく変わりないわけで、相手側のご家族からしてみたら、娘を都合よく利用してのらりくらりしてるのではないかと不安に思われる懸念があります。

自分としてはそんなつもりは一切ないのですが、それを行動として示すことで、ご家族を安心させたかったという想いがあります。

事実婚状態で浮気したり、精神的苦痛が与えられた場合は慰謝料の請求もできますしね。

そもそも僕は現時点で経営者であり、経営に全力を注ぎたいので、やたらパワーを使う恋愛市場に再参戦したくないんですよね。

だから、これくらいの縛りがあっても問題なく、むしろ好都合だったわけです。

<両視点>
・「嫁」「奥さん」って立場って何なの?

僕は相手のことを「1人の人間」として一緒にいたいなと思っているわけで、「家」がどうこうというのはまた別の話です。

僕は相手のことを「家の女」だとも、「奥にいる人」だとも考えないし、それは向こうも同じ。

独立した個人として、家のことは家の人が責任持ちましょう。何かあったら協力するけどね。

これくらいの関係性が心地よかった、というところが1つあります。

実際、「家の女」にまで関係が近づかないことで、お互いのプライベートや金遣いなどに過度に干渉することもなく、当たり前のことでも毎回きちんと感謝し、良好な生活が送れていると自負しています。

・そもそも法律婚「しなきゃならない」流れって何なの?

これは僕たちの間で強く認識しているところなのですが、「結婚=幸せ」「結婚=必ず通る道」みたいな流れを無思考に強要されている感じ、怖くない?ということです。

結婚って間違いなく大きなライフイベントの1つですし、アラサーの話題の中心が結婚になることはいいんです。アラフィフの話題の中心が否が応でも健康になるのと同じようなものですし。

ただ、既婚や婚約予定=Good、未婚=Bad、みたいな雰囲気で話されるのに、宗教じみた怖さを感じます。

僕たち共通の価値観として、「(主体的に意思決定できるレベルで)自由であること」が最上位にある、ということがあります。

自分が自由に基づいて意思決定した結果なら、それがいちばん幸せじゃないか。

それを、よくわからない圧力に意思決定「させられて」不自由を享受「させられる」のは望むところじゃない。

もちろん、結婚そのものを否定するわけではありません。結婚のメリットを享受できて、デメリットをデメリットと感じない方が大多数だからこうなるわけで。

僕たちの価値観はそれを「不自由」と捉えてしまった。それだけの話です。

事実婚に対するまわりの4種類の反応パターン

事実婚を伝えたときの反応パターンは大別して4種類でした。

①事実婚賛成派
②事実婚という「事象」への好奇心が強い中立派
③事実婚を「理解しよう」とはしてくれる内心は法律婚派
④法律婚至上主義派

結論から言うと④との問答に決着がついていないのですが、文章に落とすことで理解を深めていければと思っています。

①事実婚賛成派

体感値、全体の5%くらいです。僕がベンチャー畑だからかもしれませんが、ベンチャーや経営者界隈に賛成派や、実際に事実婚している方が多い印象です。

最近だと、女性どうしで事実婚して、2人でウエディングドレス着て結婚式するカップルの話や、20年間事実婚を続けてきたが、海外でビジネス展開する際にビザの関係で結婚が必要になったカップルなど、面白い話をいくつか聞きました。

個人的に、賛成派の方にはどんどんこういった事例を話してもらって、肩身が狭い事実婚派の後押しをしてあげて欲しいなと思ったりします。

② 事実婚という「事象」への好奇心が強い中立派

体感値、全体の15%くらいです。実際に選択的事実婚をまわりでしているケースがほとんどないため、どちらかに意見が寄ることはありませんが、フラットな目線で話を聞いてくれます。

メリット・デメリットをさくっと話すと、逆視点も含めた忌憚ない意見をくれてありがたいです。

法律婚至上主義の人と喧嘩になった場合はこの層の人に間に入ってもらえるとスムーズかもしれません。

③事実婚を「理解しよう」とはしてくれる内心は法律婚派

体感値、全体の50〜60%くらいです。これは既婚の友人層に多い気がしますね。

ただ、この中の2割くらい、すなわち全体の10%くらいは、「よくわからないもの」に対する抵抗があるだけで、きちんと説明すると①②に変化するケースもあります。

残りは一応ふむふむとは聞いてくれるんですが、声のトーンでわかります。

ちょっと寂しい気持ちはありつつ、これはこれで価値観なんだから仕方がないよなと思っています。

③層の意見の中で最も多いのが、
・子ども欲しくないってどういうこと?

