赤い竹とんぼおじさん

子供の頃に、
「これおかしいんじゃないかな?」
「でも、大人になったら本当のことがわかるのかな?」
って思っていて、大人になっても
「あれ結局なんだったんだ?」ってなる出来事って
あるじゃないですか?

わたしが体験した
「大人になったらわかるかな?」が、
大人になった今、とっても怖かったので紹介しようと思います。

わたしは福岡のとある小さな炭鉱町の出身で、
炭鉱町といっても飯塚や大牟田、田川みたいな
ああいう大きな炭鉱ではなく、本当に小さな小さな炭鉱でした。
もちろんわたしが生まれた頃には閉山していましたし、
炭鉱の他には菊や蘭、果物なんかの農家さんがたくさんあって、
牧歌的な風景が広がるなんてことない田舎です。

炭鉱があった名残から、
炭住を今風に直した団地が無数にあり、
わたしもそういう団地に住んでいました。

わたしの住んで居る長屋は炭住を完全に取り壊し、
新しく二階建ての長屋を建てたもの。
奥に進むと炭住がそのまま残っており、
「あたらしい建物」「古い建物」というような感じで区別していました。

古い建物が続くところに、児童公園がありました。
滑り台や砂場、鉄棒、ブランコ、家型の遊具があり、
そこへ自宅からお鍋やおたまの形をしたおもちゃを持ち寄り、
おままごとをよくしたものです。

子供たちだけで遊んでいると、
近所のおばあさんが鉄棒に洗濯物を干しに来たりして
(公園に洗濯物を干すのが普通の感覚。)
少しお話ししたりして、地域で子育てみたいなのがまだ少し
残っていた時代でした。

そうやって子供だけで遊んでいると、
公園のそばの古い建物にすんでいる、
年頃でいうと、三十代半ばくらいでしょうか。
おじさんがやってきて、竹とんぼを飛ばします。

「あ!竹とんぼのおじちゃんや!」

みんなそう言って彼の元へ駆けていくのです。

いつしかみんな、そのおじさんから一つづつ、
竹とんぼをもらっていました。
「ゆうちゃんも、貰いなよ!いったらくれるばい!」
そう言って友達は、ペンキで真っ赤に塗られた竹とんぼを
わたしに見せてきました。

わたしは子供の頃、親から「吉典ちゃん誘拐事件」の話や、
「森永社長誘拐事件」の話を散々聞かされ
「誘拐されたら一貫の終わりだから、知らない人について行っちゃダメだし、物とかもらってもだめ。もらったらマジで死。」
みたいなことを口すっぱく言われていたので、
竹とんぼをもらって自慢してくる子が信じられませんでした。
「どーーーーかしてるぜ!!!!」
と思って、
「わたしはいらんかな。竹とんぼやったら、じいちゃんが作ってくれるし。」
と言って断っていたある日、
遊んでいると、また竹とんぼおじさんがやってきました。

竹とんぼおじさんはいつものように、竹とんぼを飛ばします。
「あ!おじちゃん!竹とんぼちょうだい!」
みんなが寄っていくのを、
「どーかしてるぜ!」と思って眺めていると、
近所に住んでいる年上のお姉さんがわたしの手を引き
「帰ろう。」といいました。

「ゆうちゃん、あのおじさんに、竹とんぼもらったらいかんよ。
あの人、家に上がりっていうけんね。
上がったらね、服脱いでとかいうけん。
断ったらね、明日また来れる?とか聞いてくるけん。
あの人、おかしいけん。普通の大人じゃないけんね。」

お姉さんはそう言いました。

めっちゃ怖くないですか!?!?!?!?!?!?!?

このお姉さん、当時小学6年生でした。
小学校では、わたしのお世話係だったので、
お家に帰ってもよく遊んでくれていました。

お姉さんによると、お姉さんとその友達が公園で
縄跳びの練習をしていたところ、
おじさんが現れ、「お菓子あげるよ。」という。
お菓子くれるのか、と思い家に入ったところ、
「服、脱いで」的なことを言われたらしいのです。

小学校6年生、分別はつきます。
「脱げません、お菓子もいりません。帰ります。」
というようなことを言うと、「明日、また来れる?」と。
それを聞いた日、とても怖かったのですが、
なんとなく「お母さんに話しちゃいけない!」と思いました。

なんとなく、そう思ったのです。

そうしてしばらくの間、友達の友達、そんなに仲良くない団地の子、
いろんな「女の子」から「竹とんぼおじさんに体を触られた」
という話を聞くようになります。

しばらく経つとわたしは大きくなり、公園で遊ぶよりも
家で友達とクラッシュバンディクーをやるようになりました。

中学生になるくらいに団地からは引っ越したので、
それからどうなったのかは、知りませんでした。

それで「あれは結局何だったのか?」「知りたい…」と思い、
母に当時のことを聞いてみました。

だってめちゃくちゃ気になりませんか?
あのおじさんはなんだったのか?
その後どうなったのか?
母に聞くとこうでした。

「あ〜なんかおったね、そんな人。
あのあとね、あんたの同級生にタクミくん(仮名)がおったやろ。
タクミくんの妹のノノちゃん(これも仮名)がね、
なんかされたってママに言ったらしいんよ。
それで子供会で大事になったけん、
ママみんなで集まって区長さんの家に行って、訴えたんよ。
で、区長さんから言ってもらったんやなかったかね〜。
年取ったお母さんと二人で住んどるような人やったよ。
それからすぐ引っ越しんしゃったんやないかねえ。
そのあと、ほら!!あの〜…パチンコ中毒みたいな夫婦が越してきたやん。
あの長屋。」

なんのこっちゃか!?!?!?!?!?

まず警察にいわず区長さんって!!!
あとパチンコ中毒の夫婦ってなんなん!?それもきになるわ!!

しかし、今思えば小学校6年生でも、お菓子欲しさについていってしまうっていう。

もしかしからあの時代、まだ見知らぬ人にも親切な人が多くて、
人を疑わないような子が多かったのかなあ。

などなど。いろいろ考えたりしたのでした。

そんなわけで、子供の頃に体験した奇妙な体験は、
思ったよりもだいぶ事案でだいぶ犯罪でだいぶ恐怖でした。

ゾッとしました。本当に。
どーかしてるぜ!!!!

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