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21年1月9日(土)「ホコリの女神」

自分の周りにホコリがたくさんある。気がする。ぷかぷかとソレは部屋の至る場所で気ままに泳いでいる。朝、窓から差し込む光に反射して、その姿をちゃぶ台の隅や床の端、PC画面に本棚の本下、さらにはコタツの布団にソファの背もたれ…。書き出したらキリがない場所に彼らは降臨する。
いわゆる「ハウスダスト!!」

そして最近ではその姿が見えずとも、気配で分かるようになった。奴らの気が、臭いがするのだ。たとえ空気清浄機をぐぉんぐぉん回していてもお構いなしだ。奴らは結託すると暗い場所でも目視できるくらいの図体に変貌する。その巨躯の周囲にはボスにひれ伏す木端どもが小さな徒党の単位で取り巻いている。よくみると己の髪の毛も奴に蹂躙されてしまったようだ。

ソレはあらゆるものを巻き込み咀嚼し自らの養分として吸収してしまうかのようだ。おっと。掃除機で吸えば万事解決なんてそんな甘いものじゃないんだぜセニョール。彼らは静電気で付着したあらゆる場所、そう最も見落としがちな場所の代表例である部屋の壁にお行儀良く隊列を組んでいる(そうだ)。壁の水拭きは悪手だ。ホコリが固まり却って取りづらくなってしまう。かと言って何もしなければ床の掃除したその瞬間から奴らは舞い降り、次代のホコリの王者になるべくその悪弊をさらけ出す。

きゃつらの駆逐は単純だ。それは江戸時代から使われているある物を使用しその姿を強制的に洗い出してやることに他ならない。そのある物とは「はたき」。ひたすら壁をはたきではたくと静電気で付着していたホコリがまあ舞う舞う。まるで巣を突かれた蜂の巣のように謎の細かい繊維たちが踊り狂う。それは産まれたてのイカの赤ちゃんのようにこの世を謳歌しているのだ。

こうなればもはや勝負あり。ひたすら舞ったホコリを掃除機で吸うか、柔らかい布で床を拭いてしまえば、奴らの悪行は撃退できる。はず。

僕はこうして昨日のうちにホコリを我が部屋から一掃したはず、だった。が、…感じる。この気、この臭い、この嫌な空気の流れ。アイツが笑ながら僕の周りにまとわりつく異様な感触。なぜ…どうして…これ以上どこを掃除すれと言うんだい…小賢しい。今日、イラつく僕を後ろからホコリの女神が抱擁してくる錯覚を抱いた。「また会えたわね」そんな囁きが僕の聴覚をくすぐった。

どうかその女神は絶世の美女神であることを願ってやまないと追記して本日の日記とする。

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