という質問なんですが、僕はいま立ち上げている事業と社内メンバーが子どもみたいなもので、じゃあ事業を見なくても良くなったら子どもが欲しいのかと言うと、次の事業作りたいんですよね。

次の事業は海外が絡む可能性ありますし(…というか既に一部絡んでますし)、そうするとプライベートが大変になるので当分いいかなーって感じです。

だから、事業と子育てを両立している経営者、特に女性経営者は尊敬しかありません。

もし10年くらい経って僕が急に子ども欲しくなったとしても、きっと相手は別の理由で欲しくないですし、もしそこで価値観の違いがどうしようもなくなったらお別れするのでしょう。

そこは予め合意してますし、事実婚なら解消しても未届けなので相手に✖︎をつけることもなく、再婚期間を待つ必要もありません。ここもメリットかなぁと考えています。

さて、問題は④です。④について特に困っているので、ここで章立てします。

事実婚が理解できない層はどんな背景があるのか

④法律婚至上主義派

体感値、全体の20〜30%です。50代以上の親世代に多い印象、というか、うちの親には大反対されて全面戦争になりました。

言い分は冷静に考えてもよくわからないので解釈を入れてまとめますが、

・世間体
息子が結婚したという幸せをアピールしたい

・常識
まわりの真っ当な人は結婚してるんだから、息子も真っ当なら結婚すべき

・中途半端
独身、既婚は0か1かみたいな選択なのに、0.5地点にある事実婚みたいな中途半端なことはするな、責任がない

・孫の顔が見たい
家が子どもによって続くことが自分の幸せ

・相手への不満
そもそも結婚しないことを良しとする相手もおかしい、そんな子と一緒になるな

・女性の役割意識
女は男に尽くすもので、男にコミットしてない、常に家にいなくてもいい、みたいな状態を婚姻関係とは認めない

この6つくらいのようです。

世間体:そもそもそんな世間との関わりないやんけ
常識:僕の常識は違うんです
中途半端:僕たちにとってはベストな解なんです
孫の顔:すまん、当事者の幸せはそこじゃない
相手への不満:いや、それなら相手ではなく僕を責めるべき
役割意識:「家」ちゃうねん

と真っ向から反論するも聞く耳なし。しまいには別れるか法律婚を選べ、さもなくば縁を切るとまで言われ、困ってしまいました。

親の中では、「息子は常識はずれでありえない意思決定をしている人」、相手は「息子の頭をおかしくさせてしまった張本人」が前提となっており、全く話が噛み合いません。

日本古来の「家制度」「恥の文化」あたりが裏目に出ちゃってる感じですね。

近い関係の人のアドバイスとしては3つあって、

①時間が解決してくれるでしょ派
②自分が悪かったと一回折れて懐柔する「損して得取れ」派
③もう大人なんだから無視で問題ない派

なんですが、②に関しては相手の人格否定をされた時点で完全に折れたくなくなってしまい、③も煮えきらないまま年を取るのもやだなぁと思っているので、今は消去法的に①を選んでいる状態です。

僕も人並みに親孝行したいと思っているので、もし良い案があったら教えてもらえると嬉しいです。

婚姻制度の未来予想図

ここからは、あえて事実婚を選んだ僕が、将来的に婚姻制度をめぐってこんな話が出てくるのではないか、と素人目線で勝手に憶測している内容についてお話します。

・事実婚という選択肢を「一般的に」取れるまでは10年かかる

事実婚に関しては3年くらい前から話題になりはじめていて、この3年でごく一部の自治体が配慮してくれるようになった、くらいのスピード感です。

制度が普及し始めるまでに5〜6年、制度が認知されて普通に使われるまでは10年くらいかかるだろうなぁ、という感覚です。

ちなみに、2016年の統計によると、婚外子の割合は日本が2%程度であるのに対し、一番高い国であるチリで72%、中央値が45~46%でした。

ここまで圧倒的に低いとは…とびっくりしますね。

・ポリアモリーを主張する人が増える

事実婚と言うとLGBTのイメージがあったりしますが、ここにポリアモリーが入ってくると予想します。

ポリアモリーとは、複数の人を愛し、パートナーシップを結ばんとする嗜好性の人を指します。まあ自然界で1人の相手とパートナーシップを結び続けるのって少数派ですし。

そのうち、ポリアモリーの男女2人ずつがパートナーシップを結びたい場合どうするの?なんて議論もあるのかな?

中には、ポリアモリーという言葉を傘に、平気で浮気をする、「ファッションポリアモリー」みたいな悪い奴も出てくるかもしれません。

・キャリア意識が強い人ほど契約婚も選択肢に入るようになる

婚姻解消が容易にできることによって、「そもそも人生のフェーズによって価値観変わるんだから、そのタイミングで相手が変わったって仕方なくね?」と考える人も出てくるでしょう。

そうなると、「起業してから10年間だけのパートナーシップ関係。継続するかどうかは10年後に決める」みたいなこともあるかもしれません。

また、前のポリアモリーに近い話になりますが、常に一緒にいるのは特定の相手だが、性関係はなし、そこだけはお互いに他の相手がいても良いものとする…みたいな契約結婚をされているケースも聞いたことがあります。

事実婚の理解と社会的地位の向上が進むといいなーってお話でした

三十路おっさんの一筆書きでしたが、ここまでご覧頂いてありがとうございました。

僕に世の中を変えられるようなインパクトはまだありませんが、こういう文章1つを通じてでも事実婚に関する理解が深まったのであれば幸いです。

婚姻まわりにはまだ市場がカバーしきれていないニーズがあると思っているのですが、いずれ事業として関わってみたいなぁと考えています。

まさにこの分野でチャレンジされようと考えられている方、マーケティングの知見ならお手伝いできることもあるかと思うので、お気軽にお声がけください!

また、婚姻周りの価値観についてはもっと学んでみたいので、こういう考えもある、という意見などありましたら、ぜひコメント頂けますと幸いです。

※一筆書きで構成めちゃくちゃなところもあると思うので、追記予定です。

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