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ありがとカレー

今日は死後と(仕事ですよ~。いきなりこんな変換てありか!?)が早く終わった。
車の助手席に乗せた、まっかなトマト3つととサラダ菜一株。どちらも村内の友人知人からもらったものだ。それを、ちょっと離れた友人宅にお福分けに行くこと決定。

窓は大きく開けておいたが、雨が降り込まなくてよかったものの、逆に外気温が32度にもなり、車内はたいへんなことになっていた。
トマトも菜っ葉も日に照らされ、さわれば温かくなっている!
しかしもともと新鮮だったことと水浴びをさせてきたことが幸いし、ぐったりはしていなかった。

友人に電話。在宅を確認。彼女の住まいは、勝手に入って勝手にものを置いて来ることのできないマンションで、そこに引っ越して以来、野菜を気楽に届けることが、むずかしくなってしまった。

わたしより10歳年上の彼女は4月に夫君を亡くした。1年間の闘病を寄り添って支え、看取ったのだった。
余命を知らされていたご主人は、家族とともに写真館にでかけて遺影を撮り、集合写真を撮り、死後の連絡先一覧を作成し、樹木葬のだんどりを整え、お別れ会で配布するリーフレットのコメントを書き、家族に囲まれて逝った。
病院から車で自宅に帰る際に、桜が満開の元職場をまわったと聞き、胸が詰まった。

緑の風が吹き込むマンションの5階、さっぱりと散髪をし、鶯色のスーツを着たダンディな姿の遺影に、梅の花の香りの線香を手向けさせてもらった。

友人は現在一人住まいで、車を持たないため、家にいることが多い。
今日は朝からカレーを作ったという。3時4時がランチタイムになるわたしは、いつもより早いお昼をご馳走になった。

いや~それがおいしいのなんの!
彼女は昔から料理上手だったが、カレーは初めてだ。見た目からしておいしそう。
写真に撮ってもいい?ときくと、じゃあもっと体裁よくするからと、サラダが出て来た。

薬味のらっきょうは、去年自分で漬けたものとのこと。ふだんわたしは自らすすんでらっきょうを食べることはないが、これは味がなじんで、まさに「ピクルス」、という感じだった。全部平らげた。

彼女のカレーは、オリーブオイルでタマネギを炒め、挽肉を炒め、野菜を炒め、日本酒を注ぎ、ブイヨンキューブとそのへんにあった昆布をぱちぱち切って入れ、煮込んでカレー粉、牛乳、ヨーグルト。以上。
明るい黄色がきれいな、サラサラおしゃれなカレーだった。

「ごはんはないけど、焼きたてを買ったパンがあるから、それにつけて食べてね。」
近所に新しくできたパン屋さんは、若い夫婦の経営。なんとなく人柄の分かるような、やさしい味だった。

デザートにはヨックモックのジュレとオレンジ、そしてコーヒー。
そのスマートなヨックモック、ある時彼女はそれを広告で目にし、おいしそうだなぁ食べたいなぁと思ったらしい。
そうしたら数日後に、同じものがお友だちから届いた!

すご~い。
これまた非常においしかった。ジュレの中に、小さな小さな星形の、あれはなんだろう、果肉なのかな、何かかわいいものがたくさん入っていた。
分厚い輪切りのオレンジもおいしかった~。

彼女もラッキーだが、わたしもラッキーだ。一人暮らしにもかかわらず、朝たくさんカレーを作ったところに上がり込み、ひとりで食べるのもつまらないからと、息子さんに持たせた残りをとっておいたというデザートをご馳走になり。

おいしいおいしいとカレーを食べていたら、最近そんなふうに食べてくれる人がいなくてつまらなかったと彼女が言った。
またご馳走になりに来るからと、勇んで答えた。なんていいお役だ!

#創作大賞2024 #エッセイ部門

